
黒人混血児姉弟が 差別や からかいに遭いながらも、子供らしく逞しく 明るく成長する姿を描いた 社会派映画です。
川田キク(高橋恵美子)と イサム(奥の山ジョージ)の姉弟は、母親が病死したので 祖母しげ子(北林谷栄)に 乳飲み子時分から育てられています。
迫害に遭いながらも 元気に育つ二人ですが しげ子は行く末を案じ、二人を アメリカへの養子縁組の斡旋組織に 依頼する様になりました。
その結果 イサムが裕福な農家との 養子縁組成立となり、地元の下久野駅へ 皆でイサムの送り出しに向かいます。
イサムの写真を撮りに来た 斡旋組織の男(滝沢修)・イサムの担任の小野寺先生(織田政雄)・親切な隣家のきみえ(朝比奈愛子)・しげ子・イサム・キクの6人が、木造駅舎の下久野駅へ到着しました。

待合室の木製ベンチで しげ子・イサム・キクの3人は、夏ミカンらしきを 揃って食べています。

やがて「10:23発の郡山行列車の改札です この列車は郡山で 13:05発準急上野行に接続します」と構内放送があり、イサム以外の一同は 男から貰った入場券で 改札を通りホームへ出ます。

遥か彼方から 蒸機牽引の列車が近付いて来ました。

しげ子は「向こうさ行ったら生水飲むな」とイサムに伝えます。郡山行のサボを架けた オハ61形三等車の窓から、白人混血児らしき 二人を連れた男が「オーイここだ」と呼んでいます。


男の後からイサムは乗車し、窓を開けてイサムは 最後の見送りを受けます。先生・きみえ・しげ子は 一言ずつ伝えますが、イサムに元気が無い様に見えたキクは 微笑んでペロっと舌を出して和ませます。

機関車の汽笛が鳴ると、

小野寺先生は お菓子の包みを手渡します。列車が動き出し 最後の挨拶を交わしていると、


突然イサムが「オラ行くのヤンダ」と叫ぶや デッキへ走り 飛び降りようとします。
しかし男が抱きかかえ 阻止する中 汽車は加速し、

キクは「イサム~」と言いながら 追い駆けますが 為す術なく 改札口前で立ち止まります。


キクはイサムとの 永遠の別れとなった実感が湧いてきたのか、去り行く汽車へ向かって 泣き続けるのでした。

悲しい旋律の BGMと共に、哀愁を帯びた汽笛の音が辺りに鳴り響いています・・・
PS.
本作は何と言っても 水木洋子の脚本で成り立っています。今井監督達が選んだ姉弟役は 水木の構想に合わず、自らが捜して 荒川区の高橋恵美子と 横須賀の奥の山ジョージに 監督の反対を押しきって決めさせたそうです。
そして未経験の素人二人を じっくり時間をかけて仕込み 自然体で演じられる二人に育て、脚本も二人の個性に合わせて書き換え 撮影に入ったそうです。
大部分は現在の 福島県喜多方市岩月町入田付平沢(磐越西線喜多方駅の北方8㎞)の集落で撮影したそうですが、何故か鉄道シーンを撮影したのは 五日市線西秋留駅と思われます。(当ブログの検索コーナーから西秋留を参照されたし)
従って磐越西線らしきの下久野駅を始め 10:23発郡山行列車・13:05郡山発上野行準急も、当時の時刻表に該当列車は無く架空設定です。
8・10枚目の画像でC11形蒸機の一部が映っていますが、何らかの事情から磐越西線でのロケで無い為の措置と思われます。
それでも撮影に向いた時間帯に当時2本しか走っていなかった蒸機牽引列車に郡山行のサボを架け、駅構内を下久野駅として装飾してイサムとの別れの場面の雰囲気は満点でしょう。
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