日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 38、 とべない沈黙

 1966年2月公開  日映新社 製作  ATG配給    監督 黒木和雄

  人や汽車などの手を借りて、各地を移動して行くナガサキアゲハの幼虫から見たオムニバス映画です。

 鉄道シーンは長崎での話にあります。 枝葉の付いたザボンを持った女性が長崎駅で発車間際の急行雲仙へと急ぎ、デッキでザボンを手渡した様に見えます。
 ホームには「急行雲仙 発車します 次の停車駅は諫早です」と放送が響きます。続いて C6025 が豪快にドレーンを切りながら牽引し、長崎駅を発車して行くシーンがあります。38-1.jpg


 上り急行雲仙はこの映画公開時 長崎~鳥栖は DD51 牽引でしたが、この映画は難解な内容からか完成から一年以上経て配給も東宝からATGとなって公開されたそうです。
 ですから撮影は 1964年夏らしく、まだ長崎本線も蒸機牽引の列車が多く残っていました。

急行雲仙は戦後無名急行時代から長崎、佐世保と東京を結び、撮影時は肥前山口から佐世保発の西海号と併結列車となる為僅か5両編成でした。
 その後 1968年10月からは長崎、佐世保と大阪や京都を結ぶ急行列車となりましたが、寝台特急あかつき号の人気に押され 1980年9月末をもって廃止となりました。

 その次に横からの機関車力行シーンがありますが、なぜか C58 の様です。
 車内では大柄な男がザボンの皮を剥き始め、ナガサキアゲハの幼虫の姿を見るや開いている窓から大袈裟な悲鳴と共に放り投げました。

 そしてその幼虫がレールの上を這っていると、C58289 牽引の列車が通過して行きました。しかしその直前、幼虫はレール側面に移動していたのでした。
 2本のレール中央にカメラを設置し、遠くから近付く列車が最後は頭上を通過して行く伝統の撮影方で迫力あるシーンであります。
38-2.jpg





 PS,
 
 急行雲仙の発車シーンで C6025 が牽いているのが 20系ブルトレの様です。7両編成の大型客車の次の最後尾はカニ22電源荷物車の様です。
 つまりこの列車は 15:02 発の東京行急行雲仙ではなく、15:20 発の特急さくら号か?車両、編成数はピッタリ。でもヘッドマークがありません。

 思うに下り特急さくら号長崎到着後の回送引き揚げ列車を撮った映像ではないかな・・・でもこの映画には急行雲仙でないと合いません。
 特急さくら号は撮影翌年の 1965年9月末まで C60 蒸気機関車牽引で長崎本線を走り、DL・EL牽引となり 2005年春まで長崎と東京を結んでいました。

 C58 機関車が登場する場面がありますが、C58は九州では大分区所属で豊肥本線での活躍が主で長崎本線ではこの頃 使用されてなかったのでは?
 特に C58289 機関車はこの頃 佐倉区所属で総武本線、成田線を走っていたのでは・・・

 監督さん 編集段階になってから幼虫の生命力の強さを強調する場面を加えたくなって、急遽手近の路線で追加撮影したのでは?と勘ぐってしまいます。
しかして 構内の端から望遠で追い続けた C6025 の発車シーン。C58289 が迫り来るシーンなどは素晴らしい映像で、監督は並々ならぬ蒸機好きかと推察します。
 
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