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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

291.旅路

1953年7月 松竹 製作 公開   監督 中村登

生い立ちに引け目を負う岡本妙子 (岸惠子) と 奔放な人生を好む津川良助(佐田啓二) が恋仲となりますが、二人の生き方の違いに悩む 妙子の心中を描く青春映画です。

冒頭 横須賀線の 70系電車が鎌倉駅へ到着するシーンがあり、
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妙子が当地に住む叔父の岡本素六(笠智衆)の家を訪ねます。
序盤 付き合い出した津川と新橋駅前で待ち合わせた妙子は、叔父の家で前に会った阿多捨吉(若原雅夫)に会ってしまい 思わず逃げる様にかわします。

新橋駅ホームへの階段を駆け上がった阿多が 発車寸前の横須賀線に乗り込むと、1番線から 70系電車らしきが出発して行きます。
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その電車を妙子は物陰から見ています。
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妙子に好意を持つ阿多は席に座ると、妙子の事を考えている様です。(この場面はセット撮影と思われます)
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中盤 津川と深い仲になった妙子ですが 津川の生き方に疑問を感じて、叔父の家で居合わせた阿多に相談します。その二人の背後を横須賀線 70系電車が通り過ぎて行きます。
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続いて津川の仕事相手の岩本カオル(月丘夢路)が滞在する京都の都ホテル前を、京阪電気鉄道京津線の大正生まれ 20型らしき小型ポール電車が通って行くシーンがあります。
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終盤 津川が使い込みした 20万円を岡本に借りに来た妙子が 別件で置いてあった 30万円を持ち逃げし、自分が紛失したと被るつもりの阿多が 鎌倉駅で岡本を待ち構える場面があります。
鎌倉駅へ クハ76形を先頭とした 70系電車と中間に42系電車を挟んだ編成が到着し、
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駅舎から岡本が現れ 神妙な顔つきの阿多が出迎えるのでした。
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阿多が虚偽報告を岡本に告白した後 妙子が駆けつけ 岡本に持ち逃げを告白し、「二三日後には全ての事情を説明します」と告げて 信州にある津川の実家へ夜行列車で向かいます。
そして津川の実家近くの妙子は二人の生き方の違いが大きく、「別れましょう」とキッパリ津川に告げます。山間の小さな駅へ戻ると、右手から黒煙を噴き上げながら C56形蒸機牽引の混合列車が到着します。
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妙子が最後部のデッキに乗ると
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汽笛が鳴り、見送る津川が差し出す握手に応えながら汽車は動き出します。
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妙子は手を振りますが、津川は呆然と見送るばかりです。
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やがて汽車は小さくなって去り行き、エンドマークとなるのでした。
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PS.
 70系電車は当初から同一系列のみで編成組成することを前提としなかったので、新しいクハ76形の後ろに新製しなかった三等付随車を 古い 42系や 32系で挟んだ編成だった様です。
 当時の横須賀線 東京~鎌倉には毎時4本の列車が設定されていました。東海道本線と共有区間が長いので、朝のラッシュ時でも4本であって さぞや混んでいたことでしょう。

 都ホテル(現 ウェスティン都ホテル京都 )の前には京阪電気鉄道京津線があり、蹴上付近は急坂で有名でした。20型は 1914年製の 10m級小型車で、一部は鋼体化されて 1966年迄使われたそうです。
 
 本作のハイライト 別れの場面でロケが行われたのは、小海線の清里駅と思われます。当時の小淵沢~小海は一日5往復で、殆どが客貨混合列車でした。同じ小海線でも小海~小諸は気動車10往復・混合列車2往復半でした。
 妙子の別れ旅を想像すると 新宿 23:00 - (419レ) - 5:31 小淵沢 7:12 - (115レ) - 8:06 清里 11:34 - (162レ) - 12:18 小淵沢 13:27 - (424レ) - 18:11 新宿 と夜行日帰りでも現地滞在は3時間半です

 
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