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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

338.警視庁物語 夜の野獣

1957年12月 東映 製作 公開   監督 小沢茂弘

集団スリの一人に殺害された男の 発見現場近くで見つかった 別人の遺留物から、犯人に迫る刑事の 捜査過程を描く セミドキュメント刑事映画です。

冒頭 帝都高速度交通営団地下鉄 丸ノ内線で、帰宅途中の会社員が スリの一団に財布を掏られてしまいます。
その後擦られたことに気付いた男は 相手を捜しますが、財布は仲間内でリレーされる内 蒲鉾型屋根が特徴の 後楽園駅らしきへと 東京行電車が到着します。
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ドアが開くと同時に 逃げ出した二人を 追おうとしますが、
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仲間に邪魔され 遅れて小石川駅の改札を出て 追い駆けます。
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そして暗い空き地で 二人に追い付きましたが、大きい男の方に 刺殺されてしまいます。

翌朝発見されて 捜査が始まり、所持品から身元が判明します。また現場で玩具と、女物の財布・イアリングの片方が見つかりました。
近くの店舗で聞き込みをする 刑事の横の本郷通りを、都電16系統の 3000形電車が富坂二丁目電停から 春日町へ向かって坂を下って行きます。
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更に事件現場を調べる時に、後楽園駅から 次の本郷三丁目駅へ向かう電車が映っています。 
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また後楽園駅から 茗荷谷駅へと出発する電車の背後には、後楽園球場が映っています。
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捜査開始三日目の朝 集団スリ仲間で手配していた男が、国電線路上で 死体となって発見されますが 絞殺後に遺棄されたものでした。
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前日捜査本部に「犯人を知っている」と電話してきた 横田子吉(中村是好)でした。

それから スリ担当の 警視庁捜査三課野本部長刑事(加藤嘉)が 山手線内でスリの監視をしていると、女スリ(千石規子)が掏り取った財布を 受け取った男(稲葉義男)の手を掴みます。
車内で格闘する内
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原宿駅へ到着すると、男は開いたドアから飛び出します。
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そしてホーム上で 野本が男を取り押さえ、野次馬で混み合うホームから 女と共に連行して行きました。
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その後 捜査三課の野本部長刑事と組んで 地下鉄内で張込みする 長田部長刑事(堀雄二)は、座席で眠り込んでいる男から 鞄を掏り取った一団を 検挙しようと格闘になります。
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車内が混乱する営団地下鉄丸ノ内線東京行が 次の駅に到着すると、
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逃走を図る一団を ホームや改札口で次々と逮捕しますが 先頭の二人には逃げられてしまいます。
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警視庁で逮捕した三人の 取り調べをする内、差し入れに来た男を 長田は尾行します。男は桜田門電停から 都電11系統月島行6000形6075電車に乗り込み 長田も後から乗りました。
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離れた位置から 男を監視していると 35系統6000形6100電車に乗換え、
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更に6109電車から 1000形1029電車に乗り換えて 下車する様子を 長田は見逃さず尾行します。
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男は商店街の中華そば屋の角を曲がると 突然駆け出し、閉まりかけている 踏切を強引に潜って 逃げ去ってしまいました。
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長田も懸命に追い掛けましたが 踏切に阻まれ、通過して行く常磐線の上り C57形蒸機牽引列車を虚しく見るだけでした。

近くの公衆電話から 長田は本部に連絡し、林刑事(花沢徳衛)が応援に駆け付けます。林に状況を説明していると 常磐線と立体交差する 京成電鉄の電車が、踏切上の高架線を 轟音と共に通過しています。
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本部に連行していた殺人容疑者(関山耕司)の情婦 細野雪江(小宮光江)を釈放し 泳がせると、タクシーを使って 思惑通り一味のアジトへ直行しました。
そこは正に 長田と林が捜している 差し入れ人を見失った一帯と 一致していました。皆で一味を見張っている内 殺人犯人の逮捕状が届き、逃走する男を長田達は追跡します。

男は操車場内を逃げ回りながら 警官から奪った拳銃を撃ち尽くし、更に逃走した挙句 蒸機が待機する構内に
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隣接する ドブ川で遂に逮捕されたのでした。
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PS.
  1枚目と 5・6枚目の画像で 特徴あるホーム屋根を持つのは、開業三年目の 帝都高速度交通営団地下鉄 丸ノ内線の後楽園駅です。
  3枚目の画像で 二人の犯人が出て来た駅名が 架空の(小石川駅)となっていますが、犯罪発生駅を考慮して 茗荷谷駅らしきを借りて装飾したのでしょうか。

  5・6枚目の画像で 殺人現場となった後楽園駅に隣接する 広大な空き地があるなど、本郷通り沿いにも 木造家屋が多く 戦後復興期の東京の様子が映っています。

  警視庁へ差し入れに来た男は 都電11系統から35系統へは、日比谷電停で乗り継いでいると思われます。その後も刑事の尾行を想定しているかの様に 都電を乗り継いで日暮里近くまで行きます。
 
