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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

262.一万三千人の容疑者

1966年9月 東映 製作 配給   監督 関川秀雄

実際あった誘拐事件捜査の主任刑事が書いた手記を元に刑事 堀塚修(芦田伸介)を中心とした警察の捜査を、ドキュメンタリータッチで描いた刑事ドラマです。


村山明彦(藤山敏美)ちゃん誘拐事件として捜査開始早々 被害者宅へ身代金要求の電話が入り、父親の村山和夫(神山 寛)が指定された新橋駅前 場外馬券場へ向かいます。
新橋駅の京浜東北線 北行 72系国電が映り
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ベンチに座って張り込む堀塚刑事と高井宏刑事(田畑隆)の背後には続いて到着した山手線内回り 101系国電が映っています。
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ガセネタの電話が続いた後「品川駅 20:30の列車から途中下車して受け取るので 50万円持って来い」との電話が入ります。
品川駅ホームの時計は 20:28
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堀塚・高井刑事の他 多数の刑事が出動して、50万円を持ってホームに立つ母親 敏子(小山明子)の周囲を固めています。
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堀塚刑事の背後には 10系寝台車オロネ10形らしき車輌が停車しています。
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やがて静かに発車して行きますが、次位はオロ 61らしき一等座席車で、窓際に女性が一人座っている姿が見えます。
続くカットでは 10系二等寝台車らしき車両の次に二等車が続き
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最後部の赤いテールランプは徐々に小さくなって去り行きました。
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今回も電話はガセだったのです。

やがて小畑守(井川比佐志)が有力容疑者に浮上し、アリバイ確認の為 堀塚らは福島にある小畑の実家へ向かうことになります。
最初に 451系らしき急行電車が高速で走り抜ける姿が映ります。
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ヘッドマークは不鮮明ですが平仮名4文字なので、「みやぎの」「まつしま」のどちらかと思われます。

小畑のアリバイは崩れましたが、本件での逮捕に至るだけの確証が無いまま長期捜査で捜査陣も縮小されていきます。
そんな中 国電車内に座る高井らの前に立つ二人連れの片方が「迷宮入りしそうなこの事件が解決しないのは、犯人が刑事だからさ」などと言うと
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高井が頭にきて立ち上がろうするのを同僚刑事が押し止めます。
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僅か5人体制となった捜査班は小畑の身辺を新たな角度で見直そうと、小畑の実家や関係者への聞き込みを再度行います。
その場面の初めに、キハ58系急行形気動車らしき車両の走行シーンがあります。
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何故か走行音は、電機牽引列車の様です。




PS.
   品川駅 20::30の列車とは、901レ急行能登・大和号 金沢・和歌山市・湊町行と思われます。編成後部はナハネ11+オハ46+スハフ42だったので、映像に合致している様です。

   451系急行電車で福島へ行ったとすると上野 7:45発 31M急行第一まつしま号に乗って 11:39に福島へ行き、聞き込みをして 17:11発 32M第二みやぎの号に乗り 21:18上野へ帰ったという行動が想像ができます。
  
   最後のDC急行は、該当するのが上野 9:00発山形行 403D第一ざおう号と思われますが、福島着 13時過ぎでは少々遅く 帰りは翌朝着の夜行列車でしょうか?

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コメント


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いやいや・・

初めまして。いつも楽しく拝見しております。
よく調べておられると感心しております。
さて、ナロネ21らしき客車ですが、20系ではなく10系のオロネ10ですね。塗装がまったく違いますから、一目瞭然ですね。
臨時や回送じゃなく901レでしょう。

つだ・なおき | URL | 2018-07-07(Sat)12:48 [編集]


Re: いやいや・・

初めまして つだ・なおき様 コメントありがとうございます。

帯付き寝台車なので、単純にナロネ21形と考えてしまいました。 小生オロネ10形は帯無し しか見たことがないので、思い浮かびませんでした。 なるほど上部に帯が無く、帯中央部に「寝台」と表示されているのでオロネ10の様ですね。

本文の訂正をさせて頂きます。 型式に弱い小生なので、これからもどしどしご指摘の程よろしくお願いします。

テツエイダ | URL | 2018-07-08(Sun)10:51 [編集]


一万三千人の容疑者

大いなる旅路』や『大いなる驀進』の鉄道映画では定評のある関川秀雄監督作品なので、当時の運行ダイヤ通りの列車を使用していると思っていたが、(よく分かりませんが)客車型に矛盾点があるのですか。

犯人(O T)役に格好の井川比佐志を得て(刑事の芦田伸介も申し分ない)、この映画はサスペンス溢れる好篇となっている。

当時、実行犯O Tは黒澤明の「天国と地獄」を見て、幼児誘拐を思いついたと、センセーショナルに報じられた。

しかし、その後O T は「天国と地獄」の本編を見ていないことが判明、今では「犯人は(本編ではなく)その予告編を見たことで犯行を計画した」というのが、映画ファンの間では通説になっている。

「天国と地獄」の公開が1963年3月1日、誘拐発生が同3月31日、覗き見的な新聞種にするのには、実に絵に描いたようなタイミングだ。

確かに「天国と地獄」公開後、類似の凶悪犯罪が多発したが、O T は本当に予告編を見たのであろうか。

それは実(まこと)しやかな作り話、今でいう都市伝説にすぎず、私は見ていなかったと思う。

予告編を見るには前週(あるいはそれ以前)に東宝の映画館に行っていなければならず、その時の上映作品は(私が調べた限りでは)「にっぽん実話時代」「素晴らしい悪女」の二本立て、O Tがこのような映画を見ていたのとは信じられない。

