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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

236.朝を呼ぶ口笛

1959年3月 松竹 製作 公開   監督 生駒千里

高校進学資金の為 新聞配達のバイトをしている吉井稔(加藤弘)は母親の手術費用の為 進学を諦めようとするが、職場仲間の協力と励ましで 再び夢に向かって進み始める 青春映画です

中盤 吉井の職場仲間で大学の夜間部に通う 須藤隆司(田村高廣)は、交際している京成バス車掌の前川静子(瞳麗子)・その兄 前川一郎(山内明)と上野で待ち合わせます。
先に来ている前川兄妹が見ている先には、中央通りを上野公園電停から上野駅南口電停へ向かう1系統(品川~上野駅南口)24系統(須田町~福神橋)30系統(須田町~寺島町二丁目)何れかの6000形車両らしきが見えます。
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続いて 浅草方面をバックに3人が話す場面では、上野駅高架ホームに到着した列車の機回しでしょうかEF58形電機が浅草の仁丹広告塔と共に映っています。
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須藤は二人に就職試験を受けた本命会社から不採用の通知が来た事を告げ、「静子さんを幸せにする自信が無くなったので秋田の鉱山会社に一人で行く」と話すや注文品を待たずに食堂から飛び出して行くのでした。

次に踏切の警報器が映り 3両編成の京成電車がゆっくりと通過して行きますが、
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まだ踏切上に車体が有る内に 遮断棒は上がっていきます。
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そして元気のない須藤が渡って未舗装の道路を歩いて行きます。
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電車が進んだ右方向には小さな駅舎の京成押上線 荒川駅が隣接しています。この駅は高架化工事中の1994年に現在の八広駅へと改名されています。
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左方向には荒川を渡る低い橋梁があり、1991年にはタンカーが橋桁に衝突して運休となった事故がありました。翌年から橋の架け替え・高架化工事が始まり、1999年9月に現在地に移転しています。
荒川駅は 1963年4月に公開された「下町の太陽・監督 山田洋次」で登場して有名ですが、1978年12月 同じ松竹から公開された「俺は上野のプレスリー・監督 大嶺俊順」でも主役の友人の勤め先として登場しています。

その後 土手下にある新聞販売店に帰った須藤は、進学を諦め 就職の為 店を辞めようとしている吉井を見るや土手上に連れ出して 進学するように説得します。
二人の背後では 京成本線の3連電車が、京成綾瀬川橋梁を渡って京成関屋へと向かっています。
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続いて大きな荒川を渡る京成荒川橋梁は、1931年3月完成以来 86年間京成電車を支えています。
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周辺の土地は地盤沈下が激しく 堤防の嵩上げ工事をするも、両側の線路接点部分が水害の弱点となっています。そして橋の老朽化もあって、現在 架け替え工事が準備段階まで進んで進行中です。
吉井・須藤が働く新聞店は荒川駅近くにあるのですが 二人が座っているこの場所は、葛飾区小谷野町 現在の堀切4丁目1番地付近の荒川・綾瀬川間にある土手の上で 1.8㎞程離れています。しかし風景重視のロケ地故に、詮索は控えさせて頂きます。
この映画で 吉井のことを何かにつけて励まし・応援する女学生 刈谷美和子役を映画初出演の吉永小百合が演じています。日活映画専属契約で大活躍した彼女も、初出演は松竹映画なのでした。








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コメント


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ラジオやテレビにも出ていたのですが、その理由は

吉永小百合の父吉永芳之氏は、東大出で外務省にいたのですが、「ノン・キャリア」で出世は無理とのことで戦後辞め、仲間と出版社を起こすのですが失敗し、吉永家は貧困となり、小百合は幼い時から芸能界で働くことになります。

ラジオ東京のラジオ、さらにテレビの『赤胴鈴之助』に出たほか、新東宝の『まぼろし探偵』などにも出ます。       
そして、『朝を呼ぶ口笛』で、松竹というメジャー映画にも出ます。
それは、家の事情だったようで、一家は吉永小百合に依存していたのです。
ですから、彼女が後に岡田太郎氏と結婚することになった時の、父親との確執にも、この経済問題があったと思います。
その意味で、彼女は非常に偉い女性だと思います。

さすらい日乗 | URL | 2017-07-16(Sun)09:46 [編集]


Re: ラジオやテレビにも出ていたのですが、その理由は

さすらい日乗 様 コメントありがとうございます。

小生もテレビドラマの「まぼろし探偵」を見ていたので、少女期の吉永小百合さんの記憶はあります。

いいところのお嬢さん的なイメージで見ていたので、後年伝え聞いた家庭の事情は 意外な一面として感じました。

当ブログで出演作は少ないのですが、(21. 疾風小僧・32. 拳銃無頼帳 不敵に笑う男)等 初期の作品が多いですね。

テツエイダ | URL | 2017-07-16(Sun)10:44 [編集]


朝を呼ぶ口笛

この作品はリアルタイムで見た人も多分超少なく、吉永小百合の銀幕デビュー作でなければ、DVDも発売されることなくチャンネルで再放映されることもなく、誰からも忘れ去られた映画のままだっただろう。

62分ほどの低予算・マイナー的だが心温まる小品で、「愛と友情と善意」のオンパレードが織りなす文部大臣さまご推奨の教育映画で、決して足を投げ出したり寝そべったりして、この映画を鑑賞しようとすることなかれ!

この映画は身を清め、襟を正し、正座して鑑賞すべし。
でないと罰が当たりますよ。
物語が展開するのは不思議な場所で、そこには腹黒い人も、意地悪い人も、嘘をつく人もそんな悪人は一人もいない善男善女ばかりが集う町なのです(こんな町に私も住みたい)。

一番心に残ったシーン。
少年なら誰しも経験したことのある、良家の令嬢(吉永小百合)への密かな憧憬とその別れをラストで切なく描いている。


荒川駅や京成荒川橋梁付近はロケ地として昭和30年代、40年代の映画で何度も見たような記憶があります(勿論、「下町の太陽」でも)。

ブログでは何故かさらりと流してありますが、唖然とする写真(上から四枚目)があります。
まだ踏切上を電車が通過中に 遮断棒は上がっていくのですね。

これには驚いた。現在では電車が通過した後もしばらくの間は遮断機は上がりません。

粗忽な者やよそ事に気を取られている人なら思わず踏切内に足を踏み入れてしまうのではないか。
昔はこんな危険きわまりないことが平然と許されていたのだろうか。

赤松 幸吉 | URL | 2018-04-21(Sat)16:20 [編集]


Re: 朝を呼ぶ口笛

 赤松様 長文のコメントありがとうございます。

刈谷美和子(吉永小百合)の父親は会社のエリート社員なので、単身赴任などの現在の風潮と違って一家揃って転勤して行くのでしょう。

 また当時は遮断機付きの踏切はまだ少数派で、警報器付きがせいぜいだったと思います。電車が通過しかかった時点で、遮断棒を上げ始めたのも当時は不思議に思いませんでした。

テツエイダ | URL | 2018-04-22(Sun)22:43 [編集]