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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

377.青春三羽烏

1953年12月  松竹 製作 公開   監督 野村芳太郎

性格は違うが 仲の良い3人の男が、意中の女性との結婚を目指す コメディ調の青春映画です。

沖倉淡三(三橋達也)の家に 婿入先候補の 藤原仙子(高友子)が突然来訪し、沖倉の上着に入れていた 候補№6 宮田千晴(藤野高子)の 写真を見られて騒ぎ出します。
そこへ到着した中ノ目覚(高橋貞二)が 昨夜飲み屋で 上着を間違えたのだと誤魔化し、その後 到着した千晴を 強引に中ノ目が連れ出して 沖倉の窮地を救ったのでした。

すっかり憤慨して速足で歩く千晴を 追い駆けた中ノ目は、橋の上で追い付き 宥めている背後を ポール集電仕様の 都電初期型6000形らしきが走っています。
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喫茶店で話す内に すっかり意気投合した二人は、ひとまず別れて帰宅するべく 千晴は地下鉄乗り場に向かって行きました。

地下鉄銀座線の高架区間を 3輌編成の電車が走るシーンに続いて、
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東京急行電鉄 東横線への改札口を入った所で 二人は再会して驚きます。

続いて 東横線の高架区間を走る 東京急行電鉄3000系が映り、
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共に代官山駅で降りた二人は 手を振り別れます。
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ところが 角を2回曲がると、バッタリ再会です。実はお互いの家は、近所だったのでした。

千晴の叔母さんの家で飼っている 犬の具合を獣医大学生の 中ノ目が診ていると、千春の父親が 養子候補者に会いに 上京して来ると知らせがあったので 候補者代役として 会ってくれと頼まれます。

東海道本線 新橋駅上りホームに、EF58形電機牽引の 列車が到着します。
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先頭客車から 千晴の父親 宮田甚助(日守新一)が降りて来て、
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中ノ目が候補者として 千晴に紹介されました。
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二人と父親は 一緒に音楽会へ 出掛けたのですが、親友 牧野虎太郎(川喜多雄二)と 中ノ目の妹 桂子(紙京子)が 会場で揉めたことから、偽候補者であることがバレて 中ノ目は面会禁止と言われてしまいます。
跨線橋の上で 中ノ目と千晴は もう会えないが好意はある などと話す内に、
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下を72系らしき 国電が走り抜けて行きます。
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その後 中ノ目の亡くなった父親の 親友だった及川潔(北龍二)から 飼い犬が飲み込んだ ダイヤの指輪を、中ノ目が無事 吐き出させた御礼に 貰ったお金で母親シゲ(東山千栄子)と 温泉旅行に出掛けます。
電機牽引列車の走行シーンが映り、
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並二等車席に親子で 向かい合せに座っています。
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やがて列車が横浜駅に到着すると、
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中ノ目が窓から シューマイ売りを呼びますが 聞こえない様です。
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そこで デッキから呼びますが 通じないので、
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シゲが止めるのも聞かずに 中ノ目は走って買いに行ったのでした。
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シゲはハラハラドキドキの 様子ですが、中ノ目は「乗り遅れるもんか お茶は次の駅で買うよ」などと 余裕顔でシューマイを勧めています。
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一方及川が姪を連れて 中ノ目の行く湯河原温泉へ向かったと 牧野からの情報を聞いた沖倉は 千春の通う洋裁学校へ向かい、千晴と仲良くなった仙子の手前「湯河原で中ノ目と見合いさせようとしている 及川の計画打破の為 湯河原へ行こう」と誘います。

親子で湯河原温泉の旅館へ到着すると 及川が姪の秋子(東谷瑛子)を連れて現れ、暫くすると 沖倉が千晴を連れて合流し 更に千晴の父 宮田が駆け付け 騙された怒りで 娘を連れ帰ってしまいます。

皆も同じ列車で 帰ることとなり、宮田親子とは離れた席で皆 憂鬱な表情で 黙り込んでいます。
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そして及川が 最後の説得に、宮田の席へ赴き 説得すのでした。
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中ノ目親子が帰宅すると 桂子とケンカした牧野が、20:30の汽車で 実家へ帰ると出て行きました。桂子は20時近くなると出かけ、入れ替わりに 宮田が現れ謝罪するのでした。

新橋駅の改札口へ 桂子が到着すると、時計は既に20:37を指していて 諦め顔の桂子です。
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ところが横を向くと、旅行ポスターを見ている牧野がいます。
「乗り遅れたんだ 次の汽車は一時間後なんだ」と呟く牧野に、誤解が解けた桂子は 素直な気持ちを伝え 三組共にハッピーエンドとなった模様です。





