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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

344硝子のジョニー野獣のように見えて

1962年9月 日活 製作 公開   監督 蔵原惟繕

家族の生活の為に 身売りされた 深沢みふね(芦川いづみ)が 脱走し、追い駆ける男と みふねが寄り添う男 絡み合う三人のドラマを描いた映画です。

タイトルクレジット直後 娼家から脱走した みふねと よしえ(和田悦子)は、近くの函館本線近文駅へ入り込み 発車しかけている列車に みふねは飛び乗りますが
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秋本孝二(アイ・ジョージ)に よしえは捕まってしまいます。
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ホームに秋本と よしえを残し走り行く夜汽車ですが、
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みふねはデッキで 車掌(青木富夫)に無賃乗車で捕まってしまいます。
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そこを一等車から出て来た ジョー(宍戸錠)に、金を払ってもらい 助けられました。

そして列車は、翌日終点の函館駅へと着きます。
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乗客が皆降りた ゴミが散乱する車内通路で、みふねは未だ 寝ていました。
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漸く気付いた みふねは、
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慌ててホームに出て 郵便車の横を進んで行きます。
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先に改札口を出た ジョーを追い駆けて ホームから飛び降りて フェンスの下穴から 外へ出ちゃいますが、この間 みふねはずっと 裸足のまま 砕石の上を走ったりするのには驚きです。

その後 みふねはジョーのことを 心に求める{ジョニー}と思い込んで、ジョーに邪魔者扱いされても 寄り添い続けるのでした。ジョーは 競輪の予想屋を本業に、見込んだ競輪選手 宏(平田大三郎)のトレーナーもやってます。
ジョーは 宏に頼まれた 五万円を工面する為 函館駅に近い天狗食堂へ行くと、外で待つ みふねは 秋本に見つかってしまいます。秋本の背後には 函館駅に停車する、気動車急行らしきが見えています。
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ジョーは 秋本を撃退しますが 宏から 選手の編成替えで 18:00発札幌行で 小樽へ行く必要があると聞いて、金の工面に困った挙句 みふねを 娼館花乃家の おきく(武智豊子)に売ってしまいます。
みふねには 18:00に競輪場で 待ち合わせの約束をしておいて、発車間際の 札幌行に乗り込み 宏に金を渡して 同行するジョーでした。
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離れた座席では 宏の恋人和子(松本典子)が、二人の様子を 伺っています。
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続いて走行中の蒸機牽引列車が映ります。
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そして 一人泣きながら ジョーを待つみふねの前に 秋本が現れ、函館駅に連れていかれました。D51形蒸機が バックで機回し中らしき様子が 先ず映ります。
続いて 函館終着の普通列車が停まり、秋本はみふねの髪を 引っ張って乗せようと
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デッキの前に移動します。下車客が尽きるのを 待っていると、秋本が売り飛ばして 自殺した京子の 兄(玉村駿太郎)と鉢合わせします。

妹の敵である 秋本に気付いた男は ナイフを取り出し、秋本の心臓の斜め上辺りを 刺してしまいます。直ぐに騒ぎとなり 男は駅員に取り押さえられ、秋本は別の駅員によって 救助されます。
騒ぎが収まり 折り返しの列車に乗る乗客に混じって みふねも二人分の荷物を持って 乗り込もうとしますが、
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はたと気付いて 秋本が入院した病院へ 荷物を届けに向かいます。

一方 みふねを裏切り 宏と札幌行の列車に乗ったジョーは、発車間際に買った ウヰスキーを飲んで すっかり寝込んでいました。然別駅で 発車の汽笛で起きると、宏の姿は無く 決別の置手紙がありました。
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騙されたことに気付いたジョーが 反対の窓の外を見ると、宏が和子の手を引いて 改札口の方へ走っています。ジョーはデッキへ 宏の名を叫びながら走り出ると、
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既に加速している列車から 飛び降りそうになる所を 車掌に制止されたのでした。

