
淡路 松平家の跡継ぎとして東京から呼ばれた松平定夫(和田浩治)が、松平家所有物件を買収し 観光開発を目論む極東観光社長南條(近藤宏)の悪巧みを 粉砕する活躍を描いたアクション映画です。
冒頭 松平が働くレインボーアート社の親爺 相馬大作(紀原耕)が 南条が運転する車に衝突されて亡くなり、東急電鉄らしき電車が走る高架線下では

通過時には激しい轟音と振動の中で お通夜がとり行われています。
ところがこの席に 極東観光の事故対応係が 三万円で示談の話を持って来たので、翌日 憤慨した松平が 極東観光へ自転車に乗って 殴り込みに向かう時 背後に小型の都電が走っています。

松平が事故の賠償金百万円を 獲得した新聞記事を読んだ松平家弁護士の 井関三四郎(高品格)は、松平が先代の 隠し子であることを確認し 淡路島の本家へ連れられて行きました。
淡路 松平家六十一代目の奥方・松平郁代(細川ちか子)は 松平を気に入り 願い出を叶えます。松平は南條の企みを察知し、先回りして 次々と手を打ち 計画の進行を阻むのでした。
遂には 郁代を拉致した南條一派は、土地の権利書と人質交換だと 白土山へ呼び出します。
南條の愛人として振舞っていた 前原由紀(東恵美子)が 松平の実母だと判明し、松平を止めますが 振り切って馬に乗って駆け付ける松平です。
郁代の危機に 権利書を渡す松平ですが、そこへ警官隊も駆けつけたので 南條は小舟に乗って逃走を図りますが 渦潮に飲み込まれてしまいました。
南條の悪事の 片棒を担いでいた由紀は、郁代が止めるのも聞かず 帰京する為駅へ向かいます。
淡路交通の福良駅らしきから 電車に乗った由紀は 思い詰めた表情の中 ドアが閉まり、

電車は洲本へ向かって 発車して行きました。
戻った松平に郁代は、未だ間に合うから 追い駆ける様に告げます。
2両編成電車の走行シーンが映った後

松平がジープを運転して 電車を追い駆け

途中で追いつくと、盛んにクラクションを鳴らします。気付いた由紀は、ジープに乗った松平を確認しました。

電車を追い越し 先回りして踏切を渡った松平は、車をバックさせて 踏切を塞ぎ停車します。

そして迫る電車に向かって 大きく手を振ります。

踏切に近付いた電車の運転士は 万事承知の上か、警笛も遠慮気味に 車の前で停車するのでした。
松平は 電車の二両目に走り寄ると

何故か開いているドアから 母親の由紀を受け止め抱擁し、

「もう離さない」と呟くや 皆が窓から見ている中 車の方へ向かって行きます。

PS.
島にある地方鉄道として 戦後唯一の存在だった 淡路交通が登場する映画として有名な本作は、和田浩治主演の 愚連隊シリーズ第二弾として 鈴木清順監督の元に製作されました。
日活と淡路交通・観光協会との タイアップ映画なので 淡路島の名所各地が 位置関係を無視して次々登場しますが、当時16歳の和田浩治に ジープで公道を運転させるなど 万事大らかな製作状況です。
淡路交通の社長宅を 淡路松平家本宅として ロケに使わせている割には、最後の追い駆けシーンしか 淡路交通の車輌が登場しないのは残念ですね。
登場した電車の片方は 南海鉄道の電8形として 1924年梅鉢鉄工所製作された木造のモハ132で、1956年6月に淡路交通へ譲渡され翌年昭和車輛工業所で半鋼体化されたモハ1010です。
もう一輌は 1921年川崎造船製の南海鉄道 電5形モハ120で、モハ132と同時に淡路交通へ移り 半鋼体化されたモハ1011だそうです。
淡路交通鉄道部は 1966年9月末をもって廃止されましたが、翌年水間鉄道へ この2輌は譲渡されて モハ362・363として活躍しました。
それにしても 母親に追い付く為に 踏切にジープを停車して 強引に電車を停めて 母親を降ろすとは、無国籍映画連発の日活ならではの脚本ですね。
おかげで 貴重な淡路交通の電車が登場する映画が、とても印象に残る 奇想天外な作品として 後世に残ることでしょう。
参考資料 : 鉄道ファン № 126


