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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

286.黒い樹海

1960年12月 大映製作公開   監督 原田治夫

東北へ向かった姉が何故か浜松で事故死し 死因に疑問を感じた妹の笠原祥子(叶順子)が、週刊誌記者の吉井正己(藤巻潤)協力の元 死の真相に迫るサスペンス映画です。

姉がバス事故死した時に同乗していた斎藤常子(山川愛子)に会いに山梨県の波高島の実家まで行った祥子は、姉の同行者を割り出す首実検の為 上京してもらい新宿駅で待ち合わせする約束を交わします。
ところが約束の日 祥子と吉井は白馬号に乗って来る常子を新宿駅で出迎えますが、
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予定通り白馬号は到着したのに常子は現れません。
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もしやと広い新宿駅の南口・西口・東口を二人で捜しまわり、更に構内放送をしてもらいますが会うことができません。
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その後 殺された常子の遺体が南武線矢野口駅近くで発見され、警察で聞いてみると立川で途中下車した切符が見つかったそうです。
祥子が常子の実家から帰宅した時、吉井に常子が明後日 白馬号で来ると話しました。それをアパートの管理人が聞いて犯人に通報したので、先回りされ立川駅で降ろされて矢野口で殺されたと祥子達は推理しました。

立川駅ホームで祥子と吉井は、ベンチで列車を待ちながら相談します。
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「犯人は我々の動きに感付いている様だ」と吉井が言い、祥子は自分と同じブローチをお守りに着ける様に渡します。
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二人の背後には8620形らしき蒸機が停車しています。貨車の入換作業を担っている八王子区のカマでしょうか。
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列車が来たのでデッキから車内へ入ると、祥子達が臭いと疑う画家の鶴巻莞造が座っています。
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祥子が声を掛けると「珍しい所で会うもんだね」と、慌てた様子で応えています。
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PS.
 
 バス事故での目撃者 常子が上京した過程は、身延線 波高島駅を 12:10発 623レに乗り 13:16に甲府着 13:49発の新宿行 408レ準急白馬号に乗り換え 15:56立川で降ろされたと思われます。
 本来は 16:30着の終点新宿まで乗り、祥子と会う約束でした。

 ホームで白馬号のサボを架けたオハフ61形客車の前で祥子達は常子に会えなく慌てますが、準急白馬号は 1960年4月には既にDC化されていますのでこれは実在の姿ではないと思われます。
 またオハフ61は背ずりが板張りでシートピッチも狭く、限りなく普通列車用の客車でした。PC列車時代でもさすがにこの車輛を、準急白馬号には使わなかったと思います。

 立川駅と思われるホームにいる 8620形らしき蒸機は八王子機関区所属で、立川や国分寺などの中央線貨物取扱各駅で入換仕業を担っていたそうです。
 
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コメント


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黒い樹海

映画は見ていないが、個人的に松本清張の推理小説の中では一番好きな作品であり、なによりも我がアイドル・叶順子さんが主演とあってはほっておけない。

「点と線」「ゼロの焦点」に比べて完成度は低いが、通俗ミステリーとしては読みごたえがある。

この原作で一番印象に残るのは前半のバス事故場面で、犠牲者の乗っていた座席から真相を究明していく過程である。

原作では「浜松市南遠交通」の「弁天島行」(浜松駅18時発)が浜松市の近く××町の踏み切りで大事故を起こす(18時10分ごろ)という。

この踏み切りを特定しようと思えばできないことはないが、例えフィクションであれ、死亡者4人(このうち一人が主人公の姉)、重傷者8人という悲惨な事故のため、清張はこの踏み切りをはっきりとは書いていない。

映画の撮影はどこで行ったのであろうか。それともナレーションでぼやかしてあるのだろうか。

常子は祥子に波高島(はだかじま)より新宿に16時30分に着くと電報を送っている。
清張は常子の上京列車についてはこれしか書いていないが、ブログでは「新宿行 408レ準急白馬号」と特定されている。

これ以降の女の足取りについては時刻表好きの清張は次のように具体的に記している。

(捜査の結果)常子は立川駅で15時56分に途中下車し、16時16分に南武線に乗り換え、矢野口で16時36分に降り立っている。

翌日の8時頃、矢野口近くの梨畑で彼女の死体が発見され、解剖の結果、昨日の18時頃絞殺されたと推定できる。

常子が何故立川駅で途中下車するようになったかのトリックもワンダフル。

証拠隠滅を図るために主人公(祥子)の周りの人物を次々と消していくという、それならば初めから祥子ひとりを殺せばすむのにと思う、あの推理小説パターンであるが、清張ワールドが存分に楽しめる一編である。

赤松 幸吉 | URL | 2019-06-25(Tue)06:51 [編集]


Re: 黒い樹海

 赤松様 コメントありがとうございます。

小生 原作を読んではいませんが、事故のあったバスに乗り合わせた斎藤常子に祥子は波高島で会います。
そして姉の同行者を割り出す首実検の為上京してもらう話を、アパートの管理人に通報されますが後に消されてしまいます。

同様にカギとなる人間が次々と消される清張ワールドに、不思議と観客は引き込まれてゆくのだと思います。
当時 山梨県の波高島という変わった名の町からの上京は、現在より遥かに大変だったことが想像できますね。

テツエイダ | URL | 2019-06-26(Wed)00:29 [編集]