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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

296.喜劇 逆転旅行

1969年8月 松竹 製作 公開  カラー作品   監督 瀬川昌治

国鉄の専務車掌 長谷川吾一(フランキー堺)が乗務する急行列車で遭遇するトラブルや、三角関係のロマンスを描いた 歌謡コメディ映画です。

冒頭 早朝の米沢駅をEF71形電機に牽かれて出発した列車内で
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長谷川がB寝台車の乗客に挨拶していると、
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女性からガーターベルトの修理を 腕章の安全ピンで頼まれます。
3段式寝台の下段に座った女性の横で修理を始めると、上段の男が覗いてきました。
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男が女性の連れ合いなので断り通路を進むと、寝台解体中の乗務掛木下信作(森田健作)がいます。
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続いて 開店準備中の食堂車へ進む長谷川ですが、
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あれこれ指図するので

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ウエイトレス嬢やチーフの矢代大吉(伴淳三郎)と揉めてしまうのでした。
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列車は山形・秋田都停車して、DD51形内燃機で弘前へと到着します。
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ここで乗務終了となった様で、ラッセル車が並ぶ構内を抜けて車掌区へと帰り タイトルクレジットとなります。
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序盤 朝日をバックに DD51形内燃機に牽かれた 10系客車列車が橋梁を渡り、
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食堂車内では現在地表示板が映り
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矢代の娘綾子(早瀬久美)が今日からここで働くのでと張り切っています。
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そして上野駅 14番線らしきに電機に牽かれて到着します。
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続いて出発列車案内板がずらりと並ぶ 6:32頃の中央改札口が映ります。
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戻りの夜行列車内でしょうか、食堂車では怪しい言葉を話す三井高治(藤村有弘)やハエが気になる夫婦(京唄子・鳳啓介)が絡んだドタバタ劇が入ります。
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中盤 食堂車では県議の荒尾徳三郎(由利徹)が注文した品を忘れるトラブルが起こり、更に幼なじみの芸者さくら(倍賞千恵子)から求婚もされて先行きを悩む長谷川です。
そのさくらから団体旅行への参加を誘われますが 長谷川は法事があるからと断り、惚れ込んだ原かおり(佐藤友美)を秋田の竿灯祭り見物に誘うのでした。

当日 弘前駅ホームの売店で買い物をしていると、秋田行お座敷列車による団体旅行の一員として さくらも乗り込みます。車内では発車直後から、酒も入って賑やかな様子です。
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隣の普通車の席では、かおりと並んで笑顔の長谷川です。
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お座敷列車内では、都はるみの歌もあって更に盛り上がっています。列車は矢立峠越えがあるので、D51形蒸機が重連で牽いているのでしょう。
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そして何故か最後にC11形蒸機が 10輛程の客車を牽いている走行シーンが入って、秋田駅に到着し 観光地巡りが始まるのでした。
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その後 かおりにプロポーズする長谷川ですが、国鉄を辞めて婿入りするのが条件だと言われてしまいます。28622が入換作業を行う構内を、どう返事するか悩みながら歩く場面へと続きます。
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結局 体よく振られた長谷川ですが、強引なさくらに押し切られ 結婚することになりました。 DD51形内燃機が牽く急行列車が映り、296-23.jpg
長谷川が勤務する車掌室に乗客掛・食堂車の面々がお祝いに駆け付けます。
既に解体されたB寝台車の通路で掃除中の木下に「お前か 皆に言いふらかしたのは」と聞くと、
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さくらが勤務姿が見たいと乗客として乗っていて 長谷川に絡むのでした。
さくらに付けられたキスマークに気付かずに 女性グループに笑われながら、内燃機に牽引された列車の 後部が去り行くシーンでエンドマークとなります。
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PS.
 冒頭の長谷川が乗務する列車は 早朝 米沢を出て山形・秋田を通り弘前へ着くので、上野 22:22発405レ急行津軽2号 奥羽本線廻り青森行が思い浮かびます。当時は山形まで前年に電化され、奥羽本線全線電化される 1975年まで DD51形内燃機が活躍していました。
 しかし当時この列車を含む 上野発の奥羽本線夜行列車にはには、板谷峠越えの関係か 食堂車は連結されていませんので架空列車です。本作では寝台車と共に食堂車での出来事が重要な要素なので、この様な設定となったのでしょう。

