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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

263.三匹の野良犬

1965年9月 日活 製作 公開   監督 牛原陽一

片桐組の仲間に嵌められ 警備員射殺の罪で 死刑判決を受けた岡本隆(小林旭)が、護送中に脱走し 新たな仲間と組んで復讐を目論む アクション映画です。

冒頭 列車で護送途中の岡本は、木暮刑事(多々良純)と手錠で繋がれ向かい合わせに座っています。
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デッキのドアが開き、因縁の東田(郷鍈治)に似た男が入って来ます。
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思わず岡本は立ち上がりますが、「人違いでした」と言って座ります。
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続いて「トイレに行かせて下さい」と頼みデッキへ向かうところで、EF58形電機の走行シーンが入ります。
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岡本がトイレに入り、手錠で繋がれた木暮刑事が外で待つ形です。中で岡本は裁判官から死刑判決を受けた時のことを思い出すと、勢いよく扉を開けて木暮刑事の首に鎖を巻き付けて手錠のカギを探します。
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遅いのを不審に思ったもう一人の平野刑事(長弘)が駆けつけると施錠されたトイレから応答が無いので、急ぎ車内通路を走って反対側のデッキへ駆け込み非常弁を強く引きました。
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列車が急停車するタイミングで岡本は、トイレのガラス窓を割り破って飛び降ります。
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丁度そこは鉄橋上で、反対側から向って来る電機牽引列車が見えます。
急いで逃げようとすると今度は足が枕木とその下の部材の間に挟まり 焦る岡本に、EF80形らしき電機が
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牽引する列車の危機が迫って轟音と共にEF13形らしき電機が通過して行きます。
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ところが岡本は鉄橋の下側にぶら下がって回避したのでした。
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その後ヒッチハイクで乗せてもらった皆川英次(和田浩治)に助けられて検問を抜け、殺されていた片桐元組長の所で出会った神山秀夫(宍戸錠)とダイヤを目当てに三人は組んで行動します。
ダイヤを奪った権藤(高品格)が横浜で営む東海産業へ皆川が入り込み、ライバルの日光海運へ岡本がもぐり込んで共倒れを目論みます。その出だしで、横浜臨港線に停車している貨物列車脇でのロケがあります。(遠く蒸機の汽笛は聞こえますが、姿は無し)

終盤 助っ人の東田が 153系らしき急行六甲号で、横浜駅へ到着します。
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そして今は無き横浜駅東口駅舎をバックに登場して、恰好をつける場面もあります。
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急行六甲号は 1961年10月に登場して特急こだま号などを補完する役割で活躍しましたが、東海道新幹線の開通もあって この映画公開の9月末をもって廃止されています。




PS.
  岡本が護送されている列車は急行まつしま号だそうで(セット撮影でしょう)、「次の停車駅は宇都宮 日光行は 14:??発です」と車内アナウンス(アフレコ)があります。

 当時のダイヤでは上り 36M急行第2まつしま号が 14:41宇都宮着で、接続の日光行は 14:45発の 821レです。脚本は、この列車を示唆しているのでしょうか。(PC客列車ではなく電車ですが)

  102M 急行六甲号は 8:30大阪発で、15:34横浜到着でした。10分後に大阪を発車するPC客列車の 36レ急行高千穂号は横浜着 16:23と所要時間は 39分も多いのです。加速の良い電車ならではの違いですね。

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コメント


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これはひどいセット

テツエイダさまこんばんは。

これはひどいセットですね(笑)。
窓と座席のピッチがおおよそ一致(少しずれてる)していますが、仮にそうだとすると、窓幅は1400ミリになってしまいます。そんな窓一人では開けられませんね(笑)。
それと上部の謎の四角い板(かまぼこ板を少し小さくした位のサイズ)も、意味がわかりませんし。デッキドアが開き戸に見えるのもなんとも(グリーン車の一部以外は引き戸です)。
窓を破って外に飛び降りるのはいいとしても、その外側の外板に縦横の補強材が入っているのは、まるで室内か、木造車のよう…。よほど詳しくない大道具さんが作ったのか…。
刑事が車掌弁を引くのも不可解ですね。緩急車(記号「フ」)には、確かに車掌弁がありますが、刑事と言えども勝手に引けますかね。デッキに付いていたりは普通しないのですが…。
EF80が近づいているのに、実際に通過するのはEF15(初期形)とか、「鉄道を知らない人が作った」としか思えない…。ストーリー的にはともかく、そのあたりは残念な仕上がりですね。

失礼いたします。

すぎたま | URL | 2018-07-21(Sat)03:37 [編集]


Re: これはひどいセット

すぎたま様 コメントありがとうございます。

ご指摘の様に この客車内は、明らかにセットですね。とくにデッキドアには、小生も先ず違和感を感じました。

トイレ内の異変を感じた平野刑事が車掌にトイレの解錠を願い出ないで、非常弁を引いて緊急停車させた行為は疑問ですね。
おかげで岡本は安全に飛び降りることができました。更に平野刑事はデッキか窓から外の様子をうかがわず、岡本の逃走を許してしまう失態でした。  ストーリー的に疑問符の付く内容ですね。

通過する電機は EF15と迷ったのですが、初期形のEF15でしたか 訂正させて頂きます。

テツエイダ | URL | 2018-07-21(Sat)18:06 [編集]


