
街頭似顔絵 描きの ユキ(原節子)と模造宝石造り人 黒川(三船敏郎)が、都会を舞台に 夜の女と宝石を巡って巻き起こる 出来事を描いた 人情喜劇映画です。
都電の車内で小銭が無くて困っている黒川に、ユキは回数券を差し出して助けます。指輪をはめてキザな身なりの黒川に、ユキは反感を抱くのでした。
ユキと行動を共にする靴磨き三人組の正太郎(小泉博)・忠吉(増渕一夫)・大助(井上大助)は、揃って赤澤工業が入る銀座並木ビル前に通って店開きしています。
黒川は店頭ディスプレイ用の模造宝石指輪を宝山堂店主(十朱久雄)に納品し、店主は飾ってあった50万円の値札の付いた指輪と替えて金庫に仕舞います。
その後赤澤工業社長(森繁久彌)が二号の小夏(藤間紫)に取り違えた模造指輪を買い与えます。しかし赤澤夫人の鶴子(清川虹子)に発覚し、指輪は鶴子の元へ模造と思いこんだ本物は給仕のタマ子が貰います。
一方ユキと同じアパートに住む街娼のハルミ(杉葉子)は肺病が悪化し、ハルミの母親に「ハルミが職工の黒川と結婚して幸せに暮らしている」と仮想文の手紙をユキが代筆しました。
タマ子はハルミの為に指輪を売ろうとしますが、都電乗車中に窓から落としてしまいます。丁度勝鬨橋の中央を通過中で、

一同は指輪が落ちた方を窓から見ています。


次の勝鬨橋停留所で皆は正太郎を先頭に下車し、

橋の真ん中へ向かいますが赤信号で警備員に止められてしまいます。丁度船を通す為橋の中央部分が跳ね上がるので、通行止めになったのでした。

漸く通行止めが解除されると、皆で橋の中央部分を隈なく探しますが見つかりません。指輪は橋の真ん中部分に落ちたので、跳ね上がった時川の中に落ちてしまったのです。
いよいよハルミは危篤となったので母親に電報を打つと、翌夜上京して来るので上野駅へ迎えに来てほしいとの返電がありました。
前に架空の手紙を代筆したユキは、ハルミの為黒川に夫に扮して母親の出迎えに行ってほしいと頼みます。しかし前日に偽物造りの仕事とユキに軽蔑された黒川は、偽の夫役など御免だと断り泥酔してしまいます。
翌夜上野駅改札口内で、ユキ達は「ハルミさんのお母さんこゝです」と書いた看板を持って待っています。

やがて4番ホームに8620形蒸機に牽かれた列車が到着します。

その時改札口から黒川が姿を現し皆を喜ばせ、

「来るには来たがどうすれば」とユキに聞くと「ニッコリして自己紹介してね」と指南します。
そして二等車の横に立つ母親タケ(岡村文子)にユキが確認すると、

忠吉と大助が黒川が逃げない様に看板を持たせて近寄せます。黒川が挨拶すると、タケはニッコリして「まああんたがハルミの・・」と出だしは順調です。

その後黒川はハルミの夫になりきって母娘と同居し炊事・洗濯等をこなしますが、ハルミは隅田川花火の夜に皆に看取られ幸せそうに亡くなります。
タケが帰郷する日上野駅へ皆で見送りに行き、タケは嬉しそうに窓から皆に挨拶しています。

やがて列車は出発し、皆が見送る中


ゆっくりと去り行きました。

PS.
勝鬨橋を渡っていた都電11系統(新宿駅~月島八丁目)は、1947年12月に勝鬨橋西詰停留所から月島八丁目まで延長開通した区間でした。(開通後に勝鬨橋西詰→勝鬨橋)
3枚目の画像は3000形と思われますが、すぎたま様のご指摘で5000形と判明しました。1枚目と4枚目の画像は同じ6000形の6073です。何故その間に違う車輛のカットを入れたのか不思議ですね。
5枚目の画像は上野駅改札内でハルミの母親を出迎える一同ですが、地平ホームらしき頭端式9番線が映っています。不自然に改札口が近く、6枚目の画像で到着する列車は4番線です。
想像するに、5・9・12枚目の画像はセット撮影と思われます。そして8620形蒸機の18691号機牽引列車が到着する駅は、例によって両国駅4番ホームを貸し切ってのロケでしょう。
タケが帰郷する10・11枚目の画像場面も、両国駅3番ホームでのロケと思われます。最後の14枚目の画像は上野駅高架ホームを出発して行く姿と書きましたが、73おやぢ様のご指摘で(上野駅地平10番ホームから出発いて行く姿)と訂正させて頂きます。
最後に開いてから51年になる勝鬨橋ですが、「久しぶりに勝鬨橋開く」とのテレビニュースを見た記憶が小生にもありました。
勝鬨橋は本作の重要な舞台とも言えるでしょう。 ユキと黒川の出会いは、勝鬨橋手前で待たされる都電の車内。 本物の指輪を落として皆で捜すのも、勝鬨橋の中央部分。 ユキと黒川がケンカして、離れ離れになったのも勝鬨橋の上でした。
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