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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

382. 雪崩

1956年3月 東映 製作 公開   監督山本薩夫

北海道にある 地主の家で 女中として働いていた矢田まつよ(津島恵子)の、波乱と苦難に満ちた人生を描いた ヒューマンドラマです。

結城家で働く まつよは、長男の医学生 結城竜夫(岡田英二)と 相思相愛であった。その結城が軍医として 出征した夜、最寄り駅に停車した列車に
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駆け寄る まつよの姿があります。
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まつよは ホームを移動しながら、車内の結城を探しています。
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やがて汽笛が鳴り響き 列車が動き出した時、車内で談笑する 結城を見付けました。
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列車に合わせて 移動しながら 窓ガラスを叩きながら「坊ちゃま 坊ちゃま!」と叫びますが、
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大声で談笑する仲間の声で 結城には全く聞こえない様です。

先頭の機関車で働く 知り合いの機関助士 谷川次郎(木村功)は、
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まつよの姿に気付き「まつよさ~ん」と呼び掛けますが その声は届かない様です。
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列車は更に加速してゆきます。
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やがて まつよはホームの端に来て
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哀れ ホーム端の斜路で まつよは転んで 雪山に倒れ込み、
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辺りには 遠く去り行く汽笛の音と 腕木式信号機が切り替わる音が 物悲しく響き渡るのでした。
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結城は出征する前夜 まつよと強引に関係を持ち その後に 懐妊・死産した まつよは、結城の母親 みさ子(沢村貞子)から 父親の名を迫られても 言えなかったことから 解雇されてしまいます。

頼る人の無い まつよは 身を売る生活に転落した果てに、銀行強盗した男の共犯者として 結城が働く病院に入院中に 逮捕されてしまいます。
東京へ列車で 愛人 井上猛(織本順吉)と護送される場面では、窓際座席に座る まつよの周囲に押し寄せた 新聞記者の呼び掛けや カメラマンのフラッシュを 浴びせられています。
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再会した病室で まつよの過酷なその後を 聞いた結城は 悔恨に苛まれ、上京し学友だった後藤弁護士(南原伸二)に依頼して まつよを保釈させてあげました。その金は自宅を抵当に、三原源吾(加藤嘉)から借りたのでした。
結城は 妹の千鶴(星美智子)の勧めで 自宅を改造して開いた診療所で まつよを助手として呼び寄せ、まつよにとっては 束の間の充実した 幸せな日々が続きました。

ところが 地元に開設されていた 進駐軍基地 拡張反対運動を起こした 谷川を代表とした青年団と、進駐軍相手の 二階個室付きの酒場で 大いに潤う 三原源吾 配下の一団との 衝突の余波が 結城達にも及びます。
三原から聞かされた 自分の保釈の為に借りた金の 返済を迫られる結城の姿や、妹千鶴が 良家の令嬢 根津はるみ(高千穂ひづる)と 兄の結婚を望んでいることから まつよは身を引く決断をします。

ラストシーンでは 遥か雪原を走り去る汽車が映り、スキーで追い駆ける 結城の姿があります。
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一人旅立つ まつよを乗せた汽車は、
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雪原を淡々と走り行き エンドマークとなるのでした。
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PS.
  交換設備のある駅に停車している C56131号機の横を通って、まつよはホームから 一目会いたい結城を捜します。
  131号機は 当時飯山区在籍車なので、飯山線沿線での ロケでしょうか。

  4枚目の画像で駅名板から、TONAまで読み取れます。 頭が「とな」の駅名と言えば、全国で城端線の砺波が唯一です。
  この部分のみ砺波駅でロケしたのか、撮影用に製作した 架空駅名板でしょうか。

  15・16枚目の画像は セット撮影と思われますが、当時は列車での護送中に 新聞記者が犯人に インタビューしたり撮影したりと 割合自由に振舞えた様でした。


  作中で 進駐軍泊基地として映っているモデルは、北海道の千歳基地かも知れません。そこに砂川闘争等を、絡めている部分もある様です。
  本作は 講和条約発効前の 設定と思われ、進駐軍相手の 如何わしい商売が横行した時代故に 架空名の必要が あったと思われます。


  津島恵子には珍しく吊り上がった眉毛で、ひねくれた娼婦の役を熱演しているのが印象的な作品です。


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コメント


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雪崩

これは山本薩夫監督作品の中では、見向きもされておらず、知る人も少ないが、埋もれた名画である。
作品的評価に至ってはゼロに近いが、個人的には古風な大悲恋ロマン映画の秀作と思う。

ストーリーはトルストイの「復活」(例のカチューシャ=津島恵子)の丸ごとパロディーで、それがかえって面白みを増した。

津島恵子の魅力炸裂、前半の従順でおっとりとした女中から、後半のすさんで投げやりな娼婦と、この女優の二面性が楽しめる。

雪のホームで津島が列車内の結城(岡田英次)を探すシーン:
日本映画は数々の(鉄道での)感動的な別離シーンを生み出してきたが、これもその一つ。

津島は窓ガラスを叩きながら「坊ちゃま 坊ちゃま!」と叫ぶが、(人声や騒音などで)岡田は津島がほんの目の先にいるのに気づかない。
ここで当時の女性ファンはスクリーンに向かって「後生だから、会わせてあげて」と哀訴するが、列車は無情にも去っていきます。

「会えそうで会えない」という松竹メロドラマの伝統がここでも生きています。

赤松 幸吉 | URL | 2023-02-20(Mon)19:44 [編集]


Re: 雪崩

赤松様 コメントありがとうございます。

本作の鉄道シーンは少ないのですが、小生も雪のホームでの感動的な別離シーンを観た時 是非とも取り上げ様と決めた作品です。

赤松様の書かれた「古風な大悲恋ロマン映画の秀作」とは、正に言い得て妙な表現ですね。

テツエイダ | URL | 2023-02-21(Tue)14:26 [編集]


製造銘板

以前にC56の製造銘板の件でコメントいたしましたが
登場している131号機は戦時設計の簡素な小型銘板に換装されていますね。
銅合金部品の供出に関しては結構恣意的な部分があったようなので
私の実見した銘板は良く廃車まで残していたな、と感心しております。

N.N.LC33100 | URL | 2023-02-22(Wed)12:26 [編集]


Re: 製造銘板

N.N.LC33100 様  コメントありがとうございます。

131号機は1939年製造なので、最初から簡素な小型銘板だったのでしょうか。

それとも1941年頃に換装したのでしょうか。戦時仕様に一斉に変更したのか、分かり難いですね。

テツエイダ | URL | 2023-02-22(Wed)18:23 [編集]