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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

360.ごろつき無宿

1971年6月  東映 製作 公開  カラー作品   監督 降旗康男

炭鉱労働者の 竹田勇(高倉健)が 父親の遺言で 東京へ出て 真面目に働こうと 奮闘するも、工場拡張工事に 伴う 裏仕事を担当する 組織と衝突し 苦悩する 男の生き様を描いた 任侠風映画です。

冒頭 手押しトロッコによる 運炭作業を行う 小規模炭鉱が映り、
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続いて竹田親子が入った坑内で 落盤事故が起こって 竹田勇は生還しましたが
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父 竹田吉市(加藤嘉)は 遺言を残して亡くなってしまいました。
竹田は遺言で 炭鉱を退社し 東京へ向かうべく、地元の室木駅へと 母親(北林谷栄)共に急ぎます。
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駅には8620形蒸機の、38634号機牽引列車が到着しました。
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客車から 秋本ゆき(奈美悦子)と 幼い妹が降りてきました。
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ホームに出迎えがいないので、ゆきは改札口の方へ 捜しに行きます。それと引き換えに 竹田と母親が乗降デッキの方へ到着しました。
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母親は 一人ぼっちで泣いている女の子が気になり、「どげんしたとか」と声を掛けたところへ ゆきが戻って来ました。妹は「うちは叔父さんの所へ預けられるのはイヤだ」と言って、宥めるゆきを困らせます。
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母親がゆきに「どげんしたと」と聞くと、「うちが東京へ働きに行くのに 叔父さんの所に預かってもらう話だが、未だ迎えが来てなくて」と事情を話します。
叔父さんの家が 鍛冶町の杉森金物店だと 聞いた母親は、「妹を連れて行ってあげるから あんたは心配せんと 乗りんしゃい」と乗車する様に促します。
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竹田とゆきは 車内を移動して窓を開けると、別れの挨拶を交わし 妹は泣きながら「姉ちゃん」と連呼しています。
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そして発車ベルが鳴り終わると、汽笛が鳴り響きドレンを切って 汽車は動き出しました。
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妹は母親と一緒に追い駆け、「姉ちゃん」と呼びかける妹に 姉は「ひろちゃん元気で」と答えるのでした。
「行っといで~元気で~」と叫ぶ母親に 竹田は「母ちゃん~」と大きく手を振りながら答え、
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列車は徐々に加速しながら 室木駅から去り行きます。
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続いて8620形蒸機の 88622号機の走行シーンが映り、
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車内では 竹田とゆきが向かい合って座っています。
ゆきは同行する同級生の話から 熊本の中学では有名な バレーボールの選手で、腕を見込まれ 東京の大手工場への就職が決まったそうです。
しかし何故か 同級生の席に座らず、更にお弁当の誘いも断って デッキの方へ行ってしまいました。
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竹田は後を追い 扉が開いたままのデッキで 一人佇むゆきに、母親から渡された おにぎりを勧め
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二人で微笑み・涙しながら かぶりつきました。
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並行する電化路線には すれ違う方向へ、赤い電機に牽かれた コンテナ貨物列車が走っています。
続いて 東海道本線上り 新橋~東京の区間を走る、EF65形電機牽引の 特別急行列車あさかぜ号らしきが映ります。

竹田は身寄りもない東京で ヤクザ組織のお先棒を担いだり、テキ屋の仕事に就いて 真面目に奮闘しますが 良い方向へ進みません。
一方ゆきは 亡くなった母親と同じ 難病が発症し、バレーボールを続けることが 出来なくなって 旭紡績を退職し 寮を出てしまいます。