宏に自分の夢を掛けていただけに ジョーは腑抜け状態となり、一般客立ち入り厳禁の 青函連絡船の航送車輛デッキで 呆然としている姿があります。
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一方病室へ荷物を届けた みふねは、秋本が不憫に思えたのか 付き添って看護するのでした。秋本は人身売買で 手配中だったので、退院と同時に逮捕となる身でした。

ところが 退院の日に迎えに来た 警官から自分を棄てた妻の行方を 伝言されたので 暴れて窓から逃走し、又しても みふねの誠意は 裏切られたのでした。
漠然と故郷稚内を目指して 放浪するみふねは 釜谷駅に現れ、
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駅員に「稚内」と言うや 呼び止める声も聞かずに 下り方面の線路上を歩いて行ってしまいます。

更に雨降る夜間でも 線路内を歩き続けるみふねは、前方から近付く 蒸機の灯りを 夢見るジョニーと思い込んで 避けようとしません。
9600形らしき蒸機は汽笛を鳴らし続けるのに 退避しないので 急ブレーキで停車するや、
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乗務員が倒れ込んでいる みふねを救助し 入院の運びとなります。
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それから 退院したみふねは 遂に故郷の実家に辿り着きますが、既に家族は引っ越した後で 行方も分からないのでした。
その頃ジョーは ヒッチハイクで 秋本はギターをつま弾きながら 列車で みふねの行方を追っています。
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D51形蒸機牽引列車が映り、
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小さな駅舎から秋本が出てきました。











PS.
  芦川いづみが 出演作品中 ベストワンに自選した 映画だそうです。頭の弱い女性役で 変顔を全編で連発し、飛び乗りシーンや 裸足でホームから飛び降りたりと 彼女のイメージに合わない異色作品です。

  近文駅は 函館本線終点旭川駅の 一つ手前ですが 半車一等車付の 上り普通列車は 夜間に無いので、ロケ用の列車を走らせてもらい 芦川いづみには珍しい 飛び乗りシーンを撮影したと思われます。

  近文から函館は遠く 当時のダイヤで作中の様に 直通の普通列車となると、旭川始発の 近文6:24発で 函館19:21到着の 122レが唯一の列車でした。

  宏がジョーと待ち合わせて 乗った函館18:00発の 札幌行も架空列車で、実態に近いのは 函館15:08発45レ札幌行です。宏と和子が降りた 然別駅も遠く、45レに乗ったとしても 21:52頃の到着で 終列車でした。
  何故か 12枚目の画像は C62形蒸機が牽引する 急行列車なので、函館 14:25発 17レ釧路行の急行まりも号の雄姿と思われます。

  秋本が嫌がる みふねを連れて 乗ろうとした列車も、撮影用の列車を用意してもらって 多数のエキストラを動員しての ロケと思われます。普通に乗るなら 23:20発 419レ釧路行が 該当します。

  腑抜け状態となった ジョーが入り込んだ 青函連絡船の航送車輛デッキでの撮影は 大変珍しいロケで、多数の映画で ロケが行われたのは 青函連絡船の屋外デッキでした。
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  放浪する みふねが辿り着いた 釜谷駅は、江差線の釜谷駅と 思われます。函館本線沿いではなく 函館から海岸沿いに歩いたので、釜谷駅に着いたのでしょうか。
  しかし駅員は 下りに乗れば稚内で「歩くと1~2時間掛かりますよ」と言っているので、該当するのは 天北線の 宇遠内仮乗降場です。(無人駅でしたが稚内まで4.8㎞)

  最後から一枚手前の画像は みふねの元へ 列車で向かう秋本ですが、蒸機牽引列車の筈が 座席の後ろに 排気管が出っ張っていて 気動車の様ですね。


  みふねが通路で寝込ん で函館に到着した場面で、遥か昔 常磐線の松戸から 上り上野行 長距離普通列車に乗った時、もの凄い量のゴミが 座席の下にあったのを思い出しました。









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コメント


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硝子のジョニー 野獣のように見えて

本人のベスト・ワンに自選した映画で、いづみちゃんの圧倒的な熱演に目を奪われるが、ファンとしてはいづみ作品の「好・悪」の分かれるところだ。

(美人)女優というものは美貌のヒロインや可愛いマドモアゼルの役をのべつ幕なしに続けていれば、時には「汚れ役」や「悪女」を演じてみたくなるらしいが、(私的には)芦川いづみさんはいつまでも知的で麗しく清楚な、ボクの「聖処女」であって欲しかった。

いづみちゃんの「振り幅の大きさ」にショックを受け、いづみちゃんが惨めで痛々しく(特に、競輪場での予想屋のシーン)、やりきれない気持ちになったほどだった。
恋焦がれるいづみちゃん、後生だからそんな情けないこと、やめてよ!

