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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

299. 細雪

1959年1月 大映 製作 公開  カラー作品   監督 島耕二

大阪の旧家で育った四姉妹の内 未婚の三女雪子(山本富士子)と四女妙子(叶順子)の、青春期人生を中心に描いたホームドラマです。

冒頭 京阪神急行電鉄 神戸本線 芦屋川駅へ、920系の 975を先頭の4連が到着します。
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1957年完成した高架化工事に伴い改築した新しい駅舎から、
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雪子が降りてきて次女幸子(京マチ子)が住む分家へ向かいます。

幸子は音楽会へ向かう為、妙子に着物の着付を手伝ってもらっていました。大まかに出来上がった折に出掛けた妙子は 外に待たせた啓ボン(川崎敬三)の車に乗って、単線を走る京阪神急行電鉄の300形 2連電車とすれ違います。
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中盤 大水害の折に写真家の板倉(根上淳)に助けられた妙子は、彼と付き合い出しますが啓ボンとも手を切れません。とある第四種踏切で板倉を待ち伏せしている啓ボンの前を京阪神急行電鉄の電車らしきが通過して行きました。
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終盤 奥畑家から勘当された啓ボンは、幸子の婿 貞之助(山茶花究)の計理士事務所に現れます。窓から大阪市電が走る様子が見えています。
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そして妙子に貢いだ金銭を、少しは都合付けてほしいと集るのでした。

その後 板倉が急死して荒れた生活を送る妙子は、バーテンの三好(北原義郎)と結婚すると雪子に告げます。散々妙子に迷惑を被った雪子ですが、全てを許し全員が賛同する様に姉たちとの仲を取り持ってあげます。

分家で雪子が二人の姉を説得していると、長女鶴子(轟夕起子)を嫌う妙子は三好が待つ芦屋川駅へ行ってしまいます。
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三好と妙子が改札口から入場する頃、雪子は慌てて駅へ向かいます。
到着した電車に二人が乗ろうとする頃
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雪子はホームへの階段を上がり、ホームで二人を見つけて閉じられたドアへ近寄ると「東京の姉ちゃんも賛成してくれてる 部屋が決まったら直ぐ戻ってくるんやで わかった?」
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車内の二人は笑顔で、妙子は雪子に「わかった」とドア越しに伝えました。妙子に思いを伝えきった雪子は、笑顔で去り行く電車を見送るのでした。
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PS.
 
 妙子が人形教室に待たせている生徒の処へ行くと嘘をついて乗り込んだ啓ボンのオープンカーが、すれ違った阪急の300形が走るロケ地が不明でした。単線なので嵐山線か甲陽線でしょうか。

 細雪に関するブログを書かれていた keyboar様のブログに依ると、甲陽線 苦楽園口駅から甲陽園に向けて出発した電車が夙川を渡り 踏切を越えた辺りだそうです。

 現在の地図では夙川を渡って最初の踏切で交差するのは夙川さくら道ですが、作中で交差するのは現在の県道82号線で 当時はここがT字路交差点だったと思われ 啓ボンの車はここで左折している様です。

 啓ボンが板倉を待ち伏せしていた踏切は、啓ボン背後に立つ信号柱の位置と 続いて夙川公園のシーンがあることから夙川駅を出発した甲陽園行の二つ目の踏切と思われます。

 啓ボンの背後に立つ信号柱は夙川駅へ向かう電車にとって最後の信号の様で、現在でも同じ位置にあります。
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そして甲陽園行は、この踏切から下り勾配なのも同じです。

 電車の走行音は現物ですが、出発時の警笛は後付けの気がします。(作中では警笛から電車登場まで12秒程ですが、現状では25秒程掛かっています)



