
高額の遺産相続権のある蔦江(浜田ゆう子)を狙うヤクザ達から救い出そうと、奮闘する朝吉(勝新太郎)の活躍を描いた悪名シリーズ第13弾です。
冒頭 渡り仲居のお澄(森光子)が、柳行李を持って列車に乗り込んできました。

お澄は朝吉の顔を見るなり、「ケイちゃん」と幼馴染に違いないと言われますが人違いです。


お澄とこうして偶然列車で乗り合わせた朝吉は C57形蒸機らしきに牽かれた列車で大きな鉄橋を渡り、

とある温泉場の入口駅で お澄の行李を持ってやって一緒に降ります。
更にお澄が仲居として働く温泉宿に泊まったことから旧知の源八(上田吉二郎)が軟禁している、三億円の遺産相続権を持つ蔦江(浜田ゆう子)を狙う争いに飛び込む羽目になります。
中盤 朝吉の活躍で蔦江を二代目シルクハットこと関戸鉄五郎(長門勇)の元へ戻された源八は、お十夜(小池朝雄)一家に助っ人を頼み 両派が対立します。
そして蔦江の祖母 お菊(本間文子)がアメリカから明日 神戸に着き3時に原坂駅へ到着する旨の電報が来たので、関戸が営む原坂運送一派を挙げて出迎えることにします。
続いて 原坂駅には関戸を頭に原坂運送一派と蔦江を始め、関戸の妹 お美津(坪内ミキ子)と所帯を持った朝吉の元舎弟 田村清次(田宮二郎)も正装で出迎える為ホームへ入場します。


一方 お菊と源八・娘 環(勝山まゆみ)が乗る二等車内では、源八が怪しい英語で語りながら買ってきたアイスを二人に渡します。

そして新聞記者が煩いので、一つ手前の駅で降りましょうと持ち掛けます。

三人が乗る列車は、C57形蒸機に牽かれてとある駅に到着します。

そして三人が改札口を通り抜けようとすると、

駅の出口を お十夜一家の面々が塞いで待ち構えていたのでした。

次に C57190蒸機に牽かれた列車が、大勢で華やかに出迎える原坂へ到着します。


しかし お菊は降りてこず、車内を清次が捜しますが居ません。

ホームに入場していた朝吉を原坂運送の一派が取り囲み牽制していましたが、伝令が呼びに来たので撤収してゆきます。その時 列車の窓からお澄が、朝吉を呼ぶので近寄ります。

お澄は働いていた(ゆあさ)からこの先の(湯山)へ向かうと言い、「蔦江のおばあちゃんがこの汽車に乗ってる筈だったんだが」と聞くと「前の駅で派手なおばあさんと源八親娘を見た」と答えます。

お澄は汽車から降りようとしますが汽笛が鳴り、朝吉をは「蔦江の件が片付いたら湯山へ行くから」と宥めて別れるのでした。

PS.
最初の車内シーンは、セット撮影の様です。ホームに立つ駅員等を台車に乗せて動かしている様にも見えます。
原坂駅(架空駅)は風格のある木造駅舎ですが、第一ヒントが改札口の外に(大覚寺門・・)の看板が読めます。
関戸と清次がホームで話す場面(上から6番目の画像)で対面ホームに在る駅名板が、不鮮明ながらも漢字・仮名共に2文字なのが分かります。更に右手の次駅が、仮名で4文字です。
ここまでのヒントで地元の方には有名な山陰本線 嵯峨駅(現 嵯峨嵐山駅)であり、1904年築の駅舎は近畿最古として有名だったそうです。最初に朝吉とお澄が降りた駅も、嵯峨駅舎の右端に似ています。
お菊と源八親娘が乗る二等車は席の背ずりが板張りなので、オハ61形等の座席に白カバーを被せて二等車に見せ掛けた様です。
原坂駅で清次が車内を捜す場面で、車体に青帯とⅡが見えるのも国鉄に頼んだ演出でしょう。
お菊と源八親娘が降りた駅は、ホーム屋根が中央部の一部分のみです。確信はありませんが、嵯峨の二つ先 馬堀駅かもしれません。
C5789蒸機が牽く列車は豊岡行ですので馬堀だとすると、京都 6:41発の 921レ豊岡・敦賀行が唯一であって馬堀駅 7:20発です。
最後に朝吉とお澄が原坂駅で別れる場面で、客車中央部に架かるサボは下関行です。この当時 山陰本線全線を走り通す京都発下関行は 21:56発 829レが唯一なので、これも国鉄に依頼した演出でしょう。