O T がハイセンスな東宝映画の愛好家とは考えにくく、しかも、当時の彼は極貧状態で映画代を払えるような身分ではなかった。

例え、予告編を見ていたとしても、そこには「誘拐」を匂わすシーンはほとんど(まったく)ない。

「明日のこだま第二特急に乗れ!」(犯人の電話声)だけである。

ましてや、身代金を特急のトイレの窓から投げ落とすという意表をついたストーリーは公開まで極秘中の極秘で、本編を見るまで誰も知らなかったはずである。
 

赤松 幸吉 | URL | 2018-07-08(Sun)15:37 [編集]


Re: 一万三千人の容疑者

 赤松様 コメントありがとうございます。

寝台車の形式については、小生の間違いでした。 詳細はコメント欄の、つだ様への返信に記したとおりです。

さて犯人(OT)が「天国と地獄」を見て犯行のヒントにした という話は小生も聞いた覚えがあります。
電話をかけてきても逆探知出来ない長さでいつも切ってしまうから、という話も聞きました。

ご指摘の様に予告編だったという話も、的外れな感じがしますね。

テツエイダ | URL | 2018-07-08(Sun)22:59 [編集]


フィクションであるが故の凄みが感じられます

 ED76であります。


 小生が好きな「鉄」映画の一つとして、「家族」が挙げられます。福岡県の炭鉱島から北海道の「中標津」まで、酪農で成功していた親友を頼って家族5人(しっかり者の美人妻役の「倍賞千恵子」様と寡黙な老父役の「笠智衆」氏ら)が、日本列島を当時の国鉄で北上するストーリー。その中で主人公の「風見精一」を演じていたのが、本作の犯人役「井川比佐志」氏であります。万博が開催された昭和45年、豊かさを求めての新天地への旅は、結果として「生まれたばかりの長女」と「老父」を亡くしてしまうという悲劇を招いてしまい、風見夫妻は絶望の底に・・・。しかし、道東の晩春である6月に夫婦に新たな命が宿ってというストーリーで、頑固一徹ながらも「倍賞」様の演じる妻あっての昭和親父といった役どころ。「井川」氏には、市井の実直な人間像のイメージしか持たない小生にしてみれば、本作の極悪非道な誘拐犯はその姿を根底から覆されるものであり、衝撃的でもありました。
 また、犯人「О」氏(本作では小畑。既に刑死しておりますので敬称と致します)を追跡する刑事役に「芦田伸介」氏(独特のオープニングテーマで始まる七人の刑事の主任役)とあっては、サスペンスの極みのような展開。ノンフィクションの実話だからこその部分と相まって、小生には見ごたえのある一作となりました。


 実際の「吉展ちゃん事件」は、小生が生まれる前年の出来事ですので、関係書籍等での知識でしかありませんが、まだまだ警察自体もこの手の誘拐事件に対するノウハウが不十分であり、身代金の受け渡しの際の不手際もあって、本作の一コマのように批判非難を受けてしまったようです。ただ、その汚点を当時の警視庁きっての名刑事「平塚八兵衛」氏が粘り強くかつ綿密な捜査の結果、容疑者「О」氏を自供に追い込んだ逸話は、有名であります。後年、「平塚」氏が「О」氏の故郷である福島の寒村を訪ねた際、同家の墓石の横の小石に同氏が弔われているとの話を聞かされ、その様子を目の当たりにして思わず涙が止まらなかったとの話、ある種当然の報いであるとは言え、何か胸に迫る思いがいたします・・・(涙)。


 「大和」は、現在では想定できないルートを走行していた夜行レではないでしょうか。
「東京」から「関西本線経由」で「湊町」に向かう寝台レであれば、大阪行きの「裏街道急行(?!)」ような存在(現存していれば、東京から「奈良」や「USJ」への直通観光急行といった役割でしょうか・・・。無理がありますねぇ(笑))であります。しかし、テツエイダ様もご承知のとおり、この「大和」に変わり種の「和歌山市」行の「ハネ」が1両連結されていたのでありました。
 これは、東京・湊町間の「大和のハネ1両」を、「王寺」から和歌山線普通列車に増結して運転されたものであり、当該寝台には改造した「スハネフ30」が充当されました。ただ、当時は当該車以外には「ハネフ」は存在せず、正にこの「大和」の和歌山直通車のために登用したようでございます。
 その後、軽量の「ナハネフ10」が登場すると、関西本線の難所「加太越え」に備えて、当該車はそれに置換されております。


 失礼いたしました。

ED76 | URL | 2021-12-27(Mon)15:11 [編集]


Re: フィクションであるが故の凄みが感じられます

ED76様 コメントありがとうございます。

「家族」は 大阪万博が開催された時代の鉄道シーンも多く 取り上げ候補に上がっていますが、年代が浅く 400回前後のカラー作品時集で 取り上げたいと思っています。

井川比佐志氏は 悪役・善人役のどちらもこなす役者さんで、数多くの作品に登場していますね。

急行大和号は 1962年3月から和歌山市行のスハネフ10形二等寝台車が 1輌追加された様ですね。
「県庁所在地から東京迄直通列車を!」の要望に応えての 処置だったそうですが、その後6年半で 打ち切られたので 設定が遅すぎた感もありますね。

テツエイダ | URL | 2021-12-27(Mon)17:09 [編集]