
買い手が逃がすと元の巣に戻る鳩の帰巣本能を利用して繰り返し売っては生活費を稼ぐ少年が、善意で買ってくれた少女と本作のタイトルを裏切ることになる社会派映画です
冒頭 国鉄川崎駅東口に出来たばかりの「駅ビルかわさき」と、広場の先に在る京浜川崎駅(現.京急川崎)から続く京急本線は高架前の地上線です。

その川崎駅東口前で武田正夫(藤川弘志)が、靴磨きのおばさん達の横で鳩を売っています。そこへ京子(富永ユキ)が通り掛かり、2羽の鳩を正夫から買います。
正夫は帰り道で玉子や野菜の他に文具を買って妹 保江(伊藤道子)が一人遊びをしている線路端へ行き、画用紙とクレヨンを渡してあげます。
誰かの銅像がある横の側線には DD12形内燃機らしきが停車していて、横の本線を C11形蒸機らしきがバック運転で通過して行く様子が映っています。

家で秋山先生(千之赫子)と進路相談をした後、正夫は市役所通りを京急線の踏切まで先生を送って来ました。

踏切を越えた所で別れようとした時、京子と偶然会います。
その時 踏切が閉まり、230形らしき3連が通り過ぎて行きます。

MIYAと看板の一部が映り背後の角地に建つのは、1951年新築の小美屋百貨店です。(現.川崎DICE)
その後 京子は父と兄が勤める東洋精器に正夫の就職を頼み、先生共々応援したが不合格となってしまう。皆 憤慨するが、兄は正夫の鳩を使った詐欺行為が原因だと告げる。
京子が返した鳩を正夫が再度駅前で売るのを見掛けると、怒って又もや買取り「もう鳩は戻らない」と言って閉まりかけた踏切を無理やり駆け抜けて行ってしまいます。

そのあとを 700形らしき電車が2連で通過して行きました。

PS.
本作公開の7か月前に完成した民衆駅「駅ビルかわさき」(現.アトレ川崎)は、前回ブログ(273.どぶ)の作品内で木造駅舎として映っている東口駅舎から激変しています。
京急本線の高架化が完成したのは 1966年12月なので、それまで作中の様に踏切警手が操作する第一種手動踏切が活躍していました。
保江が遊んでいた所は高圧配電線併設の電化された本線ながら、C11形蒸機も活躍し 側線は非電化 そしてアメリカ軍の置き土産 DD12形内燃機も在ります。
川崎近郊でこんな所は何処なのか? ガスタンクが映る別場面もあるので鶴見線安善駅近くと思われ、品川区の DD12が米軍貨物輸送に出張していたそうです。
本作は大島渚監督デビュー作ですが、松竹幹部に変えられたタイトルには最後まで納得がいかなかったと後年まで語っていたそうです。
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