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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 86. 夜の流れ

1960年7月  東宝 製作 公開   カラー作品    監督 成瀬巳喜男・川島雄三

料亭の雇われ女将 藤村綾(山田五十鈴)を中心とした三角関係の話と、芸者置屋「七福」の芸妓 一花こと野崎政江(草笛光子)を核とした三角関係を二人の監督が別々に撮った珍しいW監督映画です。

芸妓の政江は呉服屋の店員 滝口速太(宝田明)と付き合うが、若い女と駆け落ちした夫 野崎(北村和夫)が舞い戻って来て付きまとい 嫌がらせをします。そこで滝口は野崎に手切れ金を渡し、離婚届に判を押させました。
鉄道シーンはここからで、南武線 尻手駅1番線からクハ16形らしき川崎行電車が出発して行きます。
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向かいの立川方面行2番線ホームには決着がついた三人が現れ、和やかに立話しをしています。

野崎は「これでボクもサッパリしました」などと言いつつ、滝口に煙草をネダったりします。
野崎は二人に「ここ空いてますよ」とベンチを勧めますが滝口は断り、86-22.jpg

政江を残して夕刊を買いに売店へ向かいました。
滝口はホーム前方の売店へ行くと、2部夕刊紙を手に取り代金を支払います。
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その時川崎方からクハ12形らしきを先頭に立川方面行電車が近付いてきました。後ろはクモハ11形でしょうか。

「あなた~電車来たわよ」と政江が甘い声で滝口を呼ぶと、突然 野崎が近寄り「政江 ボクと死んでくれ」と手を掴みます。「いゃ~!」と政江は振りほどこうとしますが、野崎の力には敵いません。
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電車が近付き警笛を鳴らす中 お釣りの受け取りに手間取った滝口が漸く駆け付けますが、野崎に突き飛ばされます。そして政江の手を掴んで野崎は、遂にホームから飛び込んで無理心中してしまいました。

撮影時の南武線は省電時代からの17m級 旧型国電が活躍、旧型国電の代名詞 72系電車が山手線などから移って来るのはこの 3年後のことです。3番線から出ていた尻手~浜川崎の支線では 1980年まで走っていました。
余談ですが滝口が夕刊を買いに来たホームの売店で 売り手の背後に今は無き週刊読売スポーツの宣伝札が貼ってあり、( 巌流島の対決 )と書いてあります。
これは 1956年から3年連続日本シリーズ( 西鉄対巨人 )で対決し、この年から6年連続最下位大洋の監督となっていきなり優勝した三原修と巨人監督 水原茂の対決再来を指しているものと思います。
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コメント


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どうやって撮ったのでしょうね

母の実家が鶴見の矢向だったので、浜川崎線はよく見ました。

この無理心中の撮り方はすごいですね。
一度画面を止めて撮ったのだろうと思いますが。

今では沿線に住宅がたくさんで来たとのことで、新駅ができて話題になりました。

さすらい日乗 | URL | 2017-03-01(Wed)23:38 [編集]


Re: どうやって撮ったのでしょうね

さすらい日乗 様  コメントありがとうございます。

この部分は御想像の撮影と思われます。 現在の目線で観ると少々苦しい映像ですが、本編の中では衝撃的な結末なので気になりません。
 尻手駅は浜川崎支線の乗換駅なのに快速が通過するし、エレベーターは設置されましたが売店は無いですね。

テツエイダ | URL | 2017-03-05(Sun)12:36 [編集]