
国鉄の機関士杉本隆(小林桂樹)の次女則子(吉沢京子)が難病を患い、病の進行から転院先で 父親が鳴らす汽笛によって 娘を励ます親子愛を描いた映画です。
国鉄金沢鉄道管理局 全面協力の元、赤ナンバープレートに替えた C56123号機を中心に 全編に渡って鉄道シーンがあります。
冒頭 七尾線七尾駅で出発を待つ C56123号機が映り、

助役から「わかくら通票」と渡された タブレットキャリアを復唱して受け取った 機関助手の丸山源太郎(藤岡琢也)は、

「わかくらマル」と言って杉本へ渡します。
杉本は行路表を確認して「わかくらマル」と復唱すると、

腕木式信号機が青に変わり 汽笛を鳴らして発車します。

走行中丸山が「帰りにつきあってくれ」と願い、杉本は承諾すると「場内進行」と発声します。
続いて カーブしているホームへ進行してきた機関車の キャブから丸山助手が、通票の入ったタブレットキャリアを 受器に投げ入れ C56123号機に牽かれた客列車はこの駅を通過して行きます。

妻が病死していた杉本は再婚し 中学生の次女則子との関係も良好でしたが、則子は難病のハンチントン病となり 治療と学習を兼ねた(こまどり学園)へ入ることになります。
冬場 C11形蒸機らしき牽引の客レが 雪原を走り抜ける姿が映り、

キャブでは丸山が「俺ん所へ預けてくれりぁ女房が付きっきりで面倒みるのに」などと 前に養女にとの願いを断られた件を 蒸し返しています。
やがて桜咲く中を走る D51形蒸機・

菜の花沿いを走るバック運転の蒸機が映り、秋日和の中を走る D51形蒸機の客レ・再び雪原を行く 蒸機客レと続く頃には、一向に回復しない病状に 面会にきた継母に当たる則子でした。
次の春先 七尾機関区の転車台を旋回する C56形蒸機が映り、背後には DE10形内燃機や キハ20系気動車らしきが休んでいます。

傍らで杉本は 一本松区長(十朱久雄)から 蒸機廃止が迫っているが 定年まで間の有る君は、管理職登用試験か 名古屋鉄道学園で 気動車転換教育を受ける様 勧められるのでした。
その後 こまどり学園へ慰問に来た 絵画グループの吉川道夫(佐々木勝彦)から、則子は高岡のデパートで開いた展覧会に招待されます。
北陸本線高岡駅舎の正面右手に 加越能鉄道高岡軌道線 新高岡駅と路面電車が映り、その前を乗用車に続いて 吉川の働く丸高ベーカリーのトラックが走って行きます。

しかしその吉川も 東京へ修行に行くことになり、更に則子の病は重くなり 転院が決まりました。遠い療養所故に頻繁には見舞いに行けないので、杉本は久しぶりに帰宅した則子を背負い機関庫へ行きます。
中学の制服を上だけ着た則子と 機関車の思い出を語り合いながら、

庫内で休む C56123号機の横を ゆっくり進んで行く間 則子はずっと機関車をじっくりと見ています。

次に 山間の橋梁上を走る C56牽引貨物列車が映り、

運転室内では 助手の前川武(小松英三郎)が「お嬢さん越山療養所へ移ったそうですね 次のトンネルを抜けた辺りですよ」と杉本に告げます。 トンネルを抜けて来たC56123号機が映り、

続いて 療養所の窓からは右へカーブしながら去り行く列車の姿が見えています。

次に見舞いに行った折 杉本は次第に悪化してゆく則子に「来月から乗務することになった列車が 木曜日の午前5:50帰りは夕方16:20に下を通る時 、ポーポッポーと3回汽笛を鳴らすから」と約束して励ますのでした。
その客車列車に 前川と組んで乗務する日、トンネルを抜けると汽笛を3度鳴らしました。則子は病室の目覚まし時計で起きて 汽笛を聞き、時計の音で駆け付けた看護婦さんと 共に微笑むのでした。
それから 則子の病状に悩む杉本は イライラして後妻の初江(司葉子)にアタリ、更に寝そびれて 行った飲み屋では 丸山と大ケンカする始末でした。
翌日 いつもの様に前川と組んで 海沿いの区間から

左カーブを走ると、前方の踏切に停まったままの ダンプカーを発見して

汽笛を連呼しながら非常ブレーキを掛けますが 衝突してしまいます。

重症の杉本は 軽傷の前川に「車掌に駅と機関区に連絡を頼んでくれ」と告げ、車外へ降りた前川は 前方の惨状に驚きながらも

後方の車掌へ連絡に走ります。
翌朝 包帯に病衣のまま 前川は機関区へ行き、乗務する丸山に 杉本の代わりに 汽笛を鳴らしてくれと願い出ます。

病室でいつもの様に 汽笛の音を聞いた則子は安心しますが、その後に突然絶命してしまいます。
その後 復帰した杉本は、また丸山と組んで 蒸機を運転して 例のトンネルを抜けます。すると丸山は汽笛を3度鳴らします。
杉本は驚いて 丸山の顔を見ると 事情を察し「そうだったのか ありがとう」と告げ、事故後も丸山が 杉本に代わって汽笛を鳴らし 則子を励まし続けてくれていたことを知るのでした。
続くラストシーンは 則子が朗読する詩が流れる中、ロケの中心となった C56123号機が牽引する客レが 青空の元走り抜ける姿が映って エンドマークとなります。

PS.
1970年7月に 21才で亡くなった 松本則子さんの詩集を原作とした作品で、笠原良三が担当した脚本では 高岡機関区が舞台となっていました。国鉄のロケ協力の都合等で、撮影は七尾区と七尾線で行われた様です。
全編で駅名板等が映らない様に ロケが行われているので、冒頭の「わかくら」は架空であり 3枚目画像の行路表では 七尾⇒穴水の仕業となっています。
丸山がタブレットキャリアを投げ入れて 通過する駅は能登鹿島駅です。(のと鉄道の駅として現存 愛称:能登さくら駅)
七尾線では 1971年4月に旅客列車は全てDC化されたので、ロケ用に荷物車を加えた列車を仕立てて 臨時列車を走らせた様です。ふるさと列車おくのと号に 使う予定だったのか、前年にC56123号機とC56124号機は赤ナンバーに交換しています。
加越能鉄道 高岡軌道線・新湊港線は2002年2月に万葉線(株)へ譲渡され、高岡駅停留所~越ノ潟駅の軌道路線・鉄道路線 全線を万葉線として現存しています。
11枚目の画像は廃線となってしまった穴水~能登三井の山岳区間の撮影と思われますが、続く療養所近くのトンネルは山間部ではなく能登鹿島~穴水に現存するトンネルの様です。
衝突事故場面の ロケに使われた C56123号機ですが、その後 1973年1月本当に 和倉駅付近で事故に遭い そのまま休車⇒廃車となってしまいました。
また原作者の父親である 松本氏も本作の企画が進んでいた 1971年1月、城端線のDCに乗務中 ダンプカーと衝突事故に遭い 重症を負ってしまいます(同じ1971年1月に娘の詩集が、立風書房から出版されています)
七尾線の蒸機は 1974年4月に消えて、替わった内燃機による貨物列車も 1984年2月に廃止されました。1987年のJR化後の 1991年9月には和倉温泉~輪島が のと鉄道に経営移管されましたが、2001年4月 穴水~輪島の区間が廃止されています。
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