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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

216. 爆弾を抱く女怪盗

1960年2月 新東宝 製作 公開   監督 土居通芳

終戦直後の中国で父親の財産を社員の立花竜太郎(沼田曜一)に横領された三ノ宮雅子(高倉みゆき)が、元執事達と一緒に復讐を図るアクション映画です。

序盤 蒸機の汽笛らしきが聞こえるが、電機が牽く旧客列車の走行シーンが先ずあります。
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続いて 夜の東海道本線を下る急行列車の二等車内を、鉄道公安官 朝倉伸男(菅原文太)が巡回しています。
殆どの乗客は寝静まっていて、走行音と朝倉の靴音だけが聞こえています。例によって新東宝独特の客車内セットでの撮影で、肘掛と枕に白カバーを掛けて 二等車に仕立てています。

朝倉がデッキへと出て行った後 雅子の指示で佐伯慶一(九重京司)と島崎譲司(御木本伸介)が、寝ている吉沢文雄(岬洋二)の手元から鞄を そっと抜き取ります。
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その時突然 ドアが開き 朝倉が現れ 逃げる二人を追い掛けますが、雅子が立ち塞がって「あんなのを捕まえたって何にもなりゃしませんよ」と言って朝倉の手を掴みました。

鞄は雅子の席に投げ捨てて行ったので吉沢の元に戻り、雅子は専務車掌室に連行されます。
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ところが室内で朝倉は麻酔薬を嗅がされ、雅子に逃げられる失態を演じてしまうのです。
続いて 汽笛と共に列車は、(赤澤隧道)と記されたトンネルに入ります。入口が洞門形であることから、東海道本線 根府川~真鶴に 1972年迄あった旧線の赤沢トンネルと思われます。
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後半 立花の組織に潜入していた佐伯の娘 星野久美(三条魔子)は聞き耳を立てていたのがバレ、急いで事務所から逃走しますが 河島高光(渡辺高光)に追い掛けられます。
そして遮断機の閉まった踏切を強引に潜って更に逃げますが、河島は京浜急行電鉄 デハ600形 601浦賀行電車が接近していたので通過する迄 待つことになりました。
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PS.
 本作は国鉄の3等級制末期に製作されたので、シートに白カバーを掛けて並ロ二等車に仕立てています。1958年に並ロは急行列車の二等車から外され、全て旧特ロシートになったので少々苦しい設定です。
新東宝映画では このセットを使って車内シーンの撮影をしていました。当ブログでは(51.黄線地帯)(91.女死刑囚の脱獄)でもこのセットが使われた様子を見ることができます。

京急デハ600形 601は 1953年製で、クハ650形 651と組んで2連運行でした。500形に続く当時流行の正面2枚窓の湘南形で、本編では浦賀行の先頭で走っています。
その後 1965年に中間車サハ480形 492へと改造され、他の初代 600 ・400形と共に4連を組んで 400形へと改番されました。そして晩年は支線で活躍しましたが、1983年までに全廃されています。
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コメント


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赤澤トンネル

赤澤トンネルは窓のあるトンネルとして東海道を下るときの楽しみでした。岩波写真文庫「汽車の窓から」には展望車デッキから撮影したと思われるトンネル内の写真が、西尾克三郎ライカ判写真全集?には海側から見たトンネル全景と列車の写真があります。この映画ではトンネル進入後の場面はどうなっているでしょうか。規則正しく窓があるので、車内からは海が見えたように記憶しています。

特別急行列車 | URL | 2016-09-16(Fri)21:04 [編集]


Re: Re: 赤澤トンネル

> 特別急行列車 様 コメントありがとうございます。
>
> この映画では根府川側から進入しているので、角形洞門入口部分の連続垂直柱が映った後 馬蹄形洞門が分かりますが ここからは開口部が塞がれていて外は見えません。 そして入口から 200m位進んだ所でこの場面は終わっています。
>
> 小生も(急行いでゆ)に乗車した折 海側の開口部分はすべて開いていたと記憶していますが、ロケ当時はトンネル上部で工事が行われていた等の事情で塞がれていたのでは?と推察します。

テツエイダ | URL | 2016-09-20(Tue)11:59 [編集]


爆弾を抱く女怪盗

「爆弾を抱く女怪盗」と聞いて、監督や俳優が誰々、どんな筋・内容だとすらすら言える人は極めて少ないのではないだろうか、また、実際にこの映画を見たことのある人も果たして何人いるだろうか。

置き去りにされて日の目を見ないB級作品もひたすら真摯に掘り下げているこのブログには誠に頭が下がる思いです。

新東宝の「秘蔵っ子」三条魔子が(シークレット・フェイス)とクレジットされている。

列車シーンは100%セット、車内を巡回する鉄道公安官(菅原文太)を真上から捉えていますからね。

どのような映画でも乗り物の中で「俯瞰撮影」は興ざめです。

一枚目と四枚目のカットはどんな風なカメラアングルで撮ったのだろうか。
車両からかなり迫(せ)り出していて、架線柱もすぐ眼前に迫っているのにとても危険な撮影だったと思うが。

最後尾のデッキから? いずれにせよ、現在の車両ではこのようなカメラアングルは不可能だろう。

「女死刑囚の脱獄」にも同じようなカメラ構図がありますね。

「爆弾を抱く女怪盗」のタイトルなのに、なかなかその「爆弾(bomb)」が出てこない。

「嘘つき看板(ポスター)」では折り紙付きの新東宝映画だから、このまま爆弾は登場しないのかと思っていたら、ラストになってやっとダイナマイトを体(ボディ)に何本も巻き付けられた高倉みゆきと魔子ちゃんがしどけない姿で御出まし、これで「爆弾を抱く女~」のタイトルと一応食い違いがないのでひと安心。

鉄道公安官の菅原文太がラストではいつの間にか管轄外の海上保安警備挺に乗り込み、大活躍するから、あら、あら、不思議。

赤松 幸吉 | URL | 2019-04-08(Mon)09:15 [編集]


Re: 爆弾を抱く女怪盗

赤松様 コメントありがとうございます。

今改めてこの作品を観ると、低予算の新東宝ながら見ごたえがありますね。
突っ込み処は多いながらも、新東宝独特の面白い作品です。

走行シーンの撮影は、(277.晩春)の様に窓からカメラを出して撮ったのでしょう。

なお鉄道公安官の菅原文太は高倉みゆきに逃げられた失態から辞職し、みゆき達の仲間になったり最後は海上保安官に変身と新東宝流に徹していますね。

テツエイダ | URL | 2019-04-08(Mon)22:31 [編集]


八ツ山橋踏切?

 この京浜急行の踏切はどこでしょうね。
 遮断稈ではないワイヤー式の開閉装置で一番に思い出すのは八ツ山橋です。ですが廃止されたのがずっと早かった川崎駅前(「愛と希望の町」)もワイヤー式だったはずです。平和島駅環七、京浜蒲田環八、横浜周辺など大きな踏切は皆そうだったかもしれません。
 これ以上は映画を観ないと判りません。

大森山谷 | URL | 2022-05-11(Wed)21:41 [編集]


Re: 八ツ山橋踏切?

大森山谷 様  コメントありがとうございます。

確かに大通りの踏切は、ワイヤー式の第一種踏切が多かったですね。
本作の踏切シーンはアップで撮影されているので、ロケ地について特定するのは困難と思います。

テツエイダ | URL | 2022-05-12(Thu)22:41 [編集]