
小さな貿易会社で 英語が堪能な上 事務処理能力の高い 瀧本篤子(高峰秀子)が、独断で取引を進めた契約が 突然難渋しますが 邪魔をされたと思われた 同業の男に助けられる 会社員系青春映画です。
序盤 篤子の家では 父親が戦死した親類の 賀川健一(岡本克政)を預かっていますが、健一を親友扱いしてくれる 伊能田二平太(池部良)と篤子は 飼い犬の件で知り合いとなります。
ある日 伊能田が音楽会の切符を持って 篤子が勤める三光商事へ訪ねて来ましたが、箱根に滞在している社長から 呼び出しの電話があって 音楽会を辞退して 箱根へ向かう場面があります。
小田急電鉄の 2連電車が橋梁を渡るシーンに続いて

1700形特急電車らしき車内で、飲み終わったティーカップを ウエイトレスに渡した篤子は

記念に伊能田から貰った 音楽会のチケットを にこやかに見直しています。

中盤 篤子が社長不在の折に 独断で話を進めて契約した 取引品の製造会社の制作進行具合が 突然難渋し、引き渡し期限に 間に合わなくなる事態となりました。
電話では 埒が明かないので、篤子は神戸の製造会社に 直談判に向かいます。一方伊能田は 上司から瀬戸物の買い付けで 名古屋への出張を頼まれ、偶然 同じ列車に乗り合わせます。

並ロ車内で 伊能田の隣席女性の 鏡に篤子の姿が映り、伊能田は歩いて 後部席に座る篤子に声を掛けましたが

警戒顔の篤子です。
篤子がブラッドフォード商会と契約した取引は 元々富士商事の伊能田が 商談日を間違えて流れた件で、大会社の富士商事が 製品卸売会社の 南海商事に 横槍を入れたのだと 篤子は思っていました。 それ故 伊能田に会っても 微笑を浮かべる程度で、篤子は 至って不愛想な態度です。

その時 食堂車のウエイトレス嬢が現れ、「只今よりお茶の時間となりましたので、お気軽にご利用下さいませ」と 呼び込み案内をしながら歩いて行き

そのタイミングで 篤子は「失礼」と告げて、食堂車へ向かうのか デッキの方へ 行ってしまいました。

旅先で偶然再会したのに 話が弾まず 名古屋駅で 降車した伊能田は、

同僚 浅間(稲葉義男)の さしがねと直感し 浮かない顔で列車を見送っています。

篤子は 神戸の南海商事へ 社長を訪ねますが不在で 下請けの富神モール店の製造所へ行きますが、社長の松島(中村是好)は 富士商事の圧力を認めて 製品の出荷を頑として断るのでした。
ところが翌日 篤子が東京から呼んだ 同僚の梶五郎(岡田英次)と共に 再び松島の元へ出向くと、最初は渋る様子だった松島が イロを付けると言うと 5日で出荷すると 手のひら返しです。
その後帰京すると 篤子の母 綾子(瀧花久子)から 飼い犬のペケを棄てる様言われた健一が 家出していました。伊能田と浅草界隈を探していて、東武鉄道 隅田川橋梁の端で話す場面があります。

翌朝 上京した松島が 三光商事を訪れ、実は伊能田から松島へ 浅間の指図を撤回するとの 電話があった 裏事情を 皆の前で話したのです。
そこへ伊能田から「品川児童相談所で保護した 犬連れの男の子を、今朝 国分寺のサレジオ学園で 引き取ってもらったそうです」と電話が有り、早速 篤子は伊能田と駆け付けます。
中央線の 63系らしき電車の走行シーンが映り、

サレジオ学園へ行くと シスター(香川京子)から案内されて 無事 健一と再会することが出来ました。
PS.
2・3枚目の画像は、走行中の 1700形特急電車らしき車内で 撮影されています。3輌編成の中間車サハ1750形の 非常出口のある車端部席に座る高峰秀子を、隣車輌の車端部から 撮影している様です。
この席は 座席中央から壁までが 反対側では700㎜なのに、非常出口がある為 1090㎜と かなり足元が広い席となっていて 撮影には好都合な席です。
車輌中央部には喫茶コーナーがあり、日東紅茶(三井農林)のウエイトレスが飲み物類のシートサービスを行っている姿が映っています。
当時の小田急ロマンスカー箱根湯本行は 平日3本の運行で、時間帯から 16:00新宿発の 乙女号と思われます。途中は小田原のみの停車で、所要1時間31分でした。
中盤の 神戸・名古屋への出張 車内シーンは 留置中の実車での撮影としても 電車の並ロの様な車内に 該当する車輛が思いつきませんでしたが、73おやぢ様のコメントにより 80系湘南電車のサロ85形の様です。
車内シーンを田町電車区で、実物を借りてロケを行ったと思われます。
名古屋駅で 池部良が見送る場面は、早朝にロケを行ったのでしょう。1937年に移転高架された 駅ホームで、本作公開の翌年に電化される前の スッキリとした空間が広がっています。
該当する列車は 東京10:00発の、33レ鹿児島行の急行きりしま号です。名古屋着は16:10で 脚本に合いますが、神戸着は21:24頃となるので 南海商事へ向かうのは翌日となります。
戦災で荒廃した東京の様子 が随所に映っている作品ですが、冒頭では 小田急のボンネットバスが 六本木停留所(本物?)に停車して 高峰秀子が降りてくるシーンがあります。

サレジオ学園のシスター役で 香川京子がチョイ役出演していますが、上原謙も池部良の先輩役で チョイ役出演しています。

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