鉄道シーンは、駅もホームも車両もすべて実物で、セットではないと思われます。
その分、リアルで臨場感に溢れる画面となっています。

5枚目の函館駅の写真はよほど高い所から撮らないとこのような俯瞰図にはならない。
駅のすぐ側に高台あるいは高い建物があるのであろうか。

赤松 幸吉 | URL | 2021-09-04(Sat)19:37 [編集]


Re: 硝子のジョニー 野獣のように見えて

赤松様 コメントありがとうございます。

小生も同感で、競輪場での予想屋のシーンは健気な感じよりも痛々しく思えました。

殆どが実物でのロケですがあえて言えば、酒を飲んだジョーが走行中のデッキから外へ吐くシーンは停車中に外でスモークを焚いて撮影したと思われます。 

本作では函館の様な大きい駅で大勢のエキストラを動員して、国鉄の大規模な協力の元に撮影しています。
日本映画の力がまだ大きかった時代故に可能だったと思います。

5枚目の函館駅の俯瞰映像は、ヘリによる空撮と思われます。僅かなこのシーンの為に使ったとは思えませんが、現在なら手軽なドローンを使うのでしょう。(許可が取れればですが)

テツエイダ | URL | 2021-09-05(Sun)13:31 [編集]


連絡船は貴重です

テツエイダ様

列車もいろいろ見どころがありそうですが、特に青函連絡船に注目しました。一般になじみのある津軽丸型は1964年から順次就航しましたが、本作の公開は1962年!! ということは、客貨船であれば蒸気タービン船の洞爺丸型、あるいは洞爺丸の代船として急遽建造されたディーゼル船の初代十和田丸が候補で、少なくとも津軽丸型ではありません。さすがに車両甲板から船名の特定はできませんが、貴重なシーンだと思います。

貴重ついでに、車両甲板の後方から光が入っているということは、車両の出し入れに使う船尾の水密扉は開いていますね。洞爺丸事故の教訓もあって、航行中は水密扉の開放は禁じられていました。とはいえ、撮影や取材などでロケ隊が車両甲板へ入ると、悪天候でなければ開けてくれたそうです。「そのくらい、いいんでないかい(ちなみに北海道弁)」とのサービス精神か、国鉄全面協力の結果なのかはわかりませんが、いい時代であったことは確かなようです。

73おやぢ | URL | 2021-09-07(Tue)17:43 [編集]


Re: 連絡船は貴重です

73おやぢ様 コメントありがとうございます。

車両甲板へのコメントは意外であり、大変詳しい内容に驚きました。

映像では運行中で、船尾の水密扉は開けた状態でロケが行われた様です。そのカットの画像を追加しておきます。

小生も客車航送に興味があり、進駐軍向け特殊列車1201レの1号車マイネ38形のみ東京~札幌を航送して直通運転した歴史に昔から憧れていました。 それだけに北斗星が上野~札幌で走った時は夢の様でした。

テツエイダ | URL | 2021-09-07(Tue)19:03 [編集]


「芦川いづみ」様の演技です!!

