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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 41. 夜霧のブルース

 1963年6月 日活 配給 公開    カラー作品    監督 野村孝

 非情なヤクザ社会に身を置く西脇順三(石原裕次郎)を巡る任侠系青春映画です。

 鉄道場面としては、西脇が神戸一の貝塚組幹部として羽振りをきかせていた頃の回想シーンに4箇所程あります。
 港近くで西脇が子分二人を連れて踏切に差し掛かると、汽笛が鳴り 8620形牽引と思われる貨物列車がゆっくりと鐘を鳴らしながら通過して行きます。

 遮断棒は申し訳程度の長さしかなく道路の中央部分は大きく開いていますので、人通りの少ない臨港地区によくある引き込み線の様です。
 煙突の前に鐘が有り、低速で走っていることから 神戸臨港線の貨物列車ではないかと思われます。劇中では汽笛が鳴っていますが、日活映画特有の音なので実際には鳴らしてはいなくアフレコと思われます。

 これは沿線にホテル等が多く なるべく汽笛を使わず、劇中の様に低速で鐘を鳴らしながら運行していたそうです。神戸臨港線は山陽本線東灘操車場から分岐し、湊川迄の間に多くの枝線が有りました。
 この映画撮影の翌年2月末をもって 8620形等蒸気機関車はDL化されていますので、僅かなシーンではありますが貴重なシーンと言えましょう。その後途中迄電化されましたが、2003年11月末をもって廃線となりました。

 次に三宮駅前の片隅で西脇ら三人をやり過ごすチンピラ二人のバックには阪神三宮駅と国鉄三ノ宮駅の間を走る神戸市電が映っています。
阪神三宮地下駅の入るそごうデパートビルは 1981年春迄この重厚な外観でした。41-1.jpg

 本編では現在のフラワーロードにあたる道路に神戸市電が走っていて、撮影位置はT字型交差点の突き当り部分ですが現在の様に通り抜けできる十字型交差点に改造工事中の様子が映っています。

 続いては西脇の恋人となる榊田みち子(浅丘ルリ子)が神戸駅から帰郷する場面があります。大阪発 佐世保行の急行平戸号の通路側席に座ります。茶色塗装のナハ10らしき9号車です。41-4.jpg

 放送で 22:19 神戸発車 岡山 0:45 ・・・下関 7:55 ・・・終着 佐世保 12:32 到着と続きます。こんな時刻でもホームには駅弁の立売がいて、車内から買いに降りてくる人もいます。横には赤帽さんも二人います。41-3.jpg


 西脇がみち子との新しい生活の為 組を抜け駆け落ちを計った時、初代後期型セドリックのタクシーで神戸駅へ向かうシーンがあります。踏切警手のいる第一種手動踏切を渡り、須磨の辺りか 72系らしきと並走するシーンがあります。
 そして高速も無くスッキリとした港方面からの道を上り、神戸駅ロータリーに乗り付け改札へ急ぐ二人でありました。



PS. 米手作市様のコメントにより、神戸から乗った客車をナハ10に訂正致しました。お陰様で 9番線に停車の点からも、国鉄の協力によって別な駅で深夜に車輛を借りてロケを行ったのでは?との思いに至りました。
 
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コメント


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「夜霧のブルース」

なんと、テツエイダ様の誤りを見つけちゃいました! 確かに阪神電車は「三宮」ですが、国鉄(JR)は「三ノ宮」です。それとも当時は国鉄も「三宮」だったのでしょうか。
テツエイダ様のミスなら、恥をかかせてごめんなさい。(兵庫県在住なの者で)
この部分は削除してアップしていただいて結構です。

