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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 80. その人は昔

1967年7月 東京映画 製作  東宝 配給 公開    監督 松山善三

北海道えりも百人浜の二人が東京にあこがれ上京するが、都会に翻弄されてしまう 珍しい全編ミュージカル仕立ての青春映画です。

鉄道シーンは最初に、川岸で ヨウコ(内藤洋子)とカズオ(舟木一夫)が鉄橋を渡る C11+無蓋車3両+PC 2両の列車を見て上京を決意します。
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早朝 二人は追いすがる母親を振り切り、とある小さな駅から苫小牧行のサボを付けたC11 牽引混合列車に飛び乗ります。
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途中 列車は日高本線静内駅に二つ目型C11 182 を先頭に停車します。
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ホームの西谷の駅そば店でパンと牛乳を買おうとして失敗してしまいます。
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この店は拙著 13.新網走番外地 嵐呼ぶ知床岬で高倉健が南利明に騙され、停車中にそばを食べていて列車に置いて行かれた店としても登場しています。

その後C11 183 牽引列車が力強く上り勾配を走るシーンもあります。日高本線では 1957年に混合列車が廃止され、以来旅客列車はDC化されています。
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えりも地方からの上京を強調するイメージ付けに、当時貨物列車の先頭で活躍していた C11にオハ62等PCを特別に連結させロケしたと思われます。

東京で二人は喫茶店のウエイトレスと印刷工として暮らし、地下鉄四ツ谷駅ホームで歌詞に合わせてデートの待ち合わせをするシーンが中盤にあります。
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丸ノ内線では茗荷谷 後楽園と並ぶ地上駅です。赤坂見附より到着した先頭車は 1957年から登場の500形 717号です。(増備数があまりに多く802まで有り)

ラストシーンで、悲しい結末になってしまった ヨウコとの思い出を探しに百人浜へ行ったカズオが東京へ戻る場面にも鉄道シーンがあります。
上京時と同じ編成の列車のデッキで海の方を見ていたカズオの耳に全速で走る馬の足音が聞こえてきます。まさか!とその方を見ると・・・
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海岸近くを走る C11牽引の混合列車に沿って後方から白馬に跨るヨウコ(の様に見える)が迫って来ます。カズオは慌てて最後部のデッキへと移動します。
白馬は全力で走りますが線路沿いの道は真っ直ぐではなく、なかなか追い付けません。カズオの眼には幻とは思えず、何時までもデッキから身を乗り出しているのでした。
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コメント


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その人は昔

舟木一夫の凄いところは、御三家(橋幸夫、舟木、西郷輝彦)のうち、当時の邦画5社(東宝、東映、松竹、日活、大映)にすべて主演として出演しているところにある。

橋や西郷は4社のみで東宝には出演していない。
あの美空ひばりでさえ、日活には出演していない(その代わり「新東宝」に出演だが)。
舟木は5社制覇をしているばかりでなく、ATG映画まで出演しているのだから。

それだけ舟木は絵になる俳優だったのだろう。

この映画はフォトジェニックな瑞々しい画面とミュージカル風の主題歌と挿入歌が素晴らしい。

鉄道シーンでは、鉄橋を渡る列車シーン(最初の写真)はおもちゃ(模型)の汽車かのように見え、遊園地の「機関車トーマス」が北海道を走っているのと思ったくらい、

東京での二人の生活では、いつも周りから電車(や自動車)の騒音が聞こえてきたり、しばしば快走する電車を目にすることになる。

6枚目の写真の電車、鮮やかな赤に白いストライプ(黒いダイヤ模様入り)は本当に地下鉄だったのですか。
実にカラフルでビジュアルな車体ですね。

車体一面、抜けるような黄と目の覚めるような緑の電車が出てきましたが、あれは山手線でしょうか、どこかの私鉄でしょうか。

ラストは迫力に満ちた鉄道シーンで、危険きわまりない撮影はどうやって行ったのだろうか、1回だけで済んだのだろうか(それとも何回かに分けて?)。

馬で駆ける内藤洋子はスタントマンだとしても、全速力で走る列車の開けっ放しのデッキにしがみついているのは確かに舟木一夫だ。

スターにこんな危険なことをさせていいの。

現在では「バスが完全に停止してから、お立ちください」と案内されるが、この頃では動いている列車にホームから飛び乗ったり、あるいはホームへ飛び降りたりすることは、車掌も特に注意しなかったようだし、乗客もへいちゃら、物ともしなかったようだ。

この映画でも舟木は勿論のこと、洋子ちゃんもさらりとjumping on(off)している。
現在の安全基準から云えば、とんでもない話しだ。

日本映画の良心と呼ばれた松山善三は、いずれも心に灯がともる作品を手掛けてきた監督だが、幸福の絶頂にあるヒロインをいきなり不条理にも殺してしまう、「名もなく貧しく美しく」然り、悲劇「ロミオとジュリエット」のような、この作品然りである。 

何故だろう?