三匹の野良犬

アクロバット的離れ業では小林旭の身の軽さ、運動能力は並はずれていた。
ジャッキー・チェーンやソニー千葉(千葉真一)にも引けを取らないと思われるくらい。

どのような危険な撮影であれ、旭は危険をものともせず、スタントマンなしでほぼすべてのアクション・シーンを自分で演じた。

この「三匹の野良犬」の冒頭の度肝を抜く危なっかしい列車からの脱走シーンも、実際に旭が自分でやっているはず。

(列車からの)逃亡シーンはよく他の映画でも見られるが、これは迫真性と緊迫感において一級品である。

鉄橋からぶら下がっている男(10枚目の写真)、これは確かに小林旭のはずだ。
彼はこれくらいのこと朝飯前、涼しい顔で平気でやった。

「さすらい」(1962年)ではヘリコプターから吊されて、空中ブランコ乗りまで見せているくらいだから。

現在では、各鉄道会社はこんな無謀で危険な撮影を線路・敷地内では絶対に許可しないだろう。

なんせ、先日ある芸能人が踏み切りより少し線路内に入って自画撮りしただけで、世間を騒がす大問題になったぐらいだから。

その女性タレントはテレビで大泣きしながら、この「不法侵入?」について謝罪していたが、一体、誰に対して謝罪していたのだろうか、JRの社長に対してだろうか、踏み切りの管理者に対してだろうか、ファンに対してだろうか。

すぎたま氏によれば、この列車セットは史上例を見ないほどヒドイものらしいですね。

素人の私が考えても、見れば見るほどおかしな列車で、マイトガイ(小林旭)専用特別車両として大道具さんが腕をふるって組み立てたのかも知れない。

すぎたま氏指摘の謎の四角い板は、本当に一体何なんでしょうね。
靴下やシャツのワンポイント模様のように、余ったベニヤで単にくっつけただけなのか、それとも何か意味があるのか。

(コート掛け用)フックは小林旭のいるボックス席には前後一つずつありますが、前後に隣接する四人席にはフックは見当たりません。

普通、フックは背もたれを挟んで二つずつあるのではないでしょうか(うまく言葉では説明できませんが)。

更に不思議なのはトイレの窓です。トイレは密閉性が強く、窓は極端に狭かったり、まったく窓がなかったりするのが普通ではないでしょうか。

それがこの列車(急行まつしま号)のトイレ窓では体格の大きい旭がゆうに飛び降りる事ができるくらいのサイズになっています。

などなど。

ですが、「荒唐無稽」で客受けする旭の映画、笑って許しましょう。

赤松 幸吉 | URL | 2018-07-24(Tue)20:43 [編集]


Re: 三匹の野良犬

赤松様 コメントありがとうございます。

小林旭の演じるアクション・シーンはさすがに見事な出来栄えで、ハラハラさせますね。

すぎたま氏指摘の謎の四角い板は小生も不思議で、扇風機のスイッチを隠したにしては多過ぎですね。
(コート掛け用)フックの件も二つずつなければ・・・

画像5枚目 トイレの窓は明らかに脱出用に大きく作った様ですね。更に開閉用のラッチまで付いているのも・・・

テツエイダ | URL | 2018-07-25(Wed)23:45 [編集]


今頃なんですが・・

こんばんは。コメント迷いましたが・・鉄橋を渡るEF15タイプの機関車は、EF13型ですね。台車のブレーキシリンダーと、ブレーキテコの取り付け方が違います。客車のトイレ窓の大きさですが、旧型客車(35系・43系まで)ならこれくらいのサイズでしょう。開閉できたかは記憶してません。後年の更新改造などで、小型化されたり折り曲げ開閉式になった車両もありました。以上、粗探しみたいになりました事、お許しください。

つだ・なおき | URL | 2018-07-26(Thu)20:12 [編集]


Re: 今頃なんですが・・

つだ・なおき 様  コメントありがとうございます。

そしてご指摘ありがとうございます。 不鮮明な画像且つ 車輛に弱い小生なので、併記という形で訂正させて頂きます。

小生としても つだ様のような方の反応を期待して とりあえず書いてしまう時もあるので、これからもどしどしコメントしてください。

テツエイダ | URL | 2018-07-26(Thu)22:26 [編集]


EF13 25のようです

テツエイダさま、赤松さま、つだ・なおきさまこんにちは。

トイレ窓は、大きさとしてはやや大きめに作ってはあるものの、見た目の印象としてはそこそこな感じですね。
当時のトイレ窓は開けることが可能なものが多かったようです(後年2段になって、上部が手前に傾くように開くものになったりしますが)。

つだ・なおきさまご指摘の機関車の形式ですが、どうも確かにEF13形であるようです。それは枕バリの位置(車体下部の四角い出っ張り)が、通風口の中央真下(EF15ならば、通風口が前後に移動している)であることが証拠になりそうです。ただ、EF13だとすると、ナンバープレートの上に窓が無いのが不思議なのですが、なんと25号機だけはナンバープレート上に窓がありません(EF15も26号機と31号機にはありませんが、前記のように枕バリ位置が異なります)。なので、本機はEF13 25であろうと思われ、当時の配置区も矛盾がありません。
それにしてもレアな車輌を撮ったものです(笑)。

車内のコート掛けは、確かに窓柱部に2つ付いている場合がほとんどですよね。
1枚目画像のイス、左右で肘掛けの高さと角度が違っていますよ(笑)。
大物スターが体を張って出演する割には、ちょっとセットがおそまつ、というところでしょうか。

失礼いたします。

すぎたま | URL | 2018-07-30(Mon)07:53 [編集]


Re: EF13 25のようです

 すぎたま様 再度の詳細な解説コメントありがとうございます。

 小生の理解が及ばない程詳細な解説 お見事です。 そして行き着いた結論が、つだ様のEF13形説 更にレアな EF13 25であろうとのこと。

 それから1枚目画像で左右の肘掛け角度が違っている点など、鋭い観察眼には敬服致します。 今後も宜しくお願いします。

テツエイダ | URL | 2018-07-30(Mon)21:11 [編集]