そして竹田に 別れの挨拶に行くも すれ違いとなり、一人寂しく 夕暮れの芋坂人道跨線橋に現れます。
ボンネットタイプの クハ481を先頭にした
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特別急行列車やまばと号が現れ、
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ゆきのいる跨線橋の下を 通過して行きます。
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呆然と見ている ゆきの下を走り行く列車は、終点上野駅を目指す 仙台発の特別急行列車ひばり号です。
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やがてしゃがみ込み 泣き出したゆきの横を、京成電鉄京成上野行電車が走っています。
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PS.
  ロケが行われたのは、室木線(遠賀川~室木 11.2㎞)の終点である 室木駅でした。作中では 途中駅である 室木に到着した列車から 秋本姉妹が降り、竹田親子と遭遇した脚本となっています。

  遠賀川から室木へ 11:32に到着した列車に エキストラ客と秋本姉妹が乗り込み、機廻しして 先頭に連結した 38634号機を100m程度バックさせた後 定位置まで前進停車して 途中駅らしく映したと思われます。
  そして 汽笛に続いて 涙の別離シーンを撮影したのは、機関車の次位に 運炭貨車セラがあることから 11:57発遠賀川行の 混合列車874レだったとも想像できます。
 
  それにしても同級生3人がいるのに 別のボックス席に、竹田と向かい合わせで 座ったのは 不自然でしょうね。

  デッキで竹田とゆきは おむすびを食べますが、並行している電化線を 逆方向へ走る 赤い電機は鹿児島本線の貨物列車でしょう。
  このシーンの最初に川を渡りますが この橋は西川橋梁で、この後 徐々に並行する 鹿児島本線から離れながら 貨物列車とすれ違います。
  
  つまり このデッキでのシーンは 室木からの上り列車ではなく、遠賀川駅から 次の古月駅へ向かっている下り列車で ロケが行われたのです。
  何らかのミスがあって 仕方ないので、次の遠賀川 14:24発の873レで撮り直しとなった?

  ロケ当時も 蒸気機関車だけで運行されていた室木線ですが、1974年1月20日をもって 蒸機は廃止され DL・DC化された後 1985年3月末をもって廃線となってしまいました。

  有名な撮影スポットである 鶯谷~日暮里にある 芋坂人道跨線橋は、数々の映画で ロケが行われてきました。
  ラストから3枚目の画像は、当時の特急の象徴である 食堂車が通過している場面です。



  青春映画の如く 真面目に東京で働き 母親を呼び寄せる 希望を持っていた竹田ですが、仕事にも恵まれず 恩ある浅川源造(志村喬)が 唐沢組に惨殺されたことから 長ドス一丁で単身殴り込み 唐沢(渡辺文雄)を一刀両断にする ラストシーンは 結局健さん映画の いつものお定まりコースですか・・・

  当時二十歳で身長168㎝の奈美悦子さんに、中学卒業で就職へ向かう役を やらせるのは いくらなんでも・・・


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コメント


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宝石のような日常風景

8620型の牽くセラ1輌と61系客車2輌の混合列車、非冷房赤電塗装の京成3200型
サシ481を連結したボンネット型の481系特急、現在こんな列車が走れば撮り鉄が
大挙して押しかけて収集の付かない騒ぎになるでしょう。
50年前は特に注目される事も無い日常風景だったのに。
ステンレス無機質で没個性でつまらない車両が跋扈する現在から見れば
宝石のような輝きを放って見えます。

前髪を垂らした健さんのヘアースタイルは貴重ですね、短髪刈り上げのイメージが強いので。

N.N.LC33100 | URL | 2022-04-20(Wed)17:48 [編集]


Re: 宝石のような日常風景

N.N.LC33100 様  コメントありがとうございます  返信が遅くなり すみません。

さすがの眼力ですね ハチロクの次位は 形状からもセラでした 訂正させていただきます。

本作の序盤は 青春映画ですので、健さんのヘアースタイルも 合わせているのでしょう。
しかし テキ屋を始めた時から 通常の姿になり、お決まりのラストに 向かって行くのでした。

次回作のラストに登場する 蒸機牽引客車の解説も、出来ればお願い致します。

テツエイダ | URL | 2022-04-23(Sat)11:54 [編集]