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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

362.嫉妬

1949年1月 松竹 製作 公開   監督 吉村公三郎

芹沢耕介(佐分利信)は 会社では戦後民主主義社会での 結婚生活のあるべき姿を講話する男だが、自分の家庭では 亭主関白を凌ぐ暴君で 妻の行動を疑い・妄想から嫉妬に狂って 家庭崩壊に至る様子を描いた喜劇映画です。

家庭での芹沢は 暴君に徹し 妻敏子(高峰三枝子)を 奴隷の様に扱い、病身の弟と 満州から引揚た妹への 金銭援助を受けている立場もあって 敏子は静かに かしづく毎日だった。
一方で芹沢は 愛人マユミ(幾野道子)を囲っていて ある日も出張らしく 社用車で 新橋駅まで送られると、
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改札口で見送る 総務の吉田(河村黎吉)を 一旦入って撒いてから マユミのアパートへ向かうのでした。

その後 土曜日でしょうか 日中に帰宅する電車内で芹沢は、
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探偵事務所の中吊り広告「夫婦愛の危機!!」という文字が目に留まりました。
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帰宅すると 妻の出迎えは無く、敏子が弟弘三(太田恭二)を伊豆の病院へ見舞った折に知り合った 弟の先輩 塚崎積(宇佐美淳也)と 楽しそうに客間で話しているのを 聞いてしまい 浮気ではと疑います。

その夜 芹沢は激怒し 見舞いに行く事を 禁ずると命じ、承諾した敏子は 翌日弘三にと 縫い上げた浴衣を託す為に 芹沢の出掛けた後に外出します。
妻の浮気を疑る芹沢は 出勤の為に出掛けたふりをして 庭に隠れ 出掛ける敏子を見るや、塚崎と逢引きすると確信し 尾行して途中から 駅に先回りして着きました。
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階段下の物陰に隠れて ホームを見ると、
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敏子が電車を待っています。
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やがて運転手横の窓も 板張りの荒廃した 山手線電車が到着し、
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敏子が乗ると
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芹沢は素早くホームを移動して 隣の車輛端のドアから乗りました。
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ドアが閉まると 全てのドア上部の窓も板張りで、中央部に覗き穴の様な 丸い穴が開いています。戦後三年目の暮れに 撮影されたと思いますが、山手線の様な 代表的路線の車輛とも思えません。
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車内で隣の車輛端に 敏子を発見した芹沢は、
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見逃すまいと見続ける中
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電車は京浜線と分離前のホームが1本で、上りの63系電車が停車中の 有楽町駅へ到着しました。
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敏子が下車したので、
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芹沢も後を追い掛けます。
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混み合うホームで敏子を尾行し、
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英語表記の案内板の下を通って 出口へと向かいます。
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何も知らない敏子は 塚崎が勤務する東都新聞社へ入り、弘三への浴衣を託した後 一緒に出掛ける所も 芹沢に見られてしまいました。

その晩 芹沢は更に激怒し「浮気の現場を目撃したぞ」と一方的に決めつけ、否定する敏子の話を聞かずに 一切外出することを 禁止されてしまいます。
ところが翌日 塚崎から 弘三が危篤になったと電報が届き、敏子は病院へと駆け付けます。帰宅した芹沢は 女中から話を聞くと、嫉妬と怒りが再燃し 敏子を追い駆け汽車に乗りました。
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危篤状態の弘三の元へ着いた敏子が 塚崎と一緒に見舞っているところへ 怒り沸騰状態の芹沢が到着し、「とにかく家に帰れ」の一点張りで 二人の話は全く聞かずに 塚崎を殴る始末に 敏子は泣く泣く従います。
帰りの汽車の座席で 敏子は考え込んでいる様子で、
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芹沢は通路に立って 逃がさないぞと見張っている様です。
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そして帰宅すると 弘三が亡くなったとの電報が着いていて、弘三の葬儀が終わると 敏子は芹沢に指輪を返し 離婚を通告します。すると一転して 芹沢は土下座し 撤回する様 敏子に懇願しますが、翌日 キッパリと拒否して 家を出るのでした。
会社には マユミと腐れ縁のヒモである 山本八郎(三井弘次)が、「俺の女房に手を出しやがって!」と 二度に渡って押し掛け 芹沢に金を要求します。八郎は暴れた挙句に 殴り付けたので 芹沢は外へ逃げ出し、会社の前を通り掛かった都電に 乗ろうとしますが
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 停留所ではないので乗れず 振り返れば、窓から見物している大勢の社員の前で 恥をかいたのでした。
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PS.
  芹沢は出張を口実にしたのか 社用車で新橋駅に送らせますが、構内では「各駅停車豊橋行が参ります」と放送が流れます。当時の時刻表で豊橋行は 9:25発の311レしかないので、偽の出張を口実に 朝から愛人の所へ向かう遊び人です。
  