これはこの時期凡・駄作が続く裕次郎の作品の中でも屈指の出来映えを示しております。
(当時は「俺の兄貴だ、裕次郎!」(調子をつけて読んでください)と自分で自分を呼ぶほどの裕次郎ファンでした)伏線に伏線を張られたシナリオが実に見事です。共演者では親分の小池朝雄と渡辺美佐子が魅力的です
特に、我が愛する神戸の町並みがたっぷりと描かれているのは、何度見ても楽しい。当時の三(ノ)宮付近がテツエイダ様の描写で生き生きと再現されていて、とても懐かしく若い頃を思い出しました。当時はあの狭いトアロードにも市電が走っていたのですね。
特に、この映画にも登場する須磨~明石を海沿いに走る風景は日本一です。当時は明石大橋や無粋な建物もなく、車窓より淡路島がまるで手に取るように見えました。現在もJR(海により近い)と山陽電車(山側なのでより高くから海を見下ろせる)が並行して走っていて、今でもこの線に乗っているときは子供のように海側を見て座っています。また、今では三ノ宮と元町に比べて、寂れてしまった神戸駅の内部が出てくるのも嬉しい。(昭和30年代前半頃までは神戸駅の方がにぎわっていたと思うのですが)
子供の頃、神戸駅のホームに「東海道本線 起点東京589K 山陽本線 起点神戸 0K」の表示を見つけたときは、鉄道ファンならずとも興奮しました。
この「須磨~明石」間はしばしば映画に登場しています。山と海に挟まれた細長い神戸の町が、塩屋付近で一番狭く(全幅10メートル程度?)なるのですね。山陽本線を描く映画は必ずここの風景を取り入れていたのでは? 是非他の映画もアップして下さい。期待しています。当時の車両は濃い緑とカーキー色のツートーンで、姫路~大阪間の快速が主力であったと思います。この車両が廃止になるとき、こちらでは盛大な行事が催されたと思うのですが、これはいつ頃だったのでしょうか。

赤松幸吉 | URL | 2013-08-29(Thu)18:22 [編集]


Re: 「夜霧のブルース」

 赤松様  御指摘の通り小生のミスでありました。鉄道院の時代から三ノ宮であります。これからも御指摘、ツッコミ等どしどしお願いします。

 神戸は1980年以後3回訪れた程度で詳しくはありません。神戸臨港線の部分も創造で書いている部分もあって、地元の方に間違いを指摘されるのではと思いつつ発表した次第です。

 須磨~明石の風景は素晴らしいですね。1956年 日活公開の(飢える魂)の中に、ここを走る急行列車の姿があります。

テツエイダ | URL | 2013-08-29(Thu)21:50 [編集]


失礼ながら申し上げます。
写真二枚目の急行「平戸」ハザは、スハフ42ではなくナハ10(11)系ではないでしょうか?また、三枚目はナハネ10(11)です。昭和38年の時代設定とすれば二号車にハネが連結されていたかも疑問です。

米手作市 | URL | 2021-08-24(Tue)21:42 [編集]


Re: タイトルなし

米手作市 様 コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、10系客車ですね。当ブログ開始年の記述で、当時の編成表から単純にスハフ42と書いた様です。

今見直すと恥ずかしい程、他にも色々間違いがあると思います。(小生 車輛形式に弱いもので)

また 神戸駅ではなく大阪等の大きな駅で、深夜に撮影用の列車を用意してもらいロケを行ったのでしょう。(浅丘ルリ子のロケを実車で行ったら大変でしょうし、神戸駅で9番線?)

故に本物の急行「平戸」ではなく、国鉄のミエもあって10系客車を用意したのでは?と思われます。

テツエイダ | URL | 2021-08-25(Wed)19:19 [編集]


失礼なことを申しました。
最近、このブログを見つけまして大喜びしております。昭和二十年代から四十年頃にかけての日本は、映画も鉄道も貧しかったが楽しい時代でもありました。この時代を生きてこられたことを感謝しております。このようなブログをまとめてくださったことは感謝と尊敬に堪えません。これからも続けてください。友人にも広めます。
またお目にかかりましょう。

米手作市 | URL | 2021-08-25(Wed)20:40 [編集]


Re: タイトルなし

米手作市 様  ご丁寧な返信ありがとうございます。

今までも多くの方から車輛形式についてのご指摘を頂き、当ブログの正確性向上にご協力頂いております。
これからもどしどしコメントを寄せてください。

なお本文の方は修正させて頂きます。

テツエイダ | URL | 2021-08-25(Wed)21:18 [編集]