
秋田の田舎から小説家になる夢を持って出稼ぎに上京した秋元カネ子(笹森礼子)が、生来の勝気から行く先々で騒動を起こすコメディ風 青春映画です。
冒頭 秋田の蔦谷駅(架空駅)から、母親 お冬(田中筆子)や4人の姉妹に見送られて上京する場面があります。
腕木式信号機が青になり、

カネ子が汽車のデッキへ急ぎます。

デッキで皆と話す内 汽笛と共に C11形蒸機に牽かれた列車が動き出します。

お冬がへそくり三千円カネ子に渡し、

姉妹が其々別れの言葉を掛けて励まします。

母と姉妹は話しながら列車の動きに合わせてホームの前方へと走ります。上野行のサボを架けた列車のデッキでは、明るい顔で手を振るカネ子なのでした。

見送る母と姉妹はホームの端で止まり、いつまでも手を振っています。

この後タイトルが入り、クレジットのバックに D51形蒸機の各種走行シーンがあります。

最後は上野駅高架ホームへ到着する、常磐線の C57形らしき蒸機牽引列車の姿があります。

従兄の八代由造(川地民夫)に上野から佃島の親戚宅へ案内される道中、都電1系統(品川駅~上野駅)に乗ったのか銀座四丁目付近で対向する上野駅行 8000形とすれ違います。

翌日 カネ子は憧れの同郷小説家 草田次郎(永井智雄)に会う為、東急電鉄 東横線 田園調布駅へやって来ました。

しかし突然押し掛けたので、ここでも ひと騒動起こすのでした。
その後も住み込みで働いた美容院を喧嘩で辞めることになり、更に由造の紹介でキャバレーで働こうとしますが失敗します。
由造と帰ると秋田の実家から「母倒れる すぐ帰れ」と電報があり、急いで帰る様子を汽車が行き去る姿で表す場面があります。

PS.
秋田の蔦谷駅としてロケが行われたのは、(99.警察日記) (123.汚れた肉体聖女) (147.胎動期 私たちは天使じゃない)でお馴染みの五日市線 西秋留駅(現 秋川駅)です。
雰囲気ある地方駅風の駅舎と現役の蒸機が走り、セットでは表現し得ない ローカル線の駅として当時 都内に残された最後の好ロケ地だったと思われます。
なお 当時旅客列車の多くはDC化されていたのですが、ロケ前年のダイヤでは朝夕上下で 11本の C11が牽引する旅客列車がありました。
その内 西秋留 8:41発の武蔵五日市行 317レが逆方向なので空いていたと思われ、上野行のサボを架けてもらい ロケ用の列車としたのかもしれません。
本作公開の3か月後に電化された五日市線ですが 前年の11月頃にロケが行われたと思われるので、未だ工事開始の様子が無く 蔦谷駅としての装飾を施して東北の雰囲気にあふれた撮影が行われた様です。
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