  敏子の浮気を疑った芹沢は 仕事を放り出し、尾行して向かった駅は 山手線にしては該当する風景の駅が思いつきません。1948年の姿なので激変しているのでしょうが、目白駅にしてはホーム端から先の右カーブが違います。

  その後 花見牛様の 捜索コメントにより、原宿駅であることが ほゞ判明いたしました。(9~11枚目画像のロケ地は不明)
  
  車輛も 二重屋根の モハ30形の様に見えますが、終戦から三年半以上経っているにしては 10枚目の画像の様に 板張り窓が多いですね。
  それでいて 有楽町到着時の車輛は 63系と思われ、殆ど全ての窓に硝子が入っています。 或いは4枚目から11枚目迄は、山手線以外の線でロケを行った? 謎です。

  ラストの都電は36系統(錦糸町駅前~築地)の新富町付近でしょうか? 3000形初期の3074です。 木造車を鋼体化改造した大型車輛で、未だポール集電時代の姿です。


  タイトルで喜劇と標示していますが 全編に渡ってシリアスな内容です。でも最後の画像の様にラストで喜劇と納得もできますね。
また 芹沢が電車内で見た広告と 敏子が新聞社内で塚崎を待つ時 壁に貼られたポスターが 行く末を暗示している脚本が印象的です。
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コメント


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テツエイダさまこんにちは。

映画の公開年からして、撮影は昭和22-23年頃行われたと思われますので、年代からすれば、電車の荒廃度はこの程度で不思議はないと思います。

2枚目画像は63系で、下段窓が開いている様子です。3枚目画像は見事な肋骨天井で、アルミ製の輪を使った吊り手など、モハ63の中期形くらいの感じです。天井についている電球に、荷物車のようなカバーが付いているのは盗難防止のためですね。

4枚目画像、駅がまるで郊外で、山手線の駅とは思えませんね。時期的に本当に山手線駅でロケしたとすれば、買い出しなどでそれどころではない時期と思うので、「山手」のサボだけ付けて、別路線(例えば総武線など?)の電車かもしれません。
サボ板が付いている電車は、モハ30形(ダブルルーフ)ですね。当時サボ板も付かないで、チョーク書きの例も多かったので、国鉄としてはせっかくのロケなので用意してくれたのかも。
板張り窓ばかりですが、これは時期的にこんなものだと思います。青梅線などでは、昭和28年頃になってもまだ板張りドアだったりしたようですし。
丸窓のドアガラスは、旧海軍の放出品とか言われており、当時相当数のドアに用いられていたようです。
丸窓のドアの車輌は、二段窓なのでモハ31形ではないかと思いますが、その後ろの三段窓車が今ひとつ鮮明で無いのでわかりません。クハ65形の三段窓試作車ということも考えられますが、ドア上にヘッダーが回ってないようにも見えるので、やはり63系でしょうか。
「ゆうらくちょう」という駅名板が見えるカットは、63系でしょうが、当時新車でしたので、窓ガラスがまあまあ健全なのはそのためかと思えます。もしかすると、「復興整備車」指定編成かも知れません(窓やドアなどを完全整備した見本編成を、各電車区とも1~2編成程度整備して、乗客にアピールした)。
そのすぐ下のカット、見事な三段窓、縦雨どい無しの様子が見られますが、右側の車輌、三段窓の中段ガラスが割れたのか、小割ガラスを入れて縦に小さいさんを入れています。その上の窓には、なにやら張り紙がしてあるようですが、おそらくは「OFF LIMIT」ではないかと。米兵が専用車でないところに乗り、トラブルを起こすので、専用車以外に張り紙した時期がありました。横須賀線では、サハ57やサハ48(ロングシート化車)を専用車に指定し、正真正銘の二等車サロ45を日本人用にするという、「いじらしい抵抗」も見られたりしたようです。