テツエイダ 様

 ED76であります。

 全く以て身内の話ですが、小生の両親は結婚前によくデートで映画を観たようで、「鉄」親父は本作のヒロイン「芦川いづみ」様、そして「お袋」は「石原裕次郎」氏のファンだったとのこと。ですから、二人が揃って登場する作品を狙って鑑賞していたようで、互いの妥協(!?)の産物が小生であるとの戯言を、よく言われました(笑)。

 「芦川よしみ」様にとっては、「本作が最も印象に残る作品である」とご自身で発言していることを差し引いても、赤松様が「このような配役では・・・」と仰るように、ファンには評価が分かれる作品なのでしょう。小生は、正直世代が異なりますので、細かい論評はできませんが、様々な邦画(昭和30年代)の中の「芦川」様が現在デビューされるのであれば、すぐにスクリーンの中心的な存在感のある女優として評価されるように考えます(現在では、ご主人の「藤竜也」氏と幸せなご様子です)。

 本作では、函館競輪場での予想屋の演技が最も印象的でした。ボロボロの服とおどけた口調で裸足、メイク薄めでジョー(「宍戸錠」氏)の真似して予想台にも立つ姿。さらに、男のあとを追いかけて、膝を抱えて座り込む姿。当然、かわいらしさというよりも、男に尽くしても報われない典型的な薄幸な女性を体当たりで演じている「芦川いづみ」様をどう評価するのか、という一点でしょう。しかし、ラストシーンの「芦川いづみ」様がオホーツク海に入っていく場面では、ジョーも秋本(「アイ・ジョージ」氏)も誰も救われない点に、小生何とも筆舌には尽くしがたい複雑な思いがしてなりません(後味が良いとか、悪いとかというレベルではなく)。個人的には、小生のご贔屓である「夏目雅子」様に「深沢みふね」を演じていただければ、どんな作品になったのかという勝手な妄想をしてしまいました・・・。

 さて、この作品の舞台でもある「山線鈍行レ」は、小生にとっては「小生の鉄としての方向性」を定められたと言っても過言でないものであります。
 昭和48年の春休みに、「鉄」親父と約一週間にわたって北海道を「乗り鉄」しましたが、殆どが「旧客鈍行レ」と「利尻・狩勝・ニセコといったPC急行レ」で道内を移動することに。その中で、帰京の途中で「122レ(旭川・函館)」を1日がかりで制覇した体験が、子どもながらにも鮮烈でありました。
 朝5時半過ぎにホテルを出て、早暁の「旭川駅」のフォームに止まっていた「ED76」を先頭にした旧客レ。「背吊りが木製のスハフ32の座席」に身を置くことになり、6時すぎに「旭川」を出発。甲高い独特のフォイッスルを聴きながら、「小樽」から「DD51」に機関車を交換。小生と「鉄」親父の乗る「スハフ」は最後尾になり、後ろに流れるレールの眺めにただただ感動の一言。そして、連絡船の待つ「函館」に20時過ぎに到着して、約14時間の旅は終わりました。
 白熱灯のもと、流れる雪原や日本海の眺め。列車退避や交換する駅での長時間停車の想い出。そして、様々な旅人たちとの会話の楽しさ・・・。「みふね」と「ジョー」が乗った「函館行」の姿や「宏」と小樽に向かう車内の様子に、自分自身が「乗り鉄」に開眼した時の記憶が蘇りました。多くの乗客で賑わう「函館」や鈍行レの姿と併せて、もう一度、そんな旅がしてみたいと、強く感じた次第であります。


 P.S
 「みふね」たちが追っ手を逃れて「スロハ31のデッキ」に飛び乗ろうとした「近文」駅の構内風景。現在では、堂々とした駅舎自体が撤去されてしまい、フォームも短いものが一本残るのみ。現在の姿とは想像もつかない佇まいがもう一つ小生の印象に残りました。


 失礼いたしました。

ED76 | URL | 2021-12-14(Tue)19:48 [編集]


Re: 「芦川いづみ」様の演技です!!

ED76様 コメントありがとうございます  返信が遅くなりすみません。

小生にも「山線鈍行レ」の思い出があります。 1981年6月に友人と 北海道旅行した時、二晩連続夜行の 二晩目に 41レを函館から 宿代節約を兼ねて利用し 道北を目指しました。

編成を見たら 荷物列車に 3輌程の客車が オマケに繋いである様でした。

テツエイダ | URL | 2021-12-18(Sat)22:48 [編集]