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コメント


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細雪

「細雪」は、「新東宝 1950年 阿部豊」、「大映 1959年 島耕二」、「東宝 1983年 市川崑」と これまで3度映画化されている。

「市川版細雪」は雲の上のカリスマ的神品、完成度で他の二作とでは余りにも差がありすぎるが、この大映黄金期の島耕二版もなかなかのものである。

但し、轟夕起子の鶴子は差し換えて、四姉妹を大映専属女優で固めて欲しかった。

鶴子(京マチ子)幸子(山本富士子)雪子(若尾文子)妙子(叶順子)、この配役の方が豪華絢爛たる谷崎文学をずっと完璧に再現できたのに。

阪急甲陽線【夙川 - 苦楽園 - 甲陽園】は恐るべき特異路線と言える。
単線2.2km、乗車時間5分、途中駅は1つだけ、そこを毎日メトロノームのようにピストン運動を繰り返す。

地下鉄丸ノ内線の方南町支線もこれほど短くはないだろう。

阪急神戸線に何回か乗ったことがあるが、甲陽線なんて路線があるのも知らなかった。

苦楽園と甲陽園まわりの住民(夙川の住民は甲陽園方面によほどの用事がない限り利用しないであろう)、それに沿線に散在する学校への通学者以外は、乗客も極めて限られてくるのではないだろうか。

芦屋川駅での見送り場面の写真(8枚目と9枚目)は同じ電車のように見えるが、別個に撮影したのではないか(その他の場面も何回かに分けて撮影されているのでは?)。

理由は8枚目の車両の窓が1枚(真ん中当たり)開いているが、一瞬にして(次のシーン9枚目では)何故か閉じられているからだ(一体誰が?)。

側面の赤いランプ(側灯)はドアが閉められると同時に消灯するので問題ないが。
9枚目には不思議な光景が目につく。

先頭の乗務員がドアより身を乗り出して、山本富士子を注視しているのだ。
運転室なので車掌ではなく運転士のはず。
果たして動き出した電車の運転士がこのようなことをするだろうか。

多分、撮影用に警戒態勢を取って、運転士以外にもう一人乗務員を配置、万一、山本富士子がドアに引っかかたり、転んだりしたら、急停車を知らせる見張り役ではなかっただろうか。

赤松 幸吉 | URL | 2019-12-07(Sat)09:13 [編集]


Re: 細雪

赤松様 早速のコメントありがとうございます。

鶴子(京マチ子)幸子(山本富士子)雪子(若尾文子)妙子(叶順子)の四姉妹案には、小生も賛同いたします より原作にふさわしいことでしょう。

芦屋川駅での見送り場面はご指摘の通り 何本かの電車で撮影したものの編集なので、寒い時期なのに窓を開けた車輛が混じっていたのですね。 

先頭の乗務員がドアより身を乗り出して山本富士子を注視している点も、ご想像通りの事情でしょう。
通常 線路端やホームでロケする時は運転士や車掌に伝えて、更に安全確認役を同乗させる場合があります。
 時には映画に映ると聞いた運転士が緊張し、停止位置より手前で止めてしまう等のハプニングが起こったこともあったとか。

 さて次回は3百回記念作なので、いつもに増して気合を入れてます ご期待下さいませ。

テツエイダ | URL | 2019-12-07(Sat)11:17 [編集]


芦屋川駅

谷崎の作品には心理描写も含めて当時の関西の鉄道の様子があって読み甲斐がありました。芦屋川駅は、レフトアローンという中華&ジャズのライブハウス(2020年1月で閉店)に行く時に下車したことがありました。ちょっとモダンだったのは戦後に高架化されたからなのですね。映画の中で1010系が写り込んでもしっくりいくのはマルーンカラーのなせる技でしょうか。

京葉帝都 | URL | 2019-12-14(Sat)15:42 [編集]


Re: 芦屋川駅

京葉帝都 様  コメントありがとうございます。 返信が遅くなりすみません。

ラスト 芦屋川駅から妙子(叶順子)と三好(北原義郎)が乗った車輛が、1010系ということでしょうか。
車輌に詳しくない小生には推定もできないので、形式についてはスルーしていました。

これからもコメントを寄せてくださいませ。

テツエイダ | URL | 2019-12-18(Wed)18:22 [編集]