客車のシーンは、おそらくオハ31系か木造車と思いますが、時期的に買い出し客で超満員だったはずなので、のんびりロケなんて許されないでしょうから、ここはセットかもしれません。通路側へ座席の背刷りがはみ出しているのも少し不自然かと。

喜劇という割りにシリアスな内容にも思えますが、当時の苦労がいろいろにしのばれる内容でもあるようですね。

すぎたま | URL | 2022-05-15(Sun)16:08 [編集]


Re: タイトルなし

すぎたま様 早速 細やかなコメント ありがとうございます。

電車の荒廃度はこの程度でしたか 戦後三年半だともう少しガラスが入っているかと思いました。

山手の方向板を付けたダブルルーフ電車は、モハ30形でしたか 訂正させていただきます。
やはり山手線の駅とは違うとの御意見ですね。電化路線の横に 複線非電化の貨物線か急行線から 山手線を想像しましたが、該当する線形の駅が 小生も思いつきません。
当時の総武線に 該当する場所があったのでしょうか 思いつきません。

丸窓のドアガラスが 旧海軍の放出品だと、どこに使う部品だったのでしょう。
客車のシーンは セット撮影なのは間違いないと思います。

資料が少ない時期の車輌について、細やかな解説 ありがとうございます 今後もよろしくお願いいたします。

テツエイダ | URL | 2022-05-15(Sun)17:50 [編集]


嫉妬

この映画のタイトルは本来は「喜劇 嫉妬」であるが、他にも「嫉妬」というタイトルが日本映画だけでも数多くある(5~6本)。

喜劇と言っても笑いこけるほど面白おかしいシーンはないが、それはそれで新藤兼人脚本の秀逸な喜劇だと思う。

冒頭、泡粒だらけ(バブル)+「結婚行進曲」(音楽)から始まり、嫉妬に狂った厳父が右往左往する様子にクスグリを加味した良質なヒューマン・コメディになっていると(個人的には)思いますが。

4枚目から11枚目は、いかに戦後間もない頃とは言え、山手線の駅とは考えられないほどさびれている(特に6枚目には背景に山のようなものが見える)。
多分、郊外の路線と駅なのでしょう。

言葉を失ったのは11枚目のドアの写真で、全面板張りに丸い穴のようなのぞき窓が付いている。
どこかで見たような体裁だと思ったら、田舎の宿屋の便所戸と同じ形状だった。
当時の山手線の扉は本当にこんな格好だったのだろうか。

当時の大スター・佐分利信と高峰三枝子が顔を見せる有楽町駅でのロケは大変だったろうな。

赤松幸吉 | URL | 2022-05-15(Sun)19:50 [編集]


東イヒ?

中央線の飯田橋駅ではないでしょうか?緩やかなカーブに記憶があり飯田町貨物駅と
思われます。
しかし入線する電車乗り込む電車降りる電車と全部形式が違いますね、殆どの作品が
こんなのばかりなのが何とも言えません。
ガラスは旧海軍軍艦用の舷側用丸窓ガラスです、波浪で破損する事が多い為補修部品
としてストックが大量にあったそうです。
63系の台車軸箱摺動部も軍放出品の砲金製でそこだけは豪華に見えたとの事。

N.N.LC33100 | URL | 2022-05-16(Mon)15:55 [編集]


Re: 嫉妬

赤松様 コメントありがとうございます。

本作のタイトル横に 喜劇と記していますが、単純な喜劇ではなく 赤松様のコメント通り「良質なヒューマン・コメディ」がピッタリですね。

11枚目の画像は、小生にも衝撃的でした。ドアガラスの板張りだけでなく、連続する窓ガラスも 上部3割弱で 大部分は板張りです。
これではさぞかし日中でも、暗い車内だったことでしょうね。

二人が乗車した山手線の駅だけでなく、下車してホームを歩くシーンは 駅名板を替えた別の駅と思います。

テツエイダ | URL | 2022-05-16(Mon)16:31 [編集]


Re: 東イヒ?

