日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 68. ここに泉あり

 1955年2月 独立映画ー松竹 配給 公開   中央映画 製作    監督 今井正

群馬交響楽団 創設期の苦闘を描いた音楽映画で、高崎市民オーケストラがプロとして成り立つまでの物語です。

舞台は 1947年の高崎。冒頭 C5097 が牽引する客車4両+有蓋車1両の混合列車が機関車の前部・テンダー・客車の屋根まで人が乗る超満員状態で走る姿が映ります。両毛線での撮影と思われます。
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当時は終戦直後の混乱期で、復員兵・買い出し人で乗車希望者が増えたのに石炭不足から運休列車続出でどの列車も超満員でした。そんな当時の再現ロケで、現在ではとても撮影許可とはならないでしょう。
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続いて木造時代の高崎駅舎が映り、タイトルが出ます。駅入り口には大勢の人が押しかけ、改札を通るにも大変な様子です。そんな改札を工藤( 加藤大介 )が大太鼓を担ぎながら通ろうとして駅員に止められています。
「8:57 分発 小山行発車です」と構内放送が聞こえてきます。そこへ後ろからマネージャーの井田亀夫( 小林桂樹 )が来て駅員に話し掛け、その隙に工藤がホームへ入り列車に近寄ります。
尚も駅員が追い駆けて来ますが、大太鼓はリレーして車内へ。そして動き出した列車のデッキへ最後に井田が飛び乗り、「どうもどうも」と駅員に半分謝る感じで去って行きます。

次に井田が東京から呼んだコンサートマスターの速水明( 岡田英次 )が、練習場の階下の喫茶店に名刺を残し井田に会わずに帰ってしまったことを店員から告げられ井田は駅へ急行します。
高崎駅の3番ホームには既に上野行上り列車が停車中で、発車ベルが鳴り始めます。列車は超満員で速水をどうやって探そうか考えた井田は、「速水さん 急用です。」と叫びながら前方に進みますが汽笛が鳴り響きます。
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その時 半分板貼りの窓の隙間から顔が出て、「何ですか」と声がしました。振り向き動き出した列車に近寄った井田は、窓の外にハコ乗り状態の男の手を引きます。その横の男が「速水は僕です」スカサズ井田は「急用です早く降りて下さ」
速水のバイオリンと荷物を受け取り、窓から足を先にホームへ無理やり降りようとします。すでに列車はかなりスピードが出ているので、後ろから近寄った駅員が「危ない 止めて止めて」と叫んでいます。
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 よく走り出した列車のデッキに飛び乗るシーンは( 1958年 松竹 張込み )など有りますが、この映画のロケほど過酷な超満員列車や無茶な降車シーン( ホームに着地するまでは映っていません )は他では見当たりません。

映画の後半 EF53 電機に牽引された急行白山らしき車内。スロ53 特ロの座席に音楽家 山田耕筰(本人)と立石( 伊沢一郎 )が座っています。通路では車掌が「次は高崎です渋川・伊香保方面乗換」と告げています。
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高崎と聞いた山田は楽団のことが気になり、途中下車します。そして練習を指揮したことから再び合同演奏会が開かれ、苦労した時代の回想シーンで草軽電鉄の無蓋車でメンバーが移動する映像が入ります。
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アメリカ・ジェフリー社製L形EL+無蓋車1両+客車1両の編成です。鉄道青年様のブログ(火山山麓のレモンイエロー:草軽電鉄の記憶)によりますと、23号電機+ホト70か75+ホハ30客車だそうです。
そしてロケ地は草津温泉~谷所の通称一の谷の手前のカーブとのこと。無蓋車の上で日傘をさしているのは紅一点ピアニストの佐川かの子( 岸恵子 )です。勿体ない程短い草軽電鉄登場のシーンであります。
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