 上野発の奥羽線廻り青森行夜行列車に 戦前は和食堂車が連結されていましたが戦中に外され、戦後寝台車が復活しても そのまま食堂車は復活せず 本作公開時には1本もありませんでした。
 秋田~青森で当時食堂車を連結していたのは 昼行の特急白鳥と夜行の特急日本海・急行きたぐに号で、いずれも大阪~青森を結ぶ 日本海裏縦貫列車3本だけでした。
 1970年7月20系の特急あけぼの号が新設されて 漸く食堂車が付きましたが、5年と続きませんでした 営業的には厳しい状況だったのでしょうか。

 寝台車での撮影はセット撮影に見えないので、津軽2号の秋田で切り離す予定の寝台車を 1輌残してもらいロケを行ったのかもしれません。食堂車内の映像は、セット撮影の様です。
 機関区構内でのロケは、弘前機関区で行われた様です。またお座敷列車が登場しますが 当時盛岡局に2輌しか存在せず 、秋田局で借りた車輌を使用後に 客車区で清掃前に借りて撮影したと思われます。
 C11形蒸機が 10輛程の客車を牽いている走行シーンは、男鹿線で毎朝走っていた 通勤通学用の列車と思われます。比較的平坦線なので、小型蒸機のC11形でもなんとか牽いていた様です。 


※ 300回記念号を前に、296~299回をカラー作品特集とします。 300回記念号は あの有名作をとりあげ、その後に1970年代以後の少し昔の作品特集を行います。

 50回記念号(若い瞳)等で登場した八千草薫さんが亡くなりました ご冥福をお祈り申し上げます。

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コメント


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撮影には苦労した様子が

テツエイダさまこんにちは。

この作品は、かなり苦労して撮影した様子が見て取れますね(他も同様でしょうが)。
寝台車は通路上に鏡があったりすること、窓が下降している様子からして、10系寝台車で間違い無いと思われます。走行中のシーンは、臨時貸し切り増結か、回送を利用するなどして撮影でしょうか。
DD51に引かれた橋梁上を行く列車は、手前からスハニ37、スロ62、オロネ10、スハネ16…と思いますが、確認は困難かも…。

食堂車のシーンは、やや内傾した壁と、後ろの厨房と食堂の境形状などから、キシ80形では無いでしょうか。もちろん客車列車に混結はしませんが(笑)、これは車輌区でのロケではないかと思います。走行中のシーンがあるのであれば、回送か増結?。イスがちょっと違うような感じもありますが…。

お座敷客車は、これはセットでは無く、スロ88形(当時はスハかも)の車端部よりの窓が均等配置のところに間違い無いと思われます。スロ(元はスハ)88形は、もともとスロシだった車輌を改造したので、「シ」部分の他に「ロ」だった部分があって、「シ」部分はおおよそ2つ一組の窓なのに対し、「ロ」部分は窓が1つずつ並んでいます。画像はこの元「ロ」部分に見えます。もう1輌のお座敷車は、オハ61改造の車輌(オロフ80)なので窓は広窓の均等配置であり、画像の車輌に該当しません。おそらく客車区での撮影か、走行中のシーンがあればロケのために臨時に増結したものと思えます。

その次のカットの、「隣の普通車」は、窓の上段がいわゆる「バス窓」なので、なんとキハ17系です(笑)。背刷りも低いですし。このシーンだけリテイクが必要で、急遽手近な車輌でなんとかした感がしますね。

ラストのカット、手前からスハフ42?、スロ62?、スハネ(冷房)、オハネ(非冷房)、以下ハ…と続くようですが、ロネがありませんね。編成も短そうなので、末端区間なのでしょうか。

なるべく矛盾無く仕上げようという気持ちが、カットだけでも見て取れるので、国鉄の全面協力と撮影陣の苦労が思われますね。
失礼いたします。

すぎたま | URL | 2019-10-29(Tue)16:11 [編集]