  作中では 日比谷で11系統から 35系統に、乗換えたまでは分かります。その後を想像すると 35系統で白山通りを北上し、駕籠町にて 20系統に乗換えたと推察します。
  そして不忍通りを走り、坂を下って丁字路手前の 道灌山下電停で下車します。その後は 道灌山通りを東へ歩き、国電・東北本線の下を潜ったら 直ぐ右折します。(当時西日暮里駅は未だ無い)
  真っ直ぐ日暮里駅方向へ行き 最初の四つ角を右折しその先を 道なりに二度左折して 追手を幻惑し、中華そば屋の角を右折して 元の道に戻るや 急に走って長田を撒いた常磐線の踏切に至ります。

  応援に来た林刑事に 状況を説明している時 高架線を走る電車は、かつて護摩電にも使われた 京成電鉄の1500形にも見えます。

  ラスト 殺人犯が逃げ込んでのは、尾久操車場と 推察しています。客車・急行貨車等が多数在り 入換作業用の 8620形蒸機らしきが、最後の画像では 逮捕された犯人の背後を走っています。
  最後に 車で引き上げる場面で、登る陸橋が 田端大橋だとすると 辻褄が合いますね。
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コメント


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最期から2枚目の写真、田端機関区と思われます。矩形の機関庫とドブ川が特徴です。犯人は尾久操車場から隣の田端機関区へ逃走したのではないでしょうか。

つだ・なおき | URL | 2021-06-12(Sat)23:31 [編集]


Re: タイトルなし

つだ・なおき様

ある所に「ロケは隅田川貨物駅で行われた」とありましたが、つだ様も尾久操車場との見解ですか

最期から2枚目の写真は田端機関区とのコメント 矩形の機関庫とドブ川に着目された点はさすがですね。

当時のドブ川の汚泥臭は凄かったのに、潜んでいた犯人逮捕の為 二人の刑事が飛び込んだのには驚かされますね。

テツエイダ | URL | 2021-06-13(Sun)22:57 [編集]


警視庁物語 夜の野獣

「警視庁シリーズ」はB級映画ながら、どれもこれも味わい深いテーマとプロットに恵まれ、また、60年代の日本に舞い戻ったように、当時の庶民の暮らしや街中の生々しい息吹を伝えている
しかも、一昔前は「犯罪」と「鉄道」(当世は車CARだが)は背中合わせのように何かの関わりでつながることが多く、このシリーズに鉄道シーンがあちらこちらに見られるのは嬉しい。

全編がロケ中心の完全「ドキュメンタリー・タッチ」で当時の実社会がそのまま活写されている、と承知していたので、「小石川駅」という架空の駅が登場していたのはいささかショックであった。 せめてこのシリーズだけは「茗荷谷駅」なら「茗荷谷駅」と、あるがままの駅であって欲しかったが、当時の国鉄の(ロケ・セットへの)発言力や権限は想像以上に強かったのだろう。
11枚目と12枚目の写真の電車の「吊り輪」のぶら下がり方が変ですね。電車が揺れているわけではないのに、不思議と両方に斜め向きに垂れている(ように見える)。こんな形状の「吊り輪」があったのですか。

赤松 幸吉 | URL | 2021-06-14(Mon)19:41 [編集]


Re: 警視庁物語 夜の野獣

赤松様 コメントありがとうございます。

ロケ当時東京の地下鉄は銀座線と丸ノ内線の2線だけでした。初期に造られたこの2線は地下トンネル断面を小さくして建設費削減の為、屋根からではなく第三軌条から集電し天井も低い電車で設計されました。

そこで使わない時はバネの力で壁側に跳ね上がる(リコ式)と呼ばれた吊り輪を採用していました。
使う時だけ手元に引き寄せ、手を放せば元に戻る方式でした。

なので11・12枚目の画像の吊り輪は、車両が揺れても壁側に斜めに固定されている様に見えたのです。
しかし満員状態の時手放した吊り輪が、隣の人の頭に当たるトラブルが多発したことから廃止されました。

子供の頃背伸びしてこの吊り輪を掴むと、引き寄せるのに意外に力が必要で驚いた記憶があります。

テツエイダ | URL | 2021-06-15(Tue)18:23 [編集]


田端のドブ川

子供の頃の懐かしい風景ですね。
最後の写真は現在のマルエツ田端店の辺りです。

あのドブは田端大橋から先、田端貨物駅(日通の田端営業所、現在のJR東京支社ビル)の先まで伸びていました。夏は臭かったですよ(笑)

あと踏み切り近くの中華屋は現在マンションになっていますが、グーグルアースの古いデータに切替えると、あの建物がそのまま表示されます。
2000年代まで当時の建物が残っているのは凄いことですよね。

まーさん | URL | 2021-07-03(Sat)08:20 [編集]


Re: 田端のドブ川

まーさん 様  コメントありがとうございます。

子供の頃 ロケ現場近くにお住まいでしたか。夜間ロケで分かり難い部分もありましょうが、PS.欄の最後に田端大橋らしきが映っている画像をアップしますのでご覧ください。

京成電鉄と交差する常磐線の踏切は、「警視庁物語」シリーズで度々ロケに使われています。
本作で重要な役割を担っている中華屋が、2000年代まで残っていたとは驚きですね。

今後も気軽にコメントを寄せてください。

テツエイダ | URL | 2021-07-03(Sat)11:17 [編集]