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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

240.サザエさんの青春

1957年12月 東宝 製作 公開  カラー作品   監督 青柳信雄

サザエさん(江利チエミ)とフグ田(小泉博)は婚約しますが、フグ田の一年間九州転勤により結婚延期となったので 花嫁修業を始めます。その間の数々の失敗・ドタバタを描く、シリーズ3作目のコメディ映画です。

前半 サザエさん一家がピクニックに出掛けることになりますが、父親の磯野松太郎(藤原釜足)を始め 次々と忘れ物を思い出しては取りに帰る始末です。
サザエさん・父親・母親(清川虹子)・カツオ(白田肇)・ワカメ(松島トモ子)・ノリオ君(藤木悠)の一行6人が漸く駅に到着すると
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(本日スト決行中)の立て看板があり 改札口前に机が置かれて駅員らしき男が来た人に説明しています。
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駅舎に掲げられている筈の駅名は、映らないように撮影されています。でも周囲の様子と看板等から、この駅は小田急電鉄 喜多見駅と思われます。
直前の商店街シーンは東宝撮影所最寄りの成城学園前駅付近と思われるのに、何故かしら駅前のシーンでは喜多見駅を使っている様です。その後 フグ田がタクシーで現れ、サザエは母親から弁当の入ったバックを渡され(6人分?)出掛けます。

中盤 花嫁修業の一つとして家計管理を担うサザエですが 保険屋の口車に乗せられてしまい、赤字となった家計の穴埋めにデパートでアルバイトすることになります。
いよいよ初出勤の日 スーツにハイヒール姿で、軽やかに歌い踊りながら喜多見駅へやって来ます。折しも小田急電鉄の茶色い4連電車が、出発して行くところです。3扉の車両ですが、形式は不明です。
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サザエが駅舎直前に来た時 一瞬 駅舎上部の駅名板の一部分が映り、「ENOKI-ZAKA」と書かれた部分が見えます。作中 カツオが通っている学校が、「榎坂学園」らしいので、この地を榎坂という架空名に設定している様です。
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改札口を入って 上り線ホームへ階段を上がると、小田急電鉄標準形三角屋根駅舎や下りホームへの構内踏切が映っています。この頃は未だ跨線橋がありませんし、ホームも4連用の様です。
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サザエは更にホームを進むと、ベンチに置かれた帽子の上にいきなり座ってしまいます。
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持ち主の男はそっと取り返そうとしますが、怪しい動きにサザエは怒り出します。
でもお尻で潰した帽子を見て、慌てて逃げるように到着した電車の前方に乗り込むサザエなのでした。
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ベンチの後方に「大和学園」の看板がありますが、これは現在 駅の東に在る( 聖セシリア喜多見幼稚園 )と思われます。

続いて 72系らしき山手線内回り電車が、新橋~有楽町を走行する姿が映ります。山手線と分離運転化されて一年後の、南行 京浜東北線電車も映っています。
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そしてカメラが左へ回ると、建設中の東京高速道路の高架線が晴海通りとクロスする所で止まっている部分が映っています。東京初の高速道路で、この映画公開の1年半後に開通します。
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サザエは銀座三越で働く様なので、小田急電鉄で新宿へ出て 山手線か中央線+京浜東北線で有楽町まで来ていたのでしょう。



PS.
   本作からカラー作品となり、東宝としても当たり作として長いシリーズ作品に決めた様な筋立てになっています。 鉄道シーンとしては短いのですが、現在とは隔世の感がある喜多見駅周辺・ホーム等 印象深い作品です。
  喜多見の名が入った看板を映しておいて、何故 駅名を架空名にしたのか不思議ですね。また表札の父親名が磯野波平ではなく 松太郎となっていたのは、原作でもこの頃は表記が無いので 脚本家が付けたのかもしれません。
  作中で松太郎は女房を長年「おい」とか「お前」と呼んでいたので 名前を忘れてしまい、サザエから「フネ」であると教えてもらい 当人から呆れられる場面があります。原作者もここから母親の名を「フネ」としたのかも・・・

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