
大学時代 恩師の娘に魅かれながらも 戦争の嵐で離れ離れになった二人が再会しますが、お互いに自身の現状から 言い出すことが出来ない 女性好みの 典型的なメロドラマ映画です。
序盤 セットらしき夜行列車の並ロ客車内で 資産家の道原敬良(山村 聰)は、財布を洗面所に置き忘れたまま 席に戻る途中 知り合いの書店主 川並陽子(浜田百合子)と通路で偶然すれ違い 挨拶します。


席に戻ると 同行の友人達から「どこへ行っても女に不自由しないな」などと 冷かされますが、

直ぐに置き忘れた財布に気付いて 男とすれ違いながら戻りますが

既に財布の中身は抜き取られていました。
友人に話すと あの男は仙台大学の教授だと教えられますが、確証もないので公安官を呼ぶのを断りました。一人で乗る男は、仙台大学教授の久松精二郎(三津田健)でした。

やがて汽車は都内を進行し、

上野駅へ ゆっくりと到着しました。

久松はホームを歩いて進みましたが

下り階段で転倒し、持参していた手紙を伝手に教え子の宮下孝(池部良)の家に運ばれます。
戦後 某家へ嫁いだ 久松の娘 香菜子(原節子)は離縁して、渋谷の叔父(龍岡晋)の家に 居候していましたが、この件で二人は再会し 互いに意識が再燃する様になります。
宮下の家で父の看病をする間、夜勤となった宮下の働く市場へ 外套と腕時計を届ける場面があります。ここで二人が歩く前を、小型蒸機が4輌程の貨車を牽いて通過して行くシーンもあります。

その後道原の口利きで 東京放送に就職した香菜子は、明るく溌剌と仕事に打ち込みます。一方北海道に出張していた宮下が、年明けに帰京する時 車中で隣席の女性にリンゴをあげるカットもあります。

1月5日に帰京した宮下は 道原の家に向かう様に 伝えられて向かうと、そこで立ち働く香菜子の姿を見て 北海道の友人の元で働く決意をします。その後道原は香菜子に、後妻に入ってほしいと願い出ます。
道原の亡妻7回忌の 手伝いを頼まれて働く日、宮下は陽子に「今夜の北斗で立つ」と告げて香菜子への手紙を託して去ります。
7回忌後の会席に到着した陽子は 香菜子に手紙を渡し、「宮下さんは今夜の北斗で立つのよ もう帰って来ないのよ!」と告げると、香菜子は慌てて和装を着替えます。
陽子から経緯を聞いた道原は 香菜子の行動を察知して 自分の車を用意させると、 玄関で香菜子を待ち受け「車を使いなさい」と便宜を図り 穏やかに見送るのでした。
急いで走る香菜子を乗せた道原の車が 上野駅へ到着すると、C57形蒸機101号機に牽かれた列車が

汽笛と共に荷物車を最後に出発して行きます。


デッキから車内へ入った香菜子は、通路を進んで宮下を捜しますがいません。

次の車輌でも 次の車輌でも見つからず その先のデッキへ行くと、漸く宮下に会うことが叶い お互い万事了解した笑顔で 見つめ合うのでした。

PS.
車内シーンは 全てセット撮影と思われますが、車内の細かい造り様から 二等車シーンは 実車を借りての撮影かもしれませんね。
6枚目の画像は 日暮里駅方向から上野へ向かう C57形蒸機47号機牽引列車で、当時水戸区所属であることから常磐線を上って来た列車と思われます。
7枚目の画像は上野駅高架 7番ホームへ到着する C5756号機牽引列車の方は、当時高崎第一区所属であることから 高崎線を上って来た列車と思われます。
続く画像で 久松精二郎が下車して ホームを歩く時 時計は9:18頃を指しています。高崎 6:20発 738レが 8:58に上野へ到着した後 エキストラと共に ロケを行ったと推理しましたが 7枚目画像とは別の所【両国駅?】でのロケの様です。
青果市場で二人が歩く前を 2120形らしき小型蒸機が通りますが、当時の青果市場と言うと 秋葉原にあった神田青果市場を思い出します。しかし隣接した 秋葉原貨物駅は高架線上にあり、当時地平線路は存在しなかった筈です。
築地市場にも 汐留貨物駅から 貨物線が延びていました。魚市場の印象が強かった築地でしたが 青果市場部門も大きく、品川区のB6が働いていた映像(ごちそう列車)からも ロケ地は築地市場の様です。
最後宮下は「今夜の北斗で立つ」と伝えますが、当時の時刻表では 203レ急行北斗は 18:35に上野を出発し 終着青森には翌 8:47の到着です。
そして 9:15発の 青函連絡船3便に乗り継ぎ 函館13:45着です。さらに 14:19発の3レ急行まりも号に乗り継げば、翌々日の朝 6:40釧路に 所要36時間5分で着きます。(友人の研究室からは、大雪山系らしき山が見えますが)
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