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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

249. 乳母車

1956年11月 日活 製作 公開   監督 田坂具隆

赤ちゃんまでいる父の愛人に会った桑原ゆみ子(芦川いづみ)が、崩壊した家庭の修復と赤ちゃんの幸せを願い 愛人の弟と共に奔走する姿を描いた映画です。

友人から愛人の存在を聞いた ゆみ子は 母 桑原たま子(山根寿子)に問うと、住み家まで全て知りながらも静観の様子。そこで ゆみ子は 東急電鉄 大井町線 九品仏駅を降りて、母から聞いた愛人 相沢とも子(新珠三千代)宅を訪ねる場面があります。
1960年に改築される前の九品仏駅舎から ゆみ子が降りてきて、
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踏切で待つ前を 3000系電車が通り過ぎて行きます。
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僅か2連で、先頭は 3450形の 3491らしき車両です。現在同様 上下線の間に駅舎が有り、外へは踏切を必ず渡る構造です。

次に とも子の娘 まり子(森教子)への帽子を手土産に九品仏へ行った時、玄関に父 桑原次郎(宇野重吉)の靴を見付けて 慌てて駅に引き返します。
駅前の踏切で とも子の弟 宗雄(石原裕次郎)に会ったので、「父が来ているので今行くのははダメ」と 姉の家に行こうとしている宗雄に告げて止めます。
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娘のゆみ子まで愛人 とも子の肩を持つ様に感じた たま子は、夜遅く帰宅した桑原を袖にして実家へ帰ってしまいます。更に遅く帰宅した ゆみ子は、鎌倉駅まで母親を追い駆けて 何とか家庭崩壊を押し止め様とするのでした。
鎌倉駅の改札口を走り抜けて
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急ぎ階段を駆け上がると、ホームで電車を待つ母 たま子に追い付きました。たま子を引き戻そうとする ゆみ子ですが、
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硬い決心をした たま子を説得することはできません。
そこへ横須賀線 70系電車が到着し、
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2等車に乗った母を茫然と見送る ゆみ子です。
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セットらしき 2等車内では、呆然とした様子の たま子です。
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改札口へ戻ると遅れて父 次郎が駆けつけ一緒に外へ出ると、終電だったのか構内が消灯されてゆきます。
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桑原との別れを切り出そうとした とも子は、急に仕事帰りの桑原に寄ってもらいます。夜 九品仏駅の改札口で、とも子は桑原を待っていました。
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その後 花屋でバイトする宗雄の背後を、旧塗装の都電 1200形らしきが通過して行く場面もあります。
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桑原家崩壊の責任を感じた とも子は、桑原と別れて弟の下宿先へ引っ越します。ゆみ子と宗雄は協力して まり子の幸せを第一に応援しようと、関係者全員を とも子の移転先へ集めて 善後策を話し合います。
その帰り道 ゆみ子は母 たま子とタクシーに乗って、母の働くバーへ向かいます。タクシーはネオン煌めく銀座界隈の晴海通りを、月島方面に向かう都電11系統(新宿駅前~月島通八丁目)の電車を追い越して走ります。
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PS.

鎌倉駅で ゆみ子は母親が乗った上りの終電車を見送り、改札口を父親と一緒に出ると駅構内は消灯となりました。 鎌倉駅から当時の上り終電は、23:38発の横浜行です。
ところが下り電車はこの後 23:40・0:10発の久里浜行があり、終電は 0:42発 逗子行でした。つまり 上りの終電から一時間以上後まで下り電車があるので、消灯はBGMと共に映画の中での演出でしょう。

それにしても 女性 登場人物の名が、皆( ひらがな表記+子)なので文章にすると分かり難いですね。


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コメント


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鎌倉駅のシーンは

テツエイダさま、新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

画像上から4枚目の鎌倉駅改札は、江ノ電から国鉄線への乗り換え改札です。したがって位置は西口側となります。
5、6枚目の画像、右奥に「テアトル鎌倉」という映画館のネオンが見えますね。ここは現在1階にファミマが入ったマンションビルになっていますが、当時西口前にあった映画館です。したがって入線している70系は、上り東京行きですね。
2等車車内は、やはりセットと思えます。サロ75形とすれば、窓は二段ですし、サロ85としても、窓下のへんなところに押さえ縁が縦に付いているのが不自然です。
車内の下のカット、右奥に見える電照看板が「銀座アスター」と読めそうな気がするので、おそらくこちら側は西口側と思えますが、現在銀座アスターは江ノ電の駅脇にあるので、位置が移転しているのかはっきりしませんでした。改札付近の広さからすると、西口で合っていると思うのですが。

失礼いたします。

すぎたま | URL | 2018-01-06(Sat)02:56 [編集]


Re: 鎌倉駅のシーンは

 すぎたま 様  おめでとうございます こちらこそ本年も宜しくお願いいたします。

鎌倉駅構内の詳しい解説 ありがとうございます。 ゆみ子が駆け込んだ改札は、江ノ電から国鉄線への乗り換え改札でしたか。
なるほど ゆみ子は改札を抜けると、右に曲がって階段を下りて横須賀線ホームへ向かいますね。

次回は昨年8月に(238.女のみづうみ)のコメントで予告した通りに、250回記念なので(ゼロの焦点)を取り上げます。

テツエイダ | URL | 2018-01-06(Sat)09:20 [編集]


乳母車

裕次郎は初々しく颯爽(さっそう)としており、この映画や「陽のあたる坂道」の頃が一番魅力的だった。

一方、芦川いづみもまるで絵本の中の小妖精のようで、花なら蕾の頃、愛くるしいカップルには目を細める。

九品仏浄真寺は松竹映画「愛染かつら」(62年 中村登監督 岡田茉莉子、吉田輝雄)のロケ地となった場所で、愛染かつらの樹や愛染堂などのシーンがここで撮られました。

聖地巡礼(ロケ地探訪)などがブームとなる何十年も前に(勿論、九品仏駅舎が改築されたずっと後のことですが)、「愛染かつら」大ファンの小生は東急電鉄 大井町線の九品仏駅や浄真寺を実際に訪れています。

同じく東京でありながら、ここら辺りは都心の喧噪からは遠く離れ、その静謐な雰囲気に驚いた記憶があります。

当時に「乳母車」もここでロケされていると知っていたら、もっと色々と見学したであろうのに、今となっては残念です。


赤松 幸吉 | URL | 2018-01-06(Sat)18:38 [編集]


Re: 乳母車

赤松様 新年初のコメントありがとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

かつて九品仏浄真寺にいらしてそうで、1962年作の松竹「愛染かつら」のロケ地とは知りませんでした。

「乳母車」の公開から60年以上たった現在では、当地の様子もかなり変わっているのでしょうね。

テツエイダ | URL | 2018-01-06(Sat)19:22 [編集]


冒頭のプールは

映画の冒頭で、白い水着姿の芦川いづみ様がプールから上がってきます。
あれはブリジストンの社長石橋氏の邸宅だそうです。ということは、鳩山由紀夫元首相の母親鳩山安子様のご実家というわけです。さすがに鳩山家ですね。

さすらい日乗 | URL | 2018-01-07(Sun)19:40 [編集]


Re: 冒頭のプールは

さすらい日乗 様  コメントありがとうございます。

ゆみ子は重役令嬢という設定なので、プール付き邸宅住まいの友人が釣り合うという考えなんですかね。



テツエイダ | URL | 2018-01-08(Mon)13:15 [編集]