
東和毛織 管財課長 石野貞一郎(小林桂樹)が浮気の発覚を恐れて嘘をついたことから、窮地に追い込まれてゆく過程を描いたサスペンス映画です。
冒頭 東京駅前にある新丸ビルにある会社まで通勤する道中を辿る場面で、郊外電車で渋谷へ向かいます。空撮で3両編成の東急 3000系らしき電車の、走行シーンがあります。
田園都市線が存在しない時代なので東急沿線で思いつく場所がありませんが、京王帝都電鉄 井の頭線沿線らしき雰囲気があります。

会社帰りに浮気相手の梅谷千恵子(原知佐子)のアパートへ寄る為、山手線 新大久保駅から石野が降りて来ます。電報・電話の看板がある売店脇を、石野は伏目がちに通り過ぎて行くのでした。

最近まで画像より やや改札寄りに売店がありましたが、現在は駅舎改築工事中でありません。
その後 石野は千恵子の所を出て角を曲がった所で、近所の保険外交員 杉山孝三(織田政雄)に出くわし思わず会釈してしまいます。数日後 会社へ奥平刑事(西村晃)が訪れ、新大久保で杉山に会ったか?と聞かれたので否定します。
翌日 会社前の地下鉄丸ノ内線東京駅出口から地上へ出ると、脇の新聞売りの台に「向島若妻殺し・容疑者逮捕」と張り紙があります。背後を走る都電は、28系統(都庁前~錦糸町)か 31系統(三ノ輪橋~都庁前)でしょう。

帰宅時 国電の中で新聞を読むと、「向島若妻殺し 保険外交員捕る」と載っています。石野が座っている背後の車窓には、【 日教販 】の看板が見えます。その昔 水道橋近くにあった日教販の作業所と思われ、セット撮影に実写映像を合成したと思われます。

殺人事件の捜査が進み、石野は桜田門の警視庁へ呼ばれます。そこで岸本検事(平田昭彦)から再度 新大久保で杉山と会ったか聞かれますが、その時間は渋谷の名画座で映画を観ていたと苦しそうに否定します。
検事による聴取が終わり警視庁の正面から出てくると、杉山のアリバイを否定した形なので石野は良心の呵責に苛まれて考え込んでしまいます。暗い顔をした石野の背後には、桜田門電停へ向かう 9系統(渋谷駅前~浜町中ノ橋)か11系統(新宿駅前~月島通八丁目)の都電が走っています。

石野は千恵子と相談し 二人の関係がバレない様 嘘の証言を確かなものにする為、偽のアリバイを整然と証言する練習までします。そして渋谷で観た映画の内容を正しく証言する為、古本屋で映画が封切られた時のキネマ旬報を探しに 千恵子は神田神保町へ行来ます。
白山通りの神保町電停に 18系統(志村坂上~神田橋)の都電が停車し、千恵子が神保町交差点を渡って来ます。

そして映画関係の古本屋で、「30年のキネマ旬報 6月号ありますか」と聞いて捜します。
裁判所で台本通り映画の内容まで正確に証言をして、危機を乗り切ったと思えた石野です。その後 千恵子に結婚話があり、二人は別れることで話がつきます。
その帰り道 石野は国電ホームで別れるには惜しい女だなと思いながら、到着した 72系電車らしきに乗り込みます。

そして未練がましく、さっき別れたばかりの千恵子のアパートへ向かうのですが・・・
PS.
石野は渋谷の安い2本立て名画座で 5年前に初上映された映画を観たと話したので、裁判所で映画の内容を聞かれた場合に備えて千恵子が神保町の古本街へ 5年前のキネマ旬報を探しに行きます。「西部の嵐」は 1936年作なので、イタリア映画「パンと恋と夢」(1953年作 日本での公開が 1955年7月)の解説が掲載されているであろうキネマ旬報昭和30年6月号を探しに行ったのでしょう。
千恵子が 18系統の都電から降りた場面だけでなく、古本屋を探している時 背後の靖国通りには10・12・15系統何れかの都電が走る姿が映っています。ロケ当時は東京都電の全盛期だったので、街中でロケすると都電が自然と映り込むのでした。
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