
終戦直後の中国で父親の財産を社員の立花竜太郎(沼田曜一)に横領された三ノ宮雅子(高倉みゆき)が、元執事達と一緒に復讐を図るアクション映画です。
序盤 蒸機の汽笛らしきが聞こえるが、電機が牽く旧客列車の走行シーンが先ずあります。

続いて 夜の東海道本線を下る急行列車の二等車内を、鉄道公安官 朝倉伸男(菅原文太)が巡回しています。
殆どの乗客は寝静まっていて、走行音と朝倉の靴音だけが聞こえています。例によって新東宝独特の客車内セットでの撮影で、肘掛と枕に白カバーを掛けて 二等車に仕立てています。
朝倉がデッキへと出て行った後 雅子の指示で佐伯慶一(九重京司)と島崎譲司(御木本伸介)が、寝ている吉沢文雄(岬洋二)の手元から鞄を そっと抜き取ります。

その時突然 ドアが開き 朝倉が現れ 逃げる二人を追い掛けますが、雅子が立ち塞がって「あんなのを捕まえたって何にもなりゃしませんよ」と言って朝倉の手を掴みました。
鞄は雅子の席に投げ捨てて行ったので吉沢の元に戻り、雅子は専務車掌室に連行されます。


ところが室内で朝倉は麻酔薬を嗅がされ、雅子に逃げられる失態を演じてしまうのです。
続いて 汽笛と共に列車は、(赤澤隧道)と記されたトンネルに入ります。入口が洞門形であることから、東海道本線 根府川~真鶴に 1972年迄あった旧線の赤沢トンネルと思われます。

後半 立花の組織に潜入していた佐伯の娘 星野久美(三条魔子)は聞き耳を立てていたのがバレ、急いで事務所から逃走しますが 河島高光(渡辺高光)に追い掛けられます。
そして遮断機の閉まった踏切を強引に潜って更に逃げますが、河島は京浜急行電鉄 デハ600形 601浦賀行電車が接近していたので通過する迄 待つことになりました。

PS.
本作は国鉄の3等級制末期に製作されたので、シートに白カバーを掛けて並ロ二等車に仕立てています。1958年に並ロは急行列車の二等車から外され、全て旧特ロシートになったので少々苦しい設定です。
新東宝映画では このセットを使って車内シーンの撮影をしていました。当ブログでは(51.黄線地帯)(91.女死刑囚の脱獄)でもこのセットが使われた様子を見ることができます。
京急デハ600形 601は 1953年製で、クハ650形 651と組んで2連運行でした。500形に続く当時流行の正面2枚窓の湘南形で、本編では浦賀行の先頭で走っています。
その後 1965年に中間車サハ480形 492へと改造され、他の初代 600 ・400形と共に4連を組んで 400形へと改番されました。そして晩年は支線で活躍しましたが、1983年までに全廃されています。


