
数寄屋橋で将来を誓い合った 菅野光晴(園井啓介)と 新村葉子(桑野みゆき)が、過酷な運命に翻弄されながらも 魅かれ合う姿を描いた メロドラマの序章です。
父親の看護の為に 長崎へ帰郷した葉子を 菅野が大学を卒業し就職したら 迎えに行く約束でしたが、菅野は実権のある 葉子の兄 新村健二郎(南原宏冶)に 結婚を断られた矢先に 重症の交通事故に会ってしまいます。
その後 菅野と三ヶ月間 音信不通だった葉子は 上京を決意し、特別急行列車あさかぜ号に乗って 東京へ向かいました。


思い出の 数寄屋橋畔の公園で 漸く菅野と 待ち合わせることができて、背後に都電が行き交う公園で 再会した菅野は 手足が未だ不自由な状態で 葉子は別れ話をされてしまいます。

一方 葉子の兄夫婦の策略で 上司の沢野伸介(穂積孝信)と 政略結婚させられそうになった葉子は、菅野が転勤した 北海道夕張へ向かうべく 兄の家を飛び出し 上野駅へ向かいました。
上野駅 12番線で 急行北上号に乗った葉子は、菅野の親友 藤川俊春(山内明)と 柏村綾(千之赫子)から 見送りを受けています。

藤川は葉子に 餞別を渡し、

綾は「これで幸せになれるんだから」と励まします。
更に「お化粧道具持ってる?」と聞くと、葉子が否定したので バックを逆さに開けて 中身を 渡しました。

葉子は 二人の親切心に涙し、二人は葉子と 菅野の幸せを祈り 手を振って見送ります。

青森行急行北上号は ゆっくり加速して、12番線を離れて行くのでした。

菅野が 飲み屋ひさごやの女給 のぶ(渡辺美佐子葉子)と 一夜を共にした頃、葉子を乗せた 蒸機牽引列車が 一路夕張を目指して 走行するシーンがあります。

そして 遥々東京から到着した葉子と 菅野が 大夕張ダム湖畔で 抱擁する場面では、背後にダム湖を横断する 下夕張森林鉄道 夕張岳線 第一号橋梁が 映っています。

更に この特徴ある 三弦トラス橋を渡る 森林鉄道列車の姿も、映像からは 僅かに見て取れます。

しかし葉子は のぶから 自分と菅野が 深い関係にあることを 告げられると、D50形蒸機が牽く 運炭列車が近付く道で 汽笛を鳴らされると 絶望感にみまわれ しゃがみ込んでしまいます。

のぶは 何とか菅野を 自分のものに しようとしますが 菅野に難く断られると 自殺を図り、止めようとした菅野と 共に崖から転落してしまいます。
のぶは重症ながらも 助かりますが 菅野は行方不明となり、帰京した葉子は 泣く泣く沢野との 結婚を承諾するのでした。
それから一年後 立野という名の 記憶喪失症の男が 東京に現れ、付き添っている チカ坊(中山千夏)の話から 男は死んだと思っていた菅野であると 皆が確信します。
葉子は 何とか菅野の 記憶を取り戻そうと 奔走しますが、それが 沢野や 同居する姑(沢村貞子)との 関係悪化に繋がるのでした 第二部へ続く・・・
PS.
1枚目画像の EF58形電機牽引 特別急行あさかぜ号は、電源荷物車を含め 牽引定数いっぱいの 20系14輌フル編成です。
長崎県平戸の 生月島からの 上京を考えると、生月島―(連絡船)・・・平戸口 11:39 ―(621レ)― 13:08 佐世保 13:27 ―(2308レ準急第一弓張)― 15:49 博多 16:30 ―(4レ特別急行あさかぜ)― 9:30東京
4枚目画像からの 上野駅見送りシーンでは、青森行 急行北上に乗る葉子が 映っています。しかし当時のダイヤで 急行北上は7番線から、16:30発と 明るい内の出発です。
このシーンの撮影は 12番線で 夜間に行われているので 国鉄の協力の元、20:50発113レ 青森行普通列車に 北上の札を付けてもらい ロケが行われたのでは?と推察します。
11枚目の画像に映っている 下夕張森林鉄道 夕張岳線 第一号橋梁は、作中でも登場する 大夕張ダム建設の為 1958年に完成した 珍しい 三弦トラス形式の鉄橋です。
大夕張ダムは 本作公開と同じ 1962年の完成ですが、下夕張森林鉄道 夕張岳線は 翌年の1963年に廃止されてしまい 森林鉄道の橋梁として使われたのは 僅か5年間でした。 本作中には 貴重な走行映像の片鱗が 映っております。
その後 レールだけ撤去されましたが、美しい姿は 地域のシンボルとして 残されました。しかし 大夕張ダムの下流側に より規模の大きい 夕張シューパロダムが 2015年に完成し、現在では 渇水期に姿を現すだけで 通常期は水没しています。
本作は メロドラマの大御所 菊田一夫氏の原作で、当時は TBSテレビで連続ドラマとして 放送中に製作されました。
テレビでは 新村葉子役は 島倉千代子ですが、菅野光晴役は 園井啓介が映画と掛け持ちで 出演したそうです。(当時の本人は 本業がテレビ俳優で、映画はアルバイトだそうです)
まもなく迎える №400号を記念して、№400号の前後 №390~410を カラー作品特集と致します。今回の(390.あの橋の畔で)は 全4作の長編なので、前半2作と後半2作に分けて 取り上げる予定です。
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