
すれ違い恋愛映画の本家で戦前の 1938年から松竹(監督 野村浩将)で三部作製作され、戦後大映で 1948年に続いて 1954年に再度製作されたのがこの映画です。
更にその後 1962年にも松竹(監督 中村登)で二部作製作された人気作品でした。本作は鶴田浩二が松竹を辞め、フリー時代に単巻契約で出演した映画です。その後の東映所属での印象が強い鶴田浩二なので意外と知られていない本作です。
最初の松竹作品では新橋駅ですれ違いシーンがありましたが、本作では東京駅で医師 津村浩二(鶴田浩二)が待ちますが看護婦 高石かつ枝(京マチ子)は事情があって遅れてしまいます。
津村は窓口で京都まで二等の急行券を二枚買い、改札口でかつ枝を待ちます。15番線の発車案内パタパタは普通二三等 22:40 大阪行と出ました。そして乗車予定の23:05発大阪行急行(月光か)の改札案内放送が流れます。津村は振り返りながら改札を入ります。
15番線ホームに上がってもかつ枝の姿はありません。

そして発車ベルが鳴り始めた頃漸くかつ枝が乗るタクシーが到着します。かつ枝は入場券を買い改札からホームへ急ぎますが、和装故に足早とはいきません。
遂に列車が動き出したので津村は後ろを振り返りながらデッキへ飛び乗ります。次第に加速してゆく列車 その時漸くかつ枝がホームへ上がる。思わず列車に駆け寄ろうとするかつ枝を「危ない!」と制して駅員が抱えます。
京都から夜行列車で上京する場面では、津村が二等寝台車に乗り込み列車給仕に案内され8番下段に落ち着きます。

プルマン式寝台で給仕にチップを渡し、浴衣を手に取ることから形式は不明ながら二等寝台車のセットか日中借りての撮影と思われます。
その後の走行シーンはフィルターをかけての擬似夜景ですが、山科の上りカーブでの撮影の様にも見えます。
かつ枝が熱海にいる娘 敏子(小畑よし子)に会いに来るシーンでは、80系3枚窓先頭車が伊豆山トンネルらしきから出てくる場面から始まります。

そしてホームへ入る場面では 80系2枚窓車に準急伊豆のヘッドマークが付いています。
二等車から降りてくる かつ枝に敏子が飛びつきます。この様子をホームの端から津村が見ていると、背後をEL牽引の列車が通過して行きます。
高速での通過故に不鮮明ですが列車の後半に帯付車が連続していることからも、当時熱海駅を唯一通過していた特別急行つばめ号 時間帯からして上り東京行つばめ号と思われます。特別急行はと号は上下共熱海に停車していました。


