
休暇で東京へ向かう大阪の刑事 北五平太(池部良)と女スリの塩沢さや(越路吹雪)が上り特急列車に乗り合わせ、小説家も絡んだ珍道中を描くラブ・コメディ映画です。
1926年 日活作のリメイク作品であり、1960年にも大映で再度リメイクされています。
序盤 EF57形電機が牽く列車が映り、(大阪発東京行 特急)とテロップが入ります。

続いて 食堂車で小説家 坂々安古(山村聡)と出版社々員が、ビールとツマミを並べたテーブルを挟んで 古来 美人の泥棒は存在しない等と話をしています。

その話を通路を挟んだ向かいのテーブルで聞いた北は、イスを持って移動してその論争に加わり「美人の泥棒は実在します」「この汽車に乗っているかもしれない」と話すのでした。

特別二等車内では新聞を読む岡田六右衛門(見明凡太郎)の足に、向かいの席に座る女の組んだ足先が揺れる拍子に触って気になります。相手は若い美人なので、鼻の下も伸びています。

回転式リクライニングシートなのに何故か向い合せにして お互い足を組んでいるのでトイレに立つにも不便なのですが、不自然でもこうしないと話が展開しないのです。
7号車が特ロの列車は 32ㇾ急行阿蘇が該当しますが、セットか特別二等車を使っての撮影と思われます。


さやは弟分の野呂(伊藤雄之助)と示し合わせて車内灯を操作し、トンネルに入っても点灯せず真っ暗です。その間に岡田から財布をスリ取って、EF57電機牽引の列車が名古見(架空駅)到着と共に逃走します。


他にも車内ではスリ被害の男がいたので、北は動き出した列車から飛び降りて急ぎ改札口へ向かいました。ホームにある便所横で野呂がさやの荷物を抱えています。どうやら中で着換えている様です。
野呂の背後には、電車らしきが停車しています。この名古見駅場面は 三島駅を使ってロケが行われたそうなので、駿豆鉄道本線(現 伊豆箱根鉄道駿豆線)の電車の様です。

改札の外へ出た北ですが、さやの姿はありません。ホームを見ると、東京行普通列車に乗り込む女の後ろ姿が見えます。

そこで強引に改札を突破して、連絡地下道を通らずに線路を斜めに走り抜ける北でした。

後ろから改札の駅員が追い駆けて来ますが、素早くホームに上った北は東京行列車の最後部デッキに飛び乗ったのでした。

前方の窓からは、野呂がこの様子を見ていて落胆しています。

北は車内の便所で、農婦に変装した さやを見付けます。スリを否定する さやからは 故郷の下田へ行って、両親の法事を盛大に行って父親をスパイ容疑で追い詰めた親類の鼻を明かす計画を聞きます。
暫くすると車掌室の前で、スリ騒動が起きてます。北が車掌室に入ると、腹痛を起こして運ばれたという さやが椅子に寝ています。この女がスリだという説明を、富士川橋梁通過の騒音の中でします。

さやは隙を見て男からスリ取った財布を窓から捨てますが、お札も風に飛ばしてしまいます。そしてスリの疑いを裸になって晴らすからと、車掌室で北に確認をさせるのでした。
列車が原駅(劇中の駅名は浜駅)に到着すると、

大きな風呂敷包を持った老婆(三好栄子)が乗って来ます。さやは野呂が座っていた席を譲ったり、親切に接してあげます。
その時突然列車が急停車します。

車掌が前方に走って行き「線路が故障したので隣の田子の浦駅まで歩いて下さい」と告げたので、


皆唖然としながらも 暑い中 線路上を歩いて行きます。
途中からは老婆をさやが背負い、北が風呂敷包を持って歩きます。

更に北とさやは交代して老婆を背負い、漸く東田子の浦駅へ皆が到着することができました。

このロケは実際 東海道本線 鈴川(現 吉原)~東田子の浦の線路上で行われたそうで、国鉄職員が付き添って通過列車の間合いを見計らって撮影した様です。多人数なだけに、現在では不可能でしょう。
井戸水を飲んだりして待つと、電機に牽かれた列車が到着します。皆が急いで乗り込むと、さやが時計をデッキから落としてしまったと北に告げます。それを聞いた北は、デッキから身を乗り出して捜します。

更に線路に降りて、レールの内側を覗いて遂には客車の下に潜り込んで時計を捜します。

その時 電機の汽笛が鳴り、ゆっくりと列車が動き出しました。北は慌てずレールの間に身を伏せて、列車をやり過ごしました。

この場面 最低地上高の高い旧形客車とはいえ 池部良 本人が挑んだスタントだそうで、三島駅構内に用意された3両の客車を使って色々な角度からスマートに撮影されています。
北の頭上を通過した列車は、加速しながら走り去って行きました。

さやに騙され 東田子の浦駅に取り残された北は、思案に暮れますが財布が無いことに気付いて更に怒りが増します。
しかし北の財布を掏ったのは背負われた時の老婆であり、さやも法事の費用を全額を掏られたのでした。

その後 熱海と下田で一騒動あり、さやは人生を清算するつもりで北の目の前で万引きをして捕まえてもらいます。そして大阪へ向かう列車の三等車には、北とさやが仲良く並んで座っています。
前の席の男が持つ新聞には(明日からの連載小説 女掏摸 坂々安古)と告示されているのを見た北は呆れた様子です。さやが足を組もうとして北の足に当ると、北はさやの足を引っ叩きました。

それでさやは、足を縮めて大人しくする様です。さやが行く末を心配すると 北は「僕は未だ刑事を辞める決心がつかない」と言うので、二人の将来に希望は持てる様です。
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