
極東商事 総務部次長 船田三郎(池部良)が 上司の急死で二号さんや その親戚の娘と知り合う一方、会社内での勢力争いと 社内人事の裏側を描いた サラリーマン映画です。
上司である 相川総務部長が急病死した為 船田は塚越正信社長(十朱久雄)の指示で、急遽 大阪の関西物産へ 大口の契約締結交渉の為に 出張することになりました。
会社で 田崎秘書(松尾文人)から 大阪への乗車券・急行券・寝台券を渡されますが、

この切符は社長命令で 田崎が亡くなった相川部長のポケットを 探って取り出したものでした。
続いて 寝台車の個室から出て 通路を歩く列車給仕が映った後、

寝台車の上段で 浴衣に着替えて書類を確認している船田の 寝台カーテンが突然開けられ 着物姿の女性が 船田の目の前に現れました。
女性は「あらごめんなさい」と詫びて カーテンを閉めます。

船田は切符を確かめ、間違いないことを確認します。

その間にも「横浜~横浜 21:04発大阪行 二三等急行月光号です」と、横浜駅での構内放送が聞こえています。
再度女性から「あの~失礼ですが」と声が掛かり 船田がカーテンを開け「私の寝台券は間違いありませんよ」と答えると、

「もしや他の方から…」と女性が聞くので「実は部長が急死したもんですから」と答えるや 驚いた顔で「相川さんが…本当ですか」と 絶句した様子です。
それを聞いて船田が「相川さんを御存じなのですか」と問うと 否定し、個室の扉を開けたままで 女性は通路からデッキの方へ行ってしまいました。

床には 女性が持参した手土産か、焼売の包みが二つ落ちています。

後日 無事大役をこなして 帰京すると、会社に 和田きみ子(淡路恵子)という女性が 船田を訪ねてきました。喫茶室で会うと「相川から万一の時は 船田さんにお願いして、会社の机から 子供名義の預金通帳を 出して頂くように」と聞かされました。
船田は 勝手に遺品に手を付ける事になると 悩んだ末に 遺族が来社する日の 際どいタイミングで入手し、きみ子のアパートで渡すと感謝され 親戚の若い女 英子(団令子)とも知り合います。
そして英子は船田に惚れ、妾になりたいと志願される始末です。
一方 社内で意気投合した専務の立花愼介(河津清三郎)と熱海へ静養旅に誘われ、立花は柳橋の芸者 松栄を同伴するので 船田は英子を連れにと誘いました。
デッキから二等車のドアが開き、買い物をしてきた英子が陽気に現れます。

そして「美味しいわよノシイカ」と明るく言いながら皆にノシイカを配りますが、

仏頂面一辺倒の船田に対して「失礼しちゃうわ!人のこと誘っておいて」と言いながら肘鉄+耳を抓りあげる始末です。
それを見た立花が笑いながら「どうしたんだ船田君 散々じゃないか」と言うと、

船田は表情を変えずに「何分不慣れなもので」と応えたので 松栄は「いゃだわ~」と言いながら 船田の膝を叩き 一同爆笑です。

旅館でお互い 別々の部屋に分かれ さていよいよと 英子が期待した時、突然「松栄が胃痙攣で大変だ」と 立花に呼ばれた二人は 一晩中看病する始末となってしまいました。
翌日 何とか帰って来た4人は、東京駅で挨拶を交わして 別れました。

英子が「いやよ!このまま帰るのは」と言った時、通り掛かった 知り合いの宮本直彦(佐原健二)に 女連れの旅帰り姿を 見られてしまい 散々な静養旅でした。
その後 塚越社長は妻の弟で 青山商事 総務部長の富田(伊豆肇)を 次期総務部長に就任させる為、クラブで働く きみ子を口説こうとして 難航している竹山会長(柳永二郎)に 裏取引で斡旋しようと 画策します。しかし きみ子の機転で裏工作の
の存在を伝えたので 竹山を怒らせ 社長は立花に替わり、船田は大阪支店への左遷を逃れて 総務部長に就任することになりました。
また 家族との板挟みで 悩む船田の様子に、英子は船田と別れて 鳥取の実家に帰ることを決意しました。英子が帰郷する日 船田は東京駅へ駆け付け、動き出した列車のデッキに立つ英子と 握手を交わし見送ります。

去り行く列車のデッキから 手を振りながら英子は、「立派な重役さんになってね」と叫んでいます。

その声をしみじみと聴きながら、船田は8番線ホームから 静かに英子を見送るのでした。

PS.
船田が田崎秘書から受け取った 切符の当時の価格は 都区内から大阪市内への二等乗車券(2380円)と 600㎞迄の二等普通急行券(840円)・二等C下段寝台券(1560円)でした。しかし何故か 船田は東京から乗車したと思われる時から 上段寝台にいます。
田崎秘書は 相川から頼まれ 度々出張の折に 二人分の切符を 手配していた様ですから、横浜から乗車駅を ずらして乗って来た 相手のきみ子が持っていた寝台券は 通常下段の筈で 普通の男は映像での船田の様に 上段に寝ました。
ところが切符のシーンで、下段寝台券が映っているのは 手違いでしょうか? 眼の良い観客は(私の寝台券は間違いありませんよ)と言い張る船田こそ 間違っているのでは?と思ったことでしょう?!
寝台車と次の 特ロ座席シーンは セット撮影の様で、12枚目の画像と 最後の東京駅8番線見送りシーンは ロケのようです。寝台車は4人用個室が連なり、月光号にも当時 2年10か月間存在したスロネ30形二等寝台C室を 意識していると思われます。
でも 戦後製作された スロネ30形にしては内装が、高級木材を使った 戦前製の一等寝台車の内装の様に思います。
後日 米田作市様よりの ご指摘もあり、スロネ38形でのロケか似せたセットでの撮影の様です。
また 17レ急行月光号は 横浜22:03発車であり、21:04発車に近いのは21:03発41レ急行筑紫号博多行なので 架空放送の様です。声調が(300.張込み)の 横浜駅構内放送音声と似ており、駅の放送が 得意な声優さんが 当時はいらしたのでしょうか?
英子は船田との愛を諦め 東京駅8番線から 鳥取へ帰るのですが、札無しの普通列車を使っています。行程を想像すると東京 14:20 ―(111レ門司行)― 4:00 京都 5:40 ―(825レ出雲市行)― 12:13 鳥取 と 22時間程掛かりますが 乗り換え1回だけです!
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