
薬品会社の営業マン 速水信吉(千葉真一)から求婚された 片桐雅子(三田佳子)は、既に嫁いでいる 三人の姉の状況から 速水を結婚相手とすべきか 悩む過程を描いた青春映画です。
序盤 母親 滝子(山田五十鈴)が望まない 三女 加奈子(岩崎加根子)が結婚した 国鉄機関士 朝山三吉(南廣)の登場場面で、先ず D51形蒸機牽引貨物列車が 複線非電化路線を走る様子が映ります。

続いて 広い操車場らしきで 単機のD511112号機(田端区)らしきが走る姿があり、

朝山が D51の乗務を終えます。

降車したところへ 交代の機関士から、「さっき奥さんから電話で 角の店にコロッケが 買って置いてある」と伝言されます。

長女 菊乃(淡島千景)は 夫 三つ峰路春(西村晃)の 不貞に耐え切れず家出し、三女 加奈子夫婦が暮らす 国鉄官舎へ身を寄せます。しかし 一週間を過ぎると 夫婦間に亀裂が生まれ始め、加奈子は「新婚旅行が一番の思い出なのが悲しい」と呟きます。
駆け落ち同然の 新婚旅行を思い出し、先ず 夜行の貨物列車が映ります。そして 有蓋緩急車らしきの車掌室で、朝山と加奈子は ストーブの前で 並んで座っています。

隣の荷物室から 車掌(潮健児)が現れ、「この駅で降りるんだろ」と促しました。

言われて気付いた二人は 慌てて降りるや 汽笛が鳴って 列車が動き出すと 車掌と朝山は握手を交わし、

「奥さん 運賃はいずれ出世払いで」と言われた加奈子は、「初めて奥さんと呼ばれて 胸が熱くなった」と回想します。

その後 三つ峰は離縁を突き付け、菊乃の嫁入り道具を 実家に返却してきました。滝子は呉服屋を呼んで、菊乃の着物を処分します。その仕打ちを見た 夫の片桐良道(笠智衆)は、趣味の盆栽を叩き割って 家出してしまいます。
101系の 黄色い山手線電車が映った後で、

若い人が妙に多い 車内セット撮影シーンが映ります。片桐は次女 操(扇千景)の嫁ぎ先で一泊して、翌朝 滝子への遺書を残し 姿を消してしまいます。
母 滝子からの電話で 遺書を発見した操は、滝子へ伝えて 更に姉妹全員に伝わります。直ぐに最寄りの 中央本線上諏訪を目指して向かい、重装備の D51110号機牽引の 旅客列車の走行シーンが映ります。

如何にもセット撮影の 一等車内では 滝子・菊乃・加奈子・雅子の四人が 向かい合わせて座っていますが、

心配そうな顔はしてても雅子を含め 誰一人喋る者はありません。

車窓を流れる八ヶ岳連峰らしき山並みの中、滝子へ宛てた遺書を朗読する片桐の声がバックに流れています。
PS.
最初の画像は 通称 田端貨物線(常磐線貨物支線)を京成電鉄と交差する地点で、三河島から田端操車場へ向かう 当時水戸区所属の D51226号機牽引貨物列車です。
ロケ前年 常磐線は勝田まで電化されましたが、貨物列車は未だ 蒸機が牽いていました。そして本作公開の二か月前に 田端貨物線から常磐線に合流する三河島で、死者160人の 悲しい大事故が起きた過去があります。
駆け落ち同然の 新婚旅行に出掛けた 朝山夫妻は、知り合いの車掌が乗務する 有蓋緩急車の車掌室に 乗せてもらった様です。加奈子は鞄の中身を「ハイヒール1足と長襦袢2枚 この日の為に二晩徹夜して縫い上げた」と説明しますが、ほっこり・微笑ましい場面ですね。
ワフ21000形有蓋緩急車の車掌室を参考としたセット撮影と思われ、ダルマストーブ上のヤカンが沸いています。
片桐が 滝子の菊乃に対する 仕打ちに怒って家出し、翌朝 操宅で遺書が発見され 皆で八ヶ岳へ追い駆けます。普通なら 10:00頃新宿発の 列車に乗るでしょうが、該当する時間帯 前後3本は 気動車急行列車ばかりです。
明るい内に現地へ到着出来るのは 新宿7:00発 2405レ準急穂高1号ですが、甲府~松本は DF50形内燃機重連で 作中と合いません。新宿 10:30発 425レ長野行もありますが、一等車は甲府で切り離されてしまいます。
D51110号機 牽引旅客列車の 走行シーンでは、長野工場製 集煙装置・重油併燃装置を 搭載した山線重装備で 本線規格ハエタタキが並ぶ 中央本線らしきを豪快に走る姿が映っています。
八ヶ岳連峰へ 片桐の捜索に 滝子・菊乃は着物姿で向かい 発見の一報を聞くと、そのまま山を登ってしまうとは 凄い台本ですね。(ロケ地は不明ですが・・・)
先月急死された 千葉真一氏の追悼を兼ねて、鉄道シーンには登場しませんが 本作を取り上げました。 ご冥福をお祈り申し上げ、作中での画像を御紹介致します。