Re: 撮影には苦労した様子が

すぎたま様 詳細な車輛解説コメントありがとうございます。

 寝台車部分の撮影は やはり下り津軽2号の寝台車の内、本来 秋田で切り離す予定の1~3号車を 回送扱いでそのまま運行して撮影したのかもしれませんね。

 DD51に引かれた橋梁上を行く列車が解説の編成とすると、上り津軽2号でマニ36、スロ62、オロネ10、スハネ16・・・ですか。

 食堂車のシーンはキシ80形ですか だとすると当時大阪~青森を走った特急白鳥ですが、青森23:40着 折り返し4:40発ですので借りるにしては時間不足かと 向日町なら予備車があるかもしれません。
 食堂車のシーンでは上野~福島~秋田~青森の 現在位置表示板が映った部分があるので、セットによる撮影と思ったのです。(キシ80形を模した?)

 お座敷客車はセットでは無く、本物のスハ88形ですか。盛岡局にある2輌が人気で、東北全域に一年中貸し出されていたとか。
弘前駅ホームは本物ですが、実車に乗り込むシーンがないのでセットではと思いました。
 客車区で間合い時間に借りたのでしょう 本文を修正させて頂きます。

 それにしてもラストの客車屋根だけで、車種を割り出すとはさすがですね 今後も宜しくお願い致します。

テツエイダ | URL | 2019-10-30(Wed)07:57 [編集]


喜劇 逆転旅行

「旅行シリーズ」は「Discover Japan」の先駆けとなり、国鉄の全面協力によりほとんどすべて実際の車両で撮影を行っています。

そのため、本物だけが持つリアリティが画面より迫ってきて、昭和40年代の国鉄に興味のあるファンなら垂涎の的ではないでしょうか。

そればかりでなく、喜劇映画としてもとても愉快で楽しく、いつも安心して見ていられました(「喜劇~」といっても、余り面白くない映画も多々ありましたが)。

そのハイライトは、映画の後半にフランキー堺が夢の中の妄想で恋人と勘違いした伴淳に襲いかかります(毎回同じようなシーンがありました)。

逃げる伴淳に、追うフランキー、コテンパンな目に遭う伴淳に、ケロリと夢から目を覚ますフランキー、このシーンはまさに抱腹絶叫(ばかぁ、絶倒だ!)でした。

このシーンを見たいために映画を見に行ったものでした。

さて、Mr. テツエイダ(食堂車セット説) VS Mr. すぎたま(食堂車キシ80形説)の、専門用語応酬のバトルには私は到底ついていけませんが、11枚目の写真をアマチュアの眼で観察すると食堂車だけはセットのような気がします(これ以外はすべて実車撮影だと思います)。

理由は:

テーブルが(横に)大きすぎます。両テーブルに挟まれて、ウエイトレス(早瀬久美)一人が立っただけで、通路の幅はほとんどありません。

実際の食堂車のテーブルはもう一回り小さいサイズではないでしょうか。

しかも、この写真では同じ大きさのテーブルが横並びになっていますが、本来の食堂車では片側に二人用テーブル、もう片側に四人用テーブルを並べて、通路を広く確保しているのが普通ではないでしょうか。

また、この写真だけでは奥行き感がよくつかめませんが、(縦の)列ごとのテーブルが異常に密着し、椅子同士もピッタリと背中合わせになっています(のように見えます)。これではお客は食事するどころかゆったりと座ることもできないはずです。

すぎたま氏も「イスがちょっと違うような感じもありますが」と述べられているように、食堂車のチェアーとしてはデザインや色彩の点で不自然です。

ラクダ色で、白布のテーブルにはまったくマッチせず、材質もツルツルしてプラスチック製のようです。

「特急白鳥」ならもう少しシックで高級なイスを備えていたのではないでしょうか。

ちなみに、一番左側のイスの背もたれだけが他のものより少し高くなっています。

また、わざわざ回送か増結(ダイヤの関係で数少ない食堂車を使用するのは大変難しい?)で撮影するよりもセットを組んだ方が費用も時間も節約できたのでは。

赤松 幸吉 | URL | 2019-10-31(Thu)19:08 [編集]


