
地方では大きな会社である 南海商事の社長桑原(河村惣吉)が 会社内外の諸問題を、腹心の浦島人事課長(森繁久彌)と共に 抜群の感覚で明るく乗り切る コメディ調の人情ドラマです。
前社長の 奈良庄右衛門(小川虎之助)が 戦後公職追放となり、総務部長だった桑原が 急きょサラリーマン社長の様に 繰り上がったのでした。
本作のメイン鉄道シーンは 東京出張に出掛ける 場面にあります。地元の南海駅へ 桑原と浦島がやって来て、

東京には 今晩8時半の到着ですと浦島が伝えています。
桑原は「今回は 出張所へ予告せずに、出し抜けに行く」と言い、ありのままの姿を 見たいそうです。

そして 前方へ進むと 東京へ同行することになっていた 顔見知りの藤山(進藤英太郎)が、なんと愛人の 芸者おこま(藤間紫)を連れていたのでした。

そこへ C58形蒸機牽引列車が 到着したので、

一同は 二等車へ乗車します。二等寝台車の 日中状態らしく、ゆったりしているだけが 良点の様です。
端の席で 藤山はおこまと宜しく やっているところへ、浦島が食堂車から 飲み物を桑原に 運んできました。

浦島は桑原に「車内から夫人に 電報を打って、東京へ呼びましょうか」と言うと、「お鶴を呼ぶならまだしも・・」と言って 直ぐに取り消す 桑原です。

その後 電機に牽かれた列車が 淡々と東京へ向かうシーンに続いて

車内では 桑原と藤山が相席し、「帰りは箱根に 寄りたいが、同行しませんか」と藤山が誘いますが 辞退する桑原でありました。

東京駅へ到着し 一行が降車口改札を抜けた所で、

「あなた」と 藤山に向けて 呼び掛ける声がしました。藤山が驚いて 立ち止まると、「急にあなたと旅行がしたくなって、飛行機で来たんです」と藤山の京子夫人(岡村京子)です。

藤山はまさか 夫人が先回りしているとは驚き おこまから離れると、「えらいものが 飛ぶようになったもんだ」と呟くのでした。
更に「ところでそちらの ご婦人はどなた?」と詰め寄ると、藤山は「こちらは要するに 桑原夫人だ」とドモリ声で 逃げます。それを聞いて桑原は「要するに家内です」と、冷や汗顔で 調子を合わせざるを得ませんでした。

翌朝 8時半の鐘が鳴る 銀座四丁目交差点の 様子に続いて、

横須賀線の 新旧形式の電車が混ざった姿で 走る傍らにある出張所に 二人はやって来ました。

東京出張所 視察業務が終わり、帰りも二人は 九州直通急行列車に乗った様です。

車内で旧知の 加藤さんに 偶然乗り合わせますが、

「ちょっとヤボ用で 来た帰りです」と語った後で 話しに花が咲いています。

PS.
東宝サラリーマンシリーズでは(89.ホープさん サラリーマン虎の巻)と双璧の 先駆的作品で、好評だったので 続編が数本製作されています。
1~4枚目の画像で ロケが行われた駅は、73おやぢ様のコメントから総武本線両国駅と思われます。
車内シーンは全て セット撮影ですが、二等車は東京~九州各地を結んだ 直通急行に連結された 寝台車のヒルネを 意識していると思われます。(テーブルは・・・)
浦島は東京到着が 晩の8時半と言ってますが、20:30到着は 当時大阪発の 4レ特別急行列車はと号でした。
近いのは 20:08着の急行阿蘇号ですが、寝台車はゼロなので対象外です。
本作の設定に合う 二等寝台車を連結していたのは、18:55に到着する 急行きりしま号でした。
一方飛行機の方は 日本航空の 大阪伊丹空港15:50発の便が、東京羽田空港着17:30でしたので この便を京子夫人は使ったのでしょう。
但し特急はと号は一等車を使っても4580円に対し、飛行機は6000円もしました。さすがは社長夫人ですね。
こうして夫の行動を怪しんだ 藤山夫人は、高額の飛行機で先回りして 東京駅で待ち構えていました。
この場面は 実際の東京駅丸の内降車改札口で 行われた様ですが、現在では到底 不可能と思われます。
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