
沢田撫松の原作を三度目に映画化した作品で、上り特急つばめ号に乗り合わせた女スリ 塩沢さや(京マチ子)と大阪の刑事 北八平太(ハナ肇)の掛け合いをコメディタッチに描いた映画です。
冒頭から前半は大半がセット撮影+若干の実車ロケを組み合わせて、東海道本線を走る上り特急つばめ号の車内鉄道シーンが延々と続きます。
最初は拳銃取引やポーカー賭博を鉄道公安官も一緒になって開いている車内が映り、

運転席へいくとギャングが運転士に拳銃を向けて脅かしています。

これらは野呂走(大辻伺郎)が読んでいる五無康祐(船越英二)作の「犯罪日本」という小説の空想です。
野呂の隣の席に座った学生(ジェリー藤尾)から「食べ物はビュッフェに行けばある」と聞いて行くと、

小説家 五無康祐が記者 花輪次郎(田宮二郎)とビールを飲んでいました。

一方 一等車では、会社役員(多々良純)が並んで座る さやのことが気になっています。

ビュッフェから戻って来た五無も、さやの美貌に一目惚れの様子で花輪が連れて行きます。

その後 トンネルに入るタイミングで野呂が照明を切り、名古屋に到着する時

乗客(植木等)が列車ボーイ(谷啓)に照明不良の苦情を言いに来ます。

そこへスリにやられた乗客が駆け込み 通り掛かった北が女スリの特徴を聞いて、さやの仕業だと直感して車内を捜しだします。これはと女性に声を掛けると、全くの別人でした。

デッキで さやは大きな荷物を背負った老婆(浦辺粂子)に声を掛け、持っていた一等の切符と老婆の二等切符をすり替えて北に案内を依頼します。

老婆の持っていた切符は、野呂の隣で学生が座っている席でした。暫くすると北がやってきて、どうせ休暇中だからこの先も付きまとうと言い出す始末です。

そこで さやは列車が熱海に到着した時

わざと十円玉を転がし、

北が捜している隙に12号車から降りてしまいます。慌てて後を追うと、前方へ歩いて行く姿が見えました。


急いで追い駆けると 駅員(犬塚弘)に「危ないですよ」と止められ、さやは前方の6号車に発車寸前に飛び乗ります。
駅員に取り押さえられた北は、去り行く特急つばめ号を悔しそうに見送るだけです。おまけに切符と財布も、さやに掏られてしまっていたのでした。

そうして特急つばめ号は終着 東京駅に到着します。

さやは6号車から野呂と降りると、ホームには姉貴分の筑前春子(杉村春子)が出迎えてくれていました。

終盤 さやは北と一緒になりたい一心で、缶ジュースを万引きして捕まえてもらいます。大阪へ帰る普通列車に並んで座ると

野呂が現れ、さやの足を蹴って行きます。
痛さに怒ったさやはデッキまで追いかけて、

「邪魔しないでよ」と言って戻ります。北が読んでいた新聞には、女スリを題材にした五無康祐の新連載小説が載っていたのでした。
PS.
本作では東海道本線上り特急つばめ号を舞台に製作されている様に思われますが、時刻表から大阪9:00発 東京15:30着の104レ特急第一つばめ号を想定している様です。
本作公開の少し前の 1960年6月より特急つばめ号は、1号車がパーラーカー・2~5号車がロ座・6号車は食堂車・7号車は半車ビュッフェ・半車ハ座・8~12号車がハ座でした。
本作構想段階では 1960年5月末までの特急こだま号の編成を想定してセットを組んだ思われ、3号車と10号車が半車ビュッフェで4~7号車がロ座でそれ以外はハ座でした。
さやは熱海駅に停車したタイミングで北を翻弄して、ホームに置き去りにしました。ところが実際の時刻表では、特急第一つばめ号は熱海駅は通過です。こだま号なら第一第二 共に熱海に停車するのですが・・・
しかし熱海駅で実際ロケを行ったのは、北が駅員に取り押さえられ去り行く特急つばめ号を悔しそうに見送る場面だけでした。
逃げたさやを北がホームで追い駆けるシーンは、回送列車を使って品川駅で撮影された様です。(窓ガラスに駅名板が映ってます) 更に東京駅で筑前春子がさやを出迎えるシーンも品川駅です。
また舞台が上り特急つばめ号なので、12号車は先頭車輌のはずです。前方へ逃げたさやが6号車に飛び乗るのは逆なのですが、座席の向きを考えると仕方なく撮影したのでしょうか?
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