fc2ブログ

日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

254. 少女

1961年1月 日活 製作 公開   監督 堀池清

秋田の田舎から小説家になる夢を持って出稼ぎに上京した秋元カネ子(笹森礼子)が、生来の勝気から行く先々で騒動を起こすコメディ風 青春映画です。

冒頭 秋田の蔦谷駅(架空駅)から、母親 お冬(田中筆子)や4人の姉妹に見送られて上京する場面があります。
腕木式信号機が青になり、
254-1.jpg
カネ子が汽車のデッキへ急ぎます。
254-2.jpg
デッキで皆と話す内 汽笛と共に C11形蒸機に牽かれた列車が動き出します。
254-4.jpg
お冬がへそくり三千円カネ子に渡し、
254-5.jpg
姉妹が其々別れの言葉を掛けて励まします。
254-6.jpg

母と姉妹は話しながら列車の動きに合わせてホームの前方へと走ります。上野行のサボを架けた列車のデッキでは、明るい顔で手を振るカネ子なのでした。
254-8.jpg
見送る母と姉妹はホームの端で止まり、いつまでも手を振っています。
254-9.jpg
この後タイトルが入り、クレジットのバックに D51形蒸機の各種走行シーンがあります。
254-20.jpg
最後は上野駅高架ホームへ到着する、常磐線の C57形らしき蒸機牽引列車の姿があります。
254-12.jpg

従兄の八代由造(川地民夫)に上野から佃島の親戚宅へ案内される道中、都電1系統(品川駅~上野駅)に乗ったのか銀座四丁目付近で対向する上野駅行 8000形とすれ違います。
254-13.jpg
翌日 カネ子は憧れの同郷小説家 草田次郎(永井智雄)に会う為、東急電鉄 東横線 田園調布駅へやって来ました。
254-14.jpg
しかし突然押し掛けたので、ここでも ひと騒動起こすのでした。

その後も住み込みで働いた美容院を喧嘩で辞めることになり、更に由造の紹介でキャバレーで働こうとしますが失敗します。
由造と帰ると秋田の実家から「母倒れる すぐ帰れ」と電報があり、急いで帰る様子を汽車が行き去る姿で表す場面があります。
254-15.jpg





PS.

  秋田の蔦谷駅としてロケが行われたのは、(99.警察日記) (123.汚れた肉体聖女) (147.胎動期 私たちは天使じゃない)でお馴染みの五日市線 西秋留駅(現 秋川駅)です。

  雰囲気ある地方駅風の駅舎と現役の蒸機が走り、セットでは表現し得ない ローカル線の駅として当時 都内に残された最後の好ロケ地だったと思われます。

  なお 当時旅客列車の多くはDC化されていたのですが、ロケ前年のダイヤでは朝夕上下で 11本の C11が牽引する旅客列車がありました。

  その内 西秋留 8:41発の武蔵五日市行 317レが逆方向なので空いていたと思われ、上野行のサボを架けてもらい ロケ用の列車としたのかもしれません。

  本作公開の3か月後に電化された五日市線ですが 前年の11月頃にロケが行われたと思われるので、未だ工事開始の様子が無く 蔦谷駅としての装飾を施して東北の雰囲気にあふれた撮影が行われた様です。

関連記事

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

少女

これは名匠・堀池清監督の愛すべき珠玉の小品。

あれこれと色々な会社に就職するがそのたびに些細なことからやめてしまう少女像(笹森礼子)をスケッチ風に活写した映画で、取り立てての「出来事」や「事件」は起こらず、あっと言う間に映画は終わってしまう。

59分のシスター作品だが、当時の日活はこのような併映作品に名作もどきが多かった。

笹森礼子は裕次郎や旭の恋人役には余りしてもらえず、主人公の「妹役」が普通だった悲劇の女優で、これは彼女の唯一の主演作品ではないか。


「駅(秋田の蔦谷)として当時 【都内】に残された最後の好ロケ地だった」という記述は一瞬誤植ではないかと思った。

例え昭和36年であっても、東京に蒸気機関車が運行するこのような鄙びたローカル駅があったとは信じられない。

五日市線 西秋留駅(現 秋川駅)は「警察日記」「汚れた肉体聖女」「胎動期 私たちは天使じゃない」でもロケ地として使用されたらしい。

駅舎の写真(「少女」の7枚目)と「私たちは天使じゃない」の4枚目を比較してみると駅舎はまったく同一。

ミニ石階段(2段)や柱・窓ガラスなど、特にプラットフォームに立っている場内標識(列車停止目標?)が同じ場所にある。


「警察日記」(2枚目)はこの駅舎を反対方向から捉えているので、断定できないが後方の樹木などからして西秋留駅とわかる。

「汚れた肉体聖女」は駅舎が一部しか映っていないので確認できないが、それらしい。

赤松 幸吉 | URL | 2018-03-17(Sat)10:17 [編集]


Re: 少女

 赤松様 コメントありがとうございます。

昔の映画に詳しい赤松様でも この作品へのコメントは無いと思っていましたが、流石 赤松様ですね メイン作品の併映作品でも詳しい解説! 恐れ入ります。

小生もかなり前に観て鉄道シーンが短いので取り上げてこなかった作品ですが、別れの季節に合わせて鉄道シーンの王道(見送り場面)特集を組んだので取り上げてみました。

現在の秋川駅は五日市鉄道時代の駅舎が残っていた当時と、あまりにも変わったので想像もつかないですね。

テツエイダ | URL | 2018-03-18(Sun)12:17 [編集]