
森田屋酒店主の 森田良一(佐田啓二)の処へ嫁いだ ひろ子(久我美子)が 姑・小姑と同居する環境で 自分の立ち位置が掴めず 悩む中で、理解ある夫の態度によって 徐々に森田家に馴染んで行く過程を描いた ホームドラマです。
タイトルクレジットの 終わりに、川崎駅らしきの 空撮映像が始めにあります。
序盤 森田家の明るい次男 登(石浜朗)は 京浜線 田端駅近くの高台で 苦学生の三井(田浦正已)と 人生観を語っていると、遥か先の築堤を 東北本線の下り蒸機牽引列車や 上りの気動車列車が走っています。


また 三井の背後下方には、京浜線田端駅らしきが 映っています。

森田家の長女 泰子(高峰秀子)は 空襲で足が不自由となり、婚約者にも逃げられ 28歳となって投げやりな性格で ひろ子にも冷たくあたる毎日です。
ある日泰子は 東海道本線らしきと交差する 道路工事現場で働く 旧友の夏子(中北千枝子)と偶然再会し 話していると、背後を 京浜線の電車に続いて

D51形らしき 蒸機牽引の長い貨物列車が通っています。

その後 ひろ子の田舎から出て来た 旧知の信吉(内田良平)が 帰郷する晩に ひろ子を訪ねて来て、母しげ(浦辺粂子)と泰子は 疑いの目で噂するので ひろ子は飛び出してしまいます。
後を追った森田は 川崎駅改札口で二人を発見し、

二つのウイスキー包みを 信吉とひろ子の父親へと託します。改札口で信吉は 爽やかにひろ子と挨拶を交わし、

更に「お父さんには幸せに暮らしていると伝える」と言って 去りました。

終盤 抑留先から帰国後 二年間療養していた 元奉公人の俊どん(大木実)が 森田家を訪問しますが、事前に来た手紙に 泰子ことばかり書いてあったことから 泰子は逃げてしまいました。
ところが 俊どんが帰った後に 帰宅した泰子は、皆から「足が無かろうが泰子さんは泰子さんで、今でも好意を持っている」との話を聞いて 俊どんの元へ押し掛ける 決意を固めます。
そして 翌日出先から 電話してきた泰子は、森田に「荷物を東京駅まで持って来て」と頼みます。
先ず 定石通り東京駅丸の内駅舎が映り

トランクを持った登が 8番線ホームに上がって捜すと、

列車のデッキ横に立つ 泰子が声を掛けて 登も気付きました。


登は泰子の胸中を慮って 余計なことは言わずに 明るく簡潔に会話し、

トランクと土産と小遣いを渡して

不要な風呂敷包を受け取り別れます。

やがて泰子を乗せた普通列車は、静かに東京駅から出発して行きました。

PS.
2・3枚目の画像は 非電化時代らしき 東北本線尾久支線を走る列車の様で、宇都宮電化4年前なので 殆どの列車が 蒸機牽引列車だったと思います。
6枚目の画像は 東海道本線を走る 蒸機牽引の貨物列車ですが、品川区にも まだD51が配置されていて 横浜地区の貨物線が 電化前なこともあって 周辺の貨物列車は 蒸機が担当していた様です。
最後の 泰子旅立ちシーンは、東京駅8番線ホームで ロケが行われた様です。登は発車前の 14:15に泰子と別れたので 当時の時刻表によると、14:25発の 111レ門司行普通列車が想定され 静岡到着は18:36です。
しかし実際には 国鉄にお願いして 回送列車にエキストラを乗せた上、品川客車区まで行って 降車したと思われます
泰子が向かったのは 静岡の山奥で「エンジンの音を響かせて、一日一回 トロッコが材木を乗せて通る」と手紙で知らせたので、赤石山脈南端の 千頭森林鉄道支線沿線等が 俊どん宅と想定されます。
ひろ子が姑・小姑に いびられ 落ち込んでいる時、森田がスクーターに ひろ子を乗せて快走し 洋服屋へ向かうシーンがあります。

これは同年4月に公開されて その年の外国映画№1となった(ローマの休日)の中で、ベスパのスクーターに乗った グレゴリー・ペック と オードリー・ヘプバーンが ローマ市内を快走するシーンを意識した 演出と思われます。

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