Re: 喜劇 逆転旅行

赤松様 コメントありがとうございます。

夢の中の妄想で恋人と勘違いしたフランキー堺が、目の前の人間に抱き付くシーンは定番でしたね。

食堂車に関しては 5枚目の画像の様に、フランキーの背後の通路との境にある筈の扉がありません。(終始開きっ放し?)
また一番左側のイスの背もたれだけが 他のものより少し高い点によく気づかれましたね。営業中なのに、2つ重ねているのでしょうか。

11枚目の画像で伴淳三郎の背後の白壁も、小生の記憶と合わず 不自然の様な感じがします。

テツエイダ | URL | 2019-11-01(Fri)22:01 [編集]


どうですかね~

テツエイダ様、赤松様こんばんは。

キシ80形の車内画像を見つけました。
ttps://inacafe.exblog.jp/277887/
(頭にhを補って下さい)
確かに不自然な点は赤松様ご指摘のようにあるのですが、特にイスの形状は不自然ですよね。これはどういうことなのかとは思いました。
通路幅については、おおよそこんなものだと思います。上のブログでの画像でも、ウエイトレス一人が通ると、あまり余地は無いようです。

食堂車で両側に4人席になったのは、客車はオシ17形からで、マシ35形までは、赤松様ご指摘のように片側2人席でした。オシ17形では、車体幅を100ミリ広げたので、通路幅を少し詰めて両側4人席になったのです。余談ですが、そのために満員になると、コックさんが「皿が並びきらない」と困ったとか(定員が多くなったのに、配膳台が広がらなかったため)。
電車(サシ151形)、気動車(キシ80形)では、登場時から車体幅を広く出来たので、両側4人席です。
厨房横の扉(画像だと左奥)が開けっ放しなのは、確かに不自然ですよね。コックさんが仕込みをしているかの様子なのも、例えば尾久-上野回送時なのかなぁなどと思っていました。

最大の不自然は、ご指摘のようにイスですね。背刷りが高すぎます。さんざんこのような形状のものを探したのですが、こんなに高いものはありませんね。食堂営業後に床を掃除するため、イスはひっくり返してテーブルに上げ、その下をモップなどで掃除します。その時に背刷りが低くないと、作業しにくいわけです。
それと、11枚目画像右後ろのアクリル製ついたて部分が、なぜか白いのはどうしてか…。これも実車を使ったとすれば不自然ですよね。ここは勘定台の位置ですが、何か隠したいものがあったのか…。
さらにこのカット、左奥の通路窓に白っぽいカーテンがあるようにも見えます(実車には無い)。

どうですかね~(笑)。イスだけ持ち込むというのも変ですしね…。ただ気動車の食堂車は、電源エンジンをかければ、単体で車内灯などは動作させられますので、列車が止まっているシーンであれば、予備車などを使ってロケすることも可能ではありますが、そんなことわざわざするかなぁ。イス持ち込みで?
ちょっとここは決定的な証拠を出せません(笑)。
セットだとすると、相当厳密な考証に基づいているなと思います。

すぎたま | URL | 2019-11-02(Sat)00:53 [編集]


Re: どうですかね~

すぎたま様 再度のコメントありがとうございます。

5枚目以後の画像を差し替え・追加しました。 ビデオを見直しますと伴淳三郎が登場する時点を境に、実車でのロケとセット撮影を組み合わせて連続した場面とした映像となっています。

問題のイスは5枚目の画像では本物のキシ80形と同じ物の様です。また6枚目の画像にはパーテーションが映っていますが、これは記憶と合う仕様ですね。 流れる車窓風景も自然です。

ところが伴淳さんが絡む時点から、バックの飲み物・アルコール類等の配置が変わっています。ここからの長いシーンは、セット撮影としたのでしょう。

想像するに下り秋田行特急つばさ号に 15:06発の大曲から乗り込み、終点までの45分間で 閉店となった食堂車での短いカットの撮影をこなしたのかもしれません。

現在地表示板が上野~秋田~青森なので セットと思いましたが、本物の特急つばさ号も 将来青森まで延長運転することを予期して 上野~秋田~青森との表示板にしてあったかもしれません。

テツエイダ | URL | 2019-11-02(Sat)22:35 [編集]