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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

333.六人姉妹

1959年10月 東映教育映画部 製作   監督 堀内甲

父母と六人姉妹が暮らす 地方都市家庭の日常と、長女が希望する進学に反対する父親との 葛藤を描いた教育映画です。

葛西家では 父母と高校三年生の長女節子(大森暁子)を頭に 六人姉妹が暮らしていて、絶えない姉妹喧嘩の合間に 各々将来の希望が芽生えていました。
節子は父順二(稲葉義男)に 大学進学を願い出ますが、下の子のことも考えて 却下されてしまいます。しかし叔母の説得もあって、考え直した父に節子は激励されるのでした。

晴れて東京の 女子大に合格した節子が旅立つ日、先ず C50形らしき蒸機が映り、
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車窓の節子の元には 5人の妹を始め、父順二・母安子(不忍郷子)・叔母(内田礼子)が駆け付けました。
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三女紀子(本間千代子)が「夏休みには待っているわね」等 皆で見送りの言葉を交わす中、
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汽笛が鳴り響き
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列車が動き出すと
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5人の妹達は 姉の動きに合わせて移動して行きます。
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節子は窓から身を乗り出して 手を振り 別れを惜しみ 叫んでいる様です。
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四女睦子(伊東正江)は 泣いている五女敦子(小畑町子)を優しく抱きかかえています。
そして五人の姉妹は 仲良く手を繋いで 父母の方へ歩いて行く道中、次女知子(島津千鶴子)は「今度から私がお姉さんだから言うことを聞くのよ」と宣言しています。
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最後は 跨線橋からのカメラを引いて、栃木駅東方 構内全景を映しながら エンドマークとなります。
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PS.
 当ブログでは 異色の教育映画で、読売新聞つづり方コンクールで 文部大臣賞を受賞した葛西睦子の作品を原作として、東映教育映画部が製作した作品です。

 鉄道シーンは ラストの節子が旅立つ別れの場面 しかありませんが、今では見ることの出来ない 今時分の別離シーン として取り上げました。

(111.異母兄弟)でも登場した駅ですし、5人で引き上げる場面で 駅名板が映るので、今回は直ぐ栃木駅と分かりました。

 登場した蒸機は 小山区のC50形と思われ、乗降客の少ない昼時を狙ってのロケと思われ
 高崎9:45始発の 425レを使ったとすると、栃木 12:04発で終着の小山は 12:17です。
 節子がこの列車を使うと小山 12:26発の 534レに乗り換え、上野には 13:48着なので 下宿先へ向かうのにも適当でしょう。

10枚目の画像で、5人の姉妹が引き上げている時、背後には到着する東武鉄道の1700系2連の白帯特急が映っています。

 両毛線では1951年に 桐生~高崎方面からDC化が進み、1963年には蒸機牽引列車は3本となり 1968年10月に全線電化となりました。
 DC導入の1951年より 請願新駅が 11駅も誕生した両毛線ですが、電化時までに途中 28駅中11駅が休止となり後廃止(ロケ時も11駅全て停車するのは 13本中4本のみ)
両毛線は他線に比べて 同時期に異様な程新駅が作られた 稀有な路線ですが、政治陳情駅が多かったのか 停まる列車も少なく 国鉄のやる気の程が知れてて 当然利用客が少なく12~15年で休廃止でした。


本作製作の3年後に続編が製作されました。続編の方が鉄道シーンが多いので、夏休み時期に取り上げる予定です。

 
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コメント


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六人姉妹

娯楽映画の王者・東映はチャンバラ映画ばかり量産していたかと思われがちだが、一方では良心的な教育映画も制作していた。
むしろ、東映は教育映画界を綿々と牽引してきた王者でもあった。

教育映画は商業映画館では一般公開されず、学校やホールの特別上映が普通であったので、目に触れる機会が極めて少なかった。

教育映画の難点は出演俳優がほとんど無名で、この映画でも本間千代子と稲葉義男ぐらいしか知らない。

ホームでの別れのシーンは奇をてらうことなく、オーソドックスな演出とカメラで、それがかえって涙を誘う。
窓越しの別れ、動輪や主連棒の回転、(機関車の)煙突や石炭庫のクローズアップ、動き出す客車、ホームを走る妹たち、窓から手を振る姉・・・

栃木は関東地方に属しながら、東北地方のイメージが強い地方都市と聞く。
関西地方でいえば、和歌山と同じような位置づけのようだ。


これはyoutubeで無料で鑑賞できます。
たまには、コマーシャリズムとは一線を画した、心が洗われる清冽なオアシスのような映画を見るのもいいことだ。

赤松 幸吉 | URL | 2021-04-04(Sun)18:05 [編集]


Re: 六人姉妹

赤松様 コメントありがとうございます。

低予算の教育映画はセット撮影や有名俳優を使えないので、葛西家も原作者の実家を使ったのでは?と思います。

本作のハイライトである節子旅立ちの見送りシーンは国鉄協力の元、赤松様の「奇をてらうことなく、オーソドックスな演出とカメラで、それがかえって涙を誘う」のコメントが良く表しています。

栃木の町は戦災に大きく遭うこともなかったので、作中には戦前からの街並みも映り地方都市の良い雰囲気が出ていますね。

テツエイダ | URL | 2021-04-04(Sun)20:37 [編集]


C50がC58に変わってるのはご愛敬ですね。
小山機関区のお召し予備機C58400号機みたいです。

つだ・なおき | URL | 2021-04-08(Thu)20:43 [編集]


Re: タイトルなし

つだ・なおき様 コメントありがとうございます。

なるほど6枚目の画像で、C58形蒸機に変わっていますね さすがの眼力です!

テツエイダ | URL | 2021-04-08(Thu)22:29 [編集]