N.N.LC33100 様  コメントありがとうございます。

小生も右カーブから飯田橋駅も検討しましたが、飯田橋は直線部は僅かで 水道橋に向かって400m程の距離で 約60度方向を変える急カーブですので違う様に思えます。

更に不思議なのは 8枚目迄と 9枚目からは、架線と吊り方とホーム屋根の形から 別の駅で撮影していますね。

木板に丸穴を開けて 旧海軍軍艦用の舷側用丸窓ガラスを はめ込んで、明かり取りと外の確認用にドア窓ガラスの代用としたのですか 凄い事したもんですね。

 

テツエイダ | URL | 2022-05-16(Mon)17:05 [編集]


丸い窓ガラス

なんだか凄い映画ですね。昔も現代も、こんな男っていますよね。
現代なら忽ち離婚か刃傷沙汰ですね。この映画、見たら腹が立つけど最後は痛快かもしれませんね。さて、応急復旧の電車の丸窓ですが。艦艇の舷側の丸窓にしては小さいと思うんです。沈没の際に脱出できるような直径のはずです。それとも、板に開けた丸穴が小さいのでしょうか?日本海軍は大戦の中ごろから新造艦の舷窓を廃止し、在来艦も塞いだので、ストック品が大量に出たのでしょう。

つだ・なおき | URL | 2022-05-16(Mon)19:36 [編集]


原宿?

お久しぶりです。6~8枚目の駅、原宿ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
あくまで山手線であることが前提ですが、貨物線の位置と、架線柱の影の方向を考えると、恵比寿-池袋間のどこかということになります。左奧の木立が明治神宮だとすれば、地形的にも合います。

花見牛 | URL | 2022-05-17(Tue)12:09 [編集]


原宿駅?補足

花見牛です。
その後、昭和22年の原宿駅を撮影したという写真を、ネットで見つけましたので、リンクを張っておきます。ジャパンアーカイブズという、かなり信頼出来るサイトにある写真です。

https://jaa2100.org/entry/detail/052070.html

ご覧のように、山手線ホームに隣接して非電化の貨物線が走り、ホームの背後には明治神宮の森が見えます。
何より、貨物線の右手に見えるハエタタキ型送電鉄柱が、6~8枚目の写真のものに酷似しています。
ご検討材料に加えて頂ければ幸いです。

花見牛 | URL | 2022-05-18(Wed)11:44 [編集]


Re: 丸い窓ガラス

つだ・なおき様 コメントありがとうございます。

旧日本海軍艦艇の丸窓の大きさについては分かりませんが、手ごろな大きさのストック品があったのでしょうか。

まさか板に穴を開けただけだった? 明かり取りにはなりますが、いくら荒廃したご時世でもね・・・

テツエイダ | URL | 2022-05-18(Wed)21:18 [編集]


Re: 原宿?

花見牛 様  コメントありがとうございます。 

小生の返信が遅くなり その前に追伸が届いたので、追伸の方で返信を書きますが 鋭い洞察力ですね。
原宿は右カーブが気になり、候補から除いていました。

テツエイダ | URL | 2022-05-18(Wed)21:43 [編集]


Re: 原宿駅?補足

花見牛 様  続いてのコメントありがとうございます。

よくぞ 1947年原宿駅の画像を見付けられましたね。 成る程 説得力がありますね。 ほぼ原宿で間違いないでしょう。
当時はホームが短く、竹下口への通路がホームの端にあったのですね。

電信柱が立派な割に、山手線の架線支持方法が貧弱なのには驚きです。
しかし8枚目と9枚目ではロケ地が違い、何故別の駅でロケを行ったのかは謎ですね。

テツエイダ | URL | 2022-05-18(Wed)22:06 [編集]