PS.
  1枚目の画像は 橋の欄干に見覚えがあり、中央本線飯田橋駅前を走る 都電15系統かもしれません。

  2枚目の画像は 帝都高速度交通営団 銀座線(本作公開一週間前に銀座線と決定)神宮前駅(現 表参道)から 終点渋谷駅へ向かう、1000形らしき3連電車で(4連化開始される2年前)今は無き 東横百貨店が映っています。

  3枚目の画像は 東京急行電鉄東横線 渋谷から代官山へ向かう 3000系らしき電車ですが、1945年まで使っていた 並木橋駅ホーム跡が 撮影場所と思われます。

  4枚目の画像は 激変した代官山駅ですが、当ブログでは(62.踏みはずした春)でも 同じ方向から当駅が撮影されています。

  5~7枚目の画像では 宮田の上京場面を、珍しく新橋駅東海道本線ホームで 撮影しています。当時の上り列車は 2本の特急と特殊列車以外 全ての急行・普通列車が新橋駅に停車していたので、昼頃到着の 326レ(浜松始発)あたりの 先頭客車で撮影したのでしょう。

  8~9 枚目の画像で ロケが行われた場所は、遠くに私鉄電車らしきが映っていて 田端とは思えず分かりません。

  12~16枚目の画像で 横浜駅へ到着する列車は 7:36着7:38発の 325レ沼津行普通列車と思われ、シュウマイ売が 朝から販売していたのでしょうか。

  最後の画像で 桂子は牧野が 20:30の汽車に乗ると聞いて 新橋駅へ来ましたが、既に20:37なので 一度は諦めました。しかし 20:30頃の東海道本線下り 新橋発列車は20:24富士行849レと 20:40熱海行851レで、該当する列車がありません。

  上りが殆ど停車する新橋駅ですが、下りは 全ての急行列車が 通過だったのです。20:30の汽車と言えば、東京発神戸行 13レ急行銀河のことだったでしょう。牧野は「次の汽車は一時間後だ」と言いますが、故郷が神戸だとしても 21:00発の広島行21レ急行安芸で行けます。


こんなにも数多くの鉄道シーンが散りばめられている本作が、今まで全く小生のアンテナに引っ掛かりませんでした。
それ故に当ブログは、まだまだ続けるつもりです。
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コメント


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EF58旧型

12枚目の旧型電機は一見EF57に見えますがデッキ幅が狭いEF58旧型ですね。
まだEF13凸形と車体振替が終わっていない貴重な時期だったんだな、と感慨に
耽ってしまいました。

N.N.LC33100 | URL | 2022-12-10(Sat)18:14 [編集]


Re: EF58旧型

N.N.LC33100 様 コメントありがとうございます。

実はこの画像が 不鮮明なので、静止画コマ送りでは EF5877の様に見えましたが 自信がありませんでした。
EF58形の新旧型が、東海道本線上に 混在するのも この時代ならではですね。

テツエイダ | URL | 2022-12-11(Sun)10:59 [編集]


青春三羽烏

松竹のお家芸「三羽烏もの」は戦前から何度も映画化されている。
戦後では鶴田浩二、大木実、佐田啓二なども三羽烏のメンバーに加わったこともあるが、
やはり不動の常連は高橋貞二だった。

二枚目の画像:
当時は「東京急行電鉄」でさえ、たった3両連結だったのですね。
まるで、おもちゃの電車のように見えます。

この映画はyoutubeで現在無料で鑑賞できます。
https://www.youtube.com/watch?v=6Q-4u6cSCco

「こんなにも数多くの鉄道シーンが散りばめられている~。それ故に当ブログは、まだまだ続けるつもりです」 と力強く宣言していただいたので安心しました。

当時の映画の鉄道シーンで言えば、「東映」はほとんどが時代劇、「東宝」「日活」は鉄道というより車でのシーンの方が多かったようで、「松竹」「大映」あたりの方が懐かしい鉄道シーンが多く見られそうです。
特に「松竹」のすれ違いメロドラマで登場した鉄道シーンは印象鮮やかな絶品ぞろいでした。

赤松 幸吉 | URL | 2022-12-11(Sun)18:47 [編集]


Re: 青春三羽烏

赤松様 コメントありがとうございます。

三羽烏・三人娘とか三を付けたタイトルの映画を、昔は各社が製作していましたね。

本作は終戦後まだ浅い時期に 製作されているので、ポール集電の都電や 今の半分の3輌編成の銀座線が 映って時代を表しています。

「松竹」のすれ違いメロドラマには、今後注目して観ていきます。

テツエイダ | URL | 2022-12-13(Tue)22:19 [編集]