
秋田から加治木家へ女中として入る為 上京した織元初(左幸子)が、悪戯っ子で家族から浮いている 勝美(伊庭輝夫)に寄り添い 慕われる過程を描いたファミリー映画です。
冒頭 単身上京した初が、上野駅中央改札口前の 広場を歩くところで タイトルが入ります。

この場所は 上野駅の象徴的な所なので、しばしば映画の ロケ地となっています。
続いて 1番線ホームへ上がった初は、山手線・京浜線の共用ホームへ 丁度 到着した山手線へ乗ります。

車窓の丸の内・飯田橋付近・更に横須賀線用 70系電車が憩う 田町電車区等がタイトルクレジットのバックに映ります。
中盤 同級生の家で 模型機関車を見せびらかされて 欲しがる勝美に、初は「本物が見えます」と木に登らせて 遠く過ぎ去る汽車を共に見るのでした。

また学校帰りに 標識だけの 第四種踏切を渡るシーンでは、西武鉄道の 311系らしき2連が通過直後に走って家に急いで帰ります。

初が初めての旧正月に 帰省する場面では、勝美は 友達の良一(渋沢準)と近くの高台から 初が乗る列車を見送ります。汽笛が聞こえ 駅の方を見ると、C57形蒸機に牽かれた列車が近付いて来ました。

二人が「ハッチャ~ン」と叫びながら手を振ると、

3輌目中央で 窓を開けてハンカチを盛んに振る初がいました。

その後 勝美が飼っていた犬を 捨てられたことから 学校へ登校せずに家出した勝美は、帰省した初を追って 秋田へ向かったのでした。しかし車内で眠り込んでしまい 車掌さん(高品格)に起こされた時には、下車駅の形ノ館(架空駅)から3つ先の羽後院内でした。


急いでランドセルを背負わせてもらい降りると、C51形蒸機 185号機牽引列車は出発して行きます。

勝美と共に出発確認を行った川村助役(阪井一郎)は、勝美を駅長室へ案内します。

勝美がウドンを食べさせてもらっていると、助役さんは 通票閉塞器を操作して 隣の駅に「412列車10分遅れ」と連絡しました。

「今夜はもう戻る列車が無いので、明日一番の列車に乗せてあげるから心配いらない」と話してくれます。
そこへ入って来た山田としお(光沢でん助)に「織元初はお前と同郷でないか」と助役さんが聞くと、「初の実家は形ノ館よりもこの駅からバスで行った方が良い」と行き順を教えてくれました。
翌朝 形ノ館駅に C5140号機牽引列車が到着し、

初は幼馴染(大倉節美)に見送られて帰路につきます。

ところが車掌をしている同郷の山田から「今朝 勝美一人で、羽後院内からバスで初の実家へ向かった」と聞きます。

バス停から実家まで 深い雪道を4㎞も歩くので 心配になった初は、駅まで馬ソリに乗せてもらった八小父(天草四郎)に 走行中のデッキから「待って~」と声を掛けると 汽車から飛び降りて 勝美の後を追ったのでした。

遭難しかけた勝美は 雑貨屋の親父に助けられ 一晩 初の実家で過ごし、更に夜には 秋田の伝統行事を体験します。翌日 初と一緒に帰ろうとすると、心配した父の加治木恭平(佐野周二)と母 梅子(轟夕起子)が迎えに来てくれました。
こうして一件落着となり、行方不明の犬も見つかって 万事良しの結末と思いきや・・・ ラストは暇を出された初が 乗っているらしい汽車が、故郷へ向かって去り行くシーンで エンドマークとなります。

PS.
ロケ時は未だ 山手線と京浜線が分離運転されていなかったので、二枚目の画像でホームの柱には 大宮・池袋・新宿・渋谷方面と書いてあります。
加治木家は世田谷区南部の 尾山台辺りを想定している様なので、三枚目の画像の前に 多摩川を渡る東横線らしきが映ります。しかし三枚目の画像は画質が変わり、明らかに地方路線の映像を繋げています。
六枚目の画像で 勝美と良一の二人がいるのは 国立科学博物館裏の線路端と思われ、絶好の位置から上野駅高架ホームを発車する列車を見事に捉えています。
帰省した初を追って 勝美は朝 登校するふりをして家出して、秋田の形ノ館(架空駅)を目指します。その行程を想像すると、上野 9:00 ―(101レ急行青葉)― 14:01 福島で4輌分離 14:17 ―(427レ・新庄から普通列車)― 19:12 院内 (仮に上野をもっと早朝の列車に乗っても、接続列車は無く 到着時刻は同じです)
院内駅は実在しますが 1904年の開業以来 院内だけで、頭に 羽後は付きませんので 架空駅とも言えます。なお 勝美が寝込んでしまい 車掌に起こされるシーンや、後の初が車内で山田車掌と 会うシーン等の車内シーンは 全てセット撮影です。
川村助役が「今夜はもう戻る列車が無い」と言ったのは、奥羽本線 院内からの上り列車は 18:34発 414レ上野行が普通列車の最終で 20:18発 402レ急行鳥海上野行では 3駅戻る釜淵駅には停まりません。
翌朝 初が形ノ館駅から乗車しますが、この駅は釜淵ではなく 難読駅名として有名な 及位(のぞき)駅の昔の様子に似ています。院内の隣駅である 及位だとしても 前日に戻れないことは同じです。
初が加治木家へ戻ろうと乗ったのは、及位 7:03発 438レ普通列車福島行と思われます。この列車は 12:29福島着で、12:49発の 128レ上野行普通列車に乗り継げば 19:56に上野到着です。
初は 勝美が密かに犬を飼っていたのを取り持ったり 何かと家族から浮いた存在だった 勝美を諭して 家族がまとまる手助けをしていただけに、切なさと やるせなさを感じさせる ラストの納まり方が 悲し気な蒸機の汽笛の音と共に より印象深い作品となっています。
- 関連記事
-
- 328.猛吹雪の死闘
- 306. 女中ッ子
- 296.喜劇 逆転旅行