原宿と新富町

駅の玄関と奥の坂道が出てきたところで原宿駅と確信しました。この洋館風の駅舎は最近まで使われていてこのあたりのランドマークになっていました。最後の主人公が走り出す背後のビルも直感的に築地菊栄ビル(1927~2013、松竹キネマ本社~菊正宗酒造東京支店、有楽町線新富町駅の上)ではないかと思いました。

京葉帝都 | URL | 2022-05-23(Mon)15:56 [編集]


Re: 原宿と新富町

京葉帝都 様  コメントありがとうございます。

築地菊栄ビルは、正にドンピシャですね。 小生が新富町界隈では?と書いたのは、都電の背後に映っているビルに見覚えがあったからでした。 

テツエイダ | URL | 2022-05-23(Mon)16:21 [編集]


三吉橋

首都高(旧築地川)をまたぐY字型の三吉橋(みよしばし)の上でカーブを曲がらんとする路面電車を見ると、東京都電(市電)は伝統的に小ぶりだったのですね。正面頭上にアメリカのインターアーバンのようなヒダヒダがあるのも印象的です。背後のR付の洒落た建物は中央区役所(京橋区役所)でこのあたりの佇まいはあまり変わっていないみたいです。

京葉帝都 | URL | 2022-05-24(Tue)02:07 [編集]


Re: 三吉橋

京葉帝都 様  コメントありがとうございます。

都電背後のR付の建物は、中央区役所(京橋区役所)でしたか。小生にも見覚えがありましたが、御堅い役所の建物とは知りませんでした。

テツエイダ | URL | 2022-05-24(Tue)12:58 [編集]


車両はきわめて貴重、されど駅は不明

テツエイダ様

モハ30前頭の山手線の駅、原宿と確定したのは何よりでした。私はモハ30のジャンパ栓の配置から内回り先頭車とだけはわかりましたので、ホーム上の影も考慮して山手線の左半分にあって貨物設備がなく高架でもない駅として、駒込か原宿ではなかろうかとあたりはつけたものの、そこで立ち往生していました。

さて、次なる難問は原宿とは別カットの駅です。まず敏子が乗り込んだ車両は三段窓と屋根上の水切りからモハ63の系統は確実、さらにパンタグラフが見えないため、戦後の混乱で電装できなかったサモハ63(実態は付随車)、または戦時中に木製車の鋼製化で少数つくられたクハ79のいずれかで、きわめて貴重です。ただし画面からの情報量が限られているので、この車両がどちら向きなのかはわかりません。

画面から得られる情報としては、ほかに架線の支持ビームがあります。斜めの補強材が右下へ降りていますが、この種のビームは左右から中央に向かってV形を構成するのが普通ですから、画面の右側には補強材が左下へ降りている部分がある…すなわちこの国電とは別系統の電化路線(あるいは電化された側線)が存在すると考えられます。
少なくとも山手線は除外され、中央線の急行線と緩行線、京浜東北線と東海道本線、この組み合わせが妥当なような気がしてきます。

画面後方に跨線橋が見えるので、信濃町あるいは東中野を考えてみましたが、東中野は架線支持が電光型(鉄柱で細かい補強が縦横にクロスしているタイプ)なので違いました。信濃町は当時の写真が見つからず、不明です。このほか荻窪は複々線区間ではないものの構内が広く、架線支持ビームは画面と同じV形が使われていて候補に加えたくなりますが、跨線橋とホームとの関係が違うようです。

ちなみに形式をサモハ63に特定した場合、山手線への新製配置はごく少数で、中野と三鷹電車区がかなり多いので、この点からも中央線系統を外したくはないのですが。
というわけで決定には至らず恐縮ですが、ここまでは考えましたという途中報告でした。

73おやぢ | URL | 2022-05-26(Thu)17:41 [編集]


Re: 車両はきわめて貴重、されど駅は不明

73おやぢ 様  詳細なコメントありがとうございます。

ロケ地・車輛について、理詰めの捜索力 流石ですね。
小生も信濃町案に賛成です。改造工事前の雰囲気が、10枚目の画像に似ている様にも思えます。

テツエイダ | URL | 2022-05-28(Sat)14:38 [編集]