日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

61. 女妖(じょよう)

 1960年6月  大映 製作公開 カラー作品    監督 三隅研次

 原作は西條八十の「女妖記」 作家で大学教授の尾形十九( 船越英二 )が出会う女遍歴三話のオムニバス映画です。

 第一話では浅草大和組二代目となる お粂( 山本富士子 )との話で、浅草松屋デパート横を走るトロリーバスの青い車体が登場します。
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 都内4系統の内 最後の1958年8月に開通した104系統(池袋~浅草雷門)と思われ、運用面での予想外の不評で僅か十年も経たない1968年3月末には廃止されてしまった短命路線でした。

 その後 走り去る車から浅草駅正面を映す場面があります。浅草駅に沿って走り、前面の顔が見えているのは22系統(南千住~新橋)の路線。
 駅前で直角に交差しているのが24系統(福神橋~須田町)の路線で、車体の横腹が映っています。両系統共比較的遅くまで営業していたが、22系統が1971年3月 24系統が1972年11月廃止されました。

 メインは第二話にあります。箱根で若い女 赤木千鳥( 野添ひとみ )と知り合った尾形は、小田原駅から急行で熱海を目指します。先ず木造ながら堂々とした大きな小田原駅舎が映ります。61-2.jpg

 続いて並ロ(二等自由席)車内のシーンで尾形は千鳥に熱海への同行の確認をすると同意し、着席します。窓から顔を出し、ホームの駅弁立売にお茶の注文をします。

 その時 ガクンとショックがあり発車します。と同時に千鳥は立ち上がり「私やっぱり東京へ帰ります」と告げ、あっという間に降りてしまいます。
 尾形が追い掛けデッキからホームへ顔を出すと、千鳥が能天気に挨拶しています。尾形が乗る列車の向こうには対向の上り列車か、追い越される普通列車が映っています。

 この小田原駅のシーンはセット撮影と思われます。ですが隣り合った列車まで作り、尾形が乗った列車のみ動いて行く様子などは流石 全盛期の大映美術の腕が分かります。
 でも並ロの車内セットは1960年当時としてはいささか古い感じがします。この映画公開の6月から二等車が一等車に繰り上げになったのにイスが古い感じに見えるのです。

 次のカットでは千鳥の背後上部に小田原駅ホームの駅名板が映った後、屋根の無いホームを発進して行く急行列車の姿があります。
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 ELの次に郵便車か荷物車が2両あり、青帯の二等客車が3両連なっています。撮影は5月以前の3等級制時代のもので、昼行列車の前部に3連続二等車は珍しいと思われます。

 該当する列車は東京10:00発の31ㇾ熊本行 急行阿蘇と思われます。この列車は、EF58電機+ユ、ニ、二等寝台C、指定二等車、自由席二等車・・・との編成の列車です。
 この列車は長躯九州へ上陸後 博多へ寄らず、筑豊本線を通って原田から鹿児島本線へ戻って熊本へは24時間ギリギリの9:51到着というユニークな列車です。

 それから尾形が高井戸の千鳥の家を訪ねる場面があります。京王帝都電鉄高井戸駅吉祥寺方面ホームに1900形から降りた尾形は、遮断棒も無い構内踏切を渡り出口へ。
 長い階段を降りた所に新聞売りの露店があり、尾形は千鳥の住むひかり荘の場所を尋ねます。今の環八にあたる細い道が線路の下を立体交差しています。
 「31,宇宙人東京へ現る」や「49,結婚の條件」でも高井戸駅の描写があります。
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