
両親を戦災で亡くし 設計事務所で働く齋藤隆太郎(小林桂樹)は 同僚女性と結婚を望むが、結婚退職の社内規則と 大学進学を望む弟の件で 悩む姿を描いた青春ホームドラマです。
冒頭 荒天の京王帝都電鉄 井の頭線 池ノ上駅へ

到着した電車から 傘を持たない齋藤が降りて、車内の女性に手を振り 改札口へ走るのでした。

翌朝 1900形らしき3連が池ノ上駅に到着し

齋藤の恋人 吉崎綾子(八千草薫)が、前日借りた傘と 背広の生地を抱えて降りてきました。齋藤の下宿先へ行くと 既に出勤後なので、弟泰助(久保明)に渡しました。
土曜日なので昼に退勤し 四ツ谷駅前を歩く二人の背後には、都電11系統の電車と 聖イグナチオ教会の聖堂が映っています。

続いて 井の頭線 1900形の走行シーンに続いて

先頭車 1901での車内シーンが有り、齋藤の袖の擦り切れた背広を見た綾子が「今朝 下宿へ寄って 背広の生地を預けて来た」と言って背広を新調する様勧めます。

そして「明日井の頭の駅で10:00で」と約束を確認して、池ノ上駅で 齋藤は先に降車します。
その後 井の頭線高井戸駅で到着した 吉祥寺行電車から、

背広生地を抱えた斎藤が降り 構内踏切を渡って改札口へ向かいます。弟の大学進学の為倹約し、背広の新調を諦めたのでした。
綾子の家で再会した齋藤は、背広を断り 駅までの帰り道で求婚します。「弟の大学卒業まで4年待ってくれ」と願い、綾子に同意してもらいます。高井戸駅で

明日は相模湖へ婚約旅行に出掛ける約束をして、朗らかな綾子の見送りを受ける齋藤です。

池ノ上駅で 1760形らしきから降りて来た齋藤は

帰宅後 泰助に向かって「大学に行け」と話しますが、叔父さん(北沢彪)宅で諭された泰助は アルバイトして夜学へ通うと 齋藤の申出を断りました。
翌朝 晴々とした気分の兄弟の前に 齋藤に進呈する亡父の背広と サンドウィッチ籠を持った綾子が現れ、家の前の井の頭線を 明るい1800形らしき3連が走り抜けて行く姿に続いて エンドマークとなります。

PS.
本作はプログラムピクチャー的短編で 青春映画らしき内容なれど、ラブシーンはおろか 手も繋がない二人を 描いています。また 全て善人ばかりが登場し、悪役や強面人は 一切出てきません。
それ故 文部省特選で 母の会・主婦連合会も推薦の、教育上好ましい映画なのでしょう。 今 小生の様な 年代者が観ると ほっこり心温まる作品で、何より1957年当時の 京王帝都電鉄 井の頭線が随所に現れ 満足度が高い作品です。
京王帝都電鉄全面協力で 撮影されたと思われますが、冒頭の荒天での 池ノ上駅場面のロケは 終電後に大勢のエキストラとロケ用電車を使い ポンプで大雨を降らし 風を送って撮影したのでしょう。
でも全面協力に対し 当時最新型の1900形がやたらと登場します。当時は戦前からの使用車を含めて 旧型車両が多数在籍していましたが、京王帝都としては PRも兼ねているので 極力1900形を映してほしかったのでしょう。
斎藤は 池ノ上駅近くに住んでいる設定ですが、最後の画像を見ると 車輛の後方に遠く見えるのが 旧高井戸駅の様にも思えます。
また綾子の家の有る高井戸駅は、拙ブログでも(31.宇宙人東京に現わる)(49.結婚の條件))(61.女妖)(334.ファンキーハットの快男児)など度々 旧駅舎でロケが行われていました。
当時の男性は勤務時は勿論、休日のデートにも背広で出かけていたんですね。そう言えば第一回ハワイツアーの集合写真を見た時、男性は全員背広だった様な記憶が有ります。
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