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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

258.永遠の人

1961年9月 松竹 製作 公開   監督 木下恵介

小作人 草二郎(加藤嘉)の娘 さだ子(高峰秀子)は川南隆(佐田啓二)と恋仲だったが、地主の息子 小清水平兵衛(仲代達矢)に手籠めにされ 結婚を余儀なくされてからの30年に渡る愛憎劇を描いた映画です。

冒頭 早朝の阿蘇山麓を走り抜ける汽車のデッキで、
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仲睦まじく手を取り合う男女がいます。
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辺りが未だ薄暗い中 汽車は登り勾配をゆっくりと、緩急車のテールランプを最後に去り行くのでした。
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朝霧の彼方から聞こえる汽笛の音を聞きながら、晴れやかな表情で佇む さだ子の姿が映ってタイトルが入ります。

さだ子は平兵衛を憎みながらも嫁としての仕事を淡々とこなしますが、3人の子供【栄一・守人・直子】の内 因縁の折 懐妊した長男 栄一(田村正和)には冷たいのでした。17年後 栄一は出生の因縁を知り、阿蘇の火口へ身投げしてしまいます。
28年後の昭和35年 川南の息子 豊(石浜朗)と直子(藤由紀子)は、因習の強い村から駆け落ち同然に大阪へ向かいます。再度映る冒頭の場面は さだ子の一存で二人の結婚を許し 送り出した情景で、実に28年前 川南と夢見た自身の姿を思い起こしていたのです。

翌年 川南の病気が悪化し、豊と直子は大阪から駆け付けます。阿蘇へ向かう汽車の中で直子は赤ちゃんに帽子を被せて、
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荷物をまとめ下車の準備をしています。
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続いて阿蘇の外輪山らしきをバックに、門デフ付 C58 426 蒸機が4連客車を軽快に牽いて来ます。
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駅のホームでは出迎える さだ子が、今か今かと待っています。
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そこへC58形蒸機が牽く列車が走り込み、
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先頭客車の後部デッキに立つ豊を見付けたのか さだ子は駆け寄ります。
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次の車輛はローカル線特有の、オハユニ61形 二等車・荷物 郵便合造車の様です。
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二人は間に合い 川南は最後の力でさだ子に、平兵衛と さだ子への謝罪を申し入れます。急ぎ帰宅した さだ子は平兵衛にこれまでの行状を謝り、平兵衛も最後には さだ子への永き愛を告げながら川南の元へ容赦を伝えるべく不自由な足で急ぎます。 こうして足掛け30年に渡る、憎み合う3人の関係が解けたのでした。





PS.
   豊肥本線はこの当時 大分運転所のC58と宮地区の 9600形が担当していた様です。早朝の走行シーンは牽いているカマが 9600形の様ですが、雄大な阿蘇山麓を走る混合列車の姿は素晴らしいですね。

   ロケ当時 豊肥本線の列車本数は少なく 大分行のサボを架けた列車が到着したのが阿蘇駅とすると、時間帯からして 13:51頃到着の 723レと思われます。(ロケは波野駅かも)

   はるばる大阪から この列車で到着する過程を想像すると、京都始発の 205レ急行天草に大阪から 21:06発に乗り・・・熊本着が翌 11:25で 12:20発の 723レに乗り換え 13:51に着いたので赤子連れには大変な旅だったでしょう。
   
   でも危篤の父親の元へ急ぐのですから、熊本から 12:05発 705レ準急第一ひかり号博多行に乗り換え 13:05頃阿蘇へ到着とするのが順当かと・・・(美しく俊足のキハ55形気動車では監督のイメージに合わないですね)


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コメント


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永遠の人

木下恵介監督作品には鉄道シーンでがよく見られ、親子や家族や恋人などの出逢い、旅立ち、別れが鉄道シーンで切なく描かれている。

木下恵介ほど日本的風景に鉄道シーンを効果的に融合させた監督はいないのではないだろうか。

このブログにも掲載されている「女の園」の姫路城を背景に市川橋鉄橋を渡る列車シーンは屈指の名鉄道シーンだと思う。

「永遠の人」は阿蘇の大地を黒煙を吐きながら走る蒸気機関車のポーという汽笛と共に映画は始まる。

叙情的で郷愁を帯びたストーリーを予感させるファーストシーンである。


しかし、ここからは辛口のコメントになるので、辛辣な批評や手厳しい意見に慣れていない人、また読みたくない人は直ちにここから退出してください。

「名もなく貧しく美しく」ですっかり高峰秀子のファンになり、彼女は、母親ほどの年齢に近いにもかかわらず、「恋慕」を感じた初めての女優だった。

「永遠の人」も「喜びも悲しみも幾歳月」「二十四の瞳」などの高峰秀子に逢いたくて、子供の頃リアルタイムで見に行った映画だった。

それがどうだ!

初めから終わりまで男と女の憎悪と宿怨のサル・カニ合戦、そのドロドロさ加減には辟易してしまった(音楽の「熊本弁でフラメンコ」、これは殉教者精神によって笑って許しましょう)。

よくもこのような毒々しいドラマで少年の純真な心を傷つけましたね、木下恵介さん!

これ一本で、私の高峰秀子への慕情は一気に冷め、むしろキライな女優になってしまった。


またや、映画の1時間28分19秒ごろ、6車両ほどを牽引する蒸気機関車が阿蘇の大地を駆ける。

それが、あれれ~?! そこには信じられない光景が。

次のシーンでは、それが4両になっている。 いつの間に解結(切り離し)したのだろうか。
えぇ、なんでぇ?

4両シーンははっきりと「4」とカウントできるが、最初のシーンは遠景なうえ、「第五章」という字幕が重なるので、断定はできないが、どう見ても4両より長く、6両ぐらいに見える(誰か別の人が確認してください)。

赤松 幸吉 | URL | 2018-05-23(Wed)19:33 [編集]


Re: 永遠の人

赤松様 熱いコメントありがとうございます。 また コメント承認並びに返信も遅くなり申し訳ありません。

さて木下恵介監督は現役の山田洋次監督と同様 鉄道シーンを作品の中で効果的に使っていると小生も思います。

高峰秀子さんは多様な役を演じた名女優ですから、木下監督はともかく高峰秀子さんは許してあげてください。

第五章の部分と C58 426蒸機の編成は確かに違いますが、当時はそこまでの拘りをもって撮影・編集を行っていなかったと思います(細かいところにツッコミを入れる小生が言うのもなんですが・・・)

テツエイダ | URL | 2018-05-27(Sun)22:45 [編集]