赤松 幸吉 | URL | 2018-07-18(Wed)11:33 [編集]


Re: その人は昔

赤松様 アツイ コメントありがとうございます。

確かに舟木一夫は、各映画会社に義理立てしているかの様に出演していましたね。

6枚目の画像は、帝都高速度交通営団(現 東京地下鉄)丸ノ内線 四ツ谷駅に到着する500形です。
丸ノ内線に三か所ある地上走行区間の一つなので、普通の私鉄の様に見えますね。

車体一面が黄色や緑の電車の場面は記憶にありませんが、総武線・山手線の電車と思われます。

ラストで舟木一夫がヨウコの幻を見て走行中のデッキから身を乗り出して手を伸ばす場面は、この映画のハイライトシーンですね。 揺れる日高本線の列車であの様な撮影は、現在では不可能でCGでしょうね。

テツエイダ | URL | 2018-07-18(Wed)21:13 [編集]


お母様の方が・・・

テツエイダ 様

 ED76であります。


 まずもって、勝手な事を申し述べれば、映像から感じられる「内藤 洋子」様のかわいらしさと初々しさ。小生の世代からすれば、お嬢さんの「喜多嶋 舞」氏が出演された「Vシネマ」等で、「喜多嶋」氏のお母様程度の意識でしか、認識していなかったのですが・・・。


 「内藤 洋子」様のイメージは、「氷点」でのヒロインです。直接、ドラマは視聴していませんが(あまりにガキすぎますので)、悲劇性を含んだストーリーと美しい旭川を中心とした「道北の自然」が、「三浦 綾子」氏の原作と相まって印象強いドラマ(NETの時代?)だったようであります。何回かリメイクされても、初作のレベルを越せないとの話があるようで・・・。それだけ、「内藤 洋子」様の存在感は大きいのだと、小生判断しています。


 「鉄」としては、今は無き「日高線」の風景(新冠~日高門別?)が特徴的です。「厚別川鉄橋」を走る「C11」の引く混合レは、一度でよいから乗りたかったです。ストーリーがミュージカルだと割り切ってしまえば、混合レの最後尾に白馬が・・・という展開がクライマックスではあっても、さすがに「オハフ60(?)」のデッキから、あそこまで危険な演技を「舟木一夫」氏がする必要があったのか(現在のJ事務所のアイドルでは絶対に許可されないでしょうね)、疑問です。廃線までの紆余曲折(JRが意図的に海岸近くの線路を放置するとともに、復旧と路線存続に地域の自治体に過分の金銭的負担を求めるなどの、廃止在りきの方向性)を経て、「JR日高線」は今年3月にバス転換されました。小生が、東京から昭和60年の春に「えりも町」へ赴任する際に乗車した「DC急行えりも」から眺めた「豊里」付近の荒涼たる海岸線とは異なる「やさしさ」を、画像から感じました。やはり、美男美女の共演に、厳しい太平洋の風景も「微笑んで」いたのでしょうか・・・。


 P.S
  実は小生の「えりも町出身」の愚妻が、義母・義祖母と一緒に同作品の「百人浜のロケ」を見物していたとの話がございます。当時、白い馬に跨る「内藤 洋子」様の姿に、「この世の人とは思えない」オーラを感じたようでした。後日封切られた映画を見た小学生の愚妻は、「絶対に内藤洋子のようになって、舟木一夫のような旦那さんと結婚する」ことを固く誓ったとのこと。しかし、現実は「こんなはずでは」と愚妻はぼやくこと、しきりであります・・・(笑)。


 失礼いたします。

ED76 | URL | 2021-11-01(Mon)19:45 [編集]


Re: お母様の方が・・・

ED76様 コメントありがとうございます。

日高本線は小生も22年前に様似まで全線を乗り 車窓を堪能しましたが、今年鵡川駅から先が廃線となってしまいましたね。

内藤洋子主演作は当ブログ(112.君に幸福を)にもあります。舟木一夫とのツーショット画像もあり、高級旅館加賀屋の娘役で出演しています。

テツエイダ | URL | 2021-11-01(Mon)22:54 [編集]