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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 22、 逃亡列車

 1966年12月 日活 製作・配給  カラー作品   監督 江崎実生

 戦争末期 朝満国境の陸軍鉄道大隊に転属してきた有坂大作少尉(石原裕次郎)が終戦となり抗日ゲリラと戦いながら避難民を輸送する鉄道を守ろうとする戦争アクション映画です。

 全編国鉄協力の元 小海線で撮影されたそうです。先ずゲリラに襲われ負傷した機関士に代わって有坂がC56 159を運転し、図佳線図佳駅に到着するシーンがある。
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 模様替えも無く、中込駅そのままで撮影された感じです。しかしソ連軍機による駅構内への機銃掃射シーンは迫力あります。
有坂はその駅で戦友に偶然会い、夜間 機関車前で話しています。
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 その後 野辺山近くに作られたと思われる三道溝駅のセットに有坂がC56 159で到着すると,
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傍らにゲリラに襲われ故障したC56 112が置いてある。
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それから日本降伏 終戦の知らせが入った。
 そしてC56 159も襲われ、使えなくなった。 そこでC56 112を娑婆での仕事の特技を生かして修理し、避難民を乗せ帰国の為輸送船の出る清津へ向かおうとした。

 C56 112は蒸気溜のカバーを外し、テンダーなどに錆色ペンキを点々と付け故障を演出しているかの様にも見えます。
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 三道溝駅にいよいよゲリラが迫るなか漸く修理が終わり 板を積み込んで火入れします。
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避難民を乗せた列車は銃撃戦の中多数の死傷者を出しながら 出発して行きます。
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 ラストシーン 前方の鉄橋にゲリラが待ち構え、爆薬を仕掛け点火したのがキャブから見えました。 
 止まればゲリラに襲われ避難民諸共・・・  強硬突破を図って鉄橋通過中に爆発すれば谷底へ・・・  有坂は一瞬悩みますが突撃を決断し、全速力運転します。

 導火線が燃え尽きる直前 列車は爆弾の直上を通過 直後爆発。
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 列車最後部は爆煙に飲み込まれ橋端の橋桁は谷底へ落下しますが、間一髪 列車は無事鉄橋を渡り切り日本への輸送船が待つ清津へと急ぐのであった。
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 撮影は境川橋梁で行われたようで、特撮シーンも織り込み現代の視点で見ても迫力ある戦闘シーンであると思います。 
 出来れば 9600型SLで撮影したかったのでしょうが、大陸的雰囲気が感じられる小海線 沿線でのロケが秀作へと仕上がっています。

 
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コメント


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アクションムービーの佳作です!

テツエイダ 様

 ED76であります。


小生の母親は、本作の主人公である「有坂少尉」を演じていらっしゃる「石原裕次郎」氏の大ファンであります。「奥様のまき子さんとは同級生なのよ。」という決め台詞を吐き(事実、〇〇二中の同級生だとのことですが、名簿に並んでいるに過ぎないようです)、「鉄」親父とのデートの際も出演作品をピックアップして鑑賞していたようであります(笑)。


 「石原裕次郎」氏は、小生には「太陽にほえろ」の「藤堂課長」役の印象が最も強く残ります。特に、「露口 茂」氏(「赤い殺意」の犯人役)の「山村 精一警部補」とのコンビは秀逸であり、どんな悪でさえも「この2人にはかなわねえだろうなぁ」と思わせたほどでした。しかし、さすがに「狂った果実」に代表される湘南族とは世代が違いすぎますし、「黒部の太陽」などを鑑賞しても・・・という世代です。
 ただ、「石原」氏が持つ「育ちのよさから感じられる人間的明るさ」は、誰しもが認めるところでしょう(「鉄」親父がその部分に嫉妬を感じていたようですが・・・)。事実、本サイトで紹介されている同氏の作品からは、「名家の御曹司」であろうが、「やくざの親分」であろうが、存在感は他のどの役者よりも抜きんでていますし、その「明るさ」がスターたる所以なのかもしれません。


 「逃亡列車」は、第2次世界大戦末期の満州が舞台となっており、昭和20年当時、満州や朝鮮に住んでいた日本人は、ソ連の侵攻に危機感を覚えておりました。様々な書籍等からは、当時の祖国への引き上げに係る様々な悲劇が確認されており、小生正直なところ、言葉が詰まる思いであります。
 ただ、本作はそのような悲劇性を含みつつも、全体的に明朗なタッチで、さほどサスペンスフルという感じではありませんが、かつての「日活」という映画会社の栄光を見せられるような力作であると、小生は考えます。
 祖国への唯一の脱出の手段として、壊れたSL(C56)を独力で修理するに至るプロセスは、映画的なストーリーとして面白く仕上がっています。だらしない人間の集まりと思われた「工藤分隊」。しかしながら、元鉄道員だった「工藤軍曹(時代劇の悪役「玉川伊佐男」氏)」や、時計屋だった「山下一等兵(ネジネジの「中尾 彬」氏)」など、現地にいた頃の特技を生かしながら、有り合わせの材料を工夫する事によって、修理を開始するあたりは興味津々。
 また、彼らの脇を固める「倉吉医師(かつての2時間ドラマの女王の1人「十朱幸代」様)」と、「李元成(名脇役「伊藤雄之助」氏)」という怪し気なヤミ屋など、好演が光ります。そして、ラストのクライマックスである「抗日ゲリラによる鉄橋爆破」のシーンも特撮でしょうが、編集の見せ方からかそこそこの迫力に仕上がっています。


 この映画のロケ地となっている「小海線」(何も言われなければ、「釧網線の清里町あたり」と勘違いしそうです)は、言わずもがな「JR最高標高地点」をめぐる路線であります。制覇したのは、昭和49年の黄金週間。「鉄」親父と信越本線の「田中」にある療養所に入院していた叔母の見舞いの後、「小諸」から「キハ52」に揺られて八ヶ岳連峰を眺めました。ただ、変に期待しすぎたのか、「最高標高地点」もあっという間に通過してしまい、「何だ」という印象でがっかりした記憶がございます。
 「小海線」での特筆は、何と言っても昭和48年に運行された「臨時急行のべやま」でありましょう。「C56」による「小淵沢」から「野辺山」まで1時間20分の力行は、多くの鉄道ファンを集めました。よくも、「1000分の25の急勾配」を登れたなぁという部分も魅力の一つと記憶しております。


失礼いたします。


ED76 | URL | 2022-01-24(Mon)23:44 [編集]


Re: アクションムービーの佳作です!

ED76 様  コメントありがとうございます。

小生も(太陽にほえろ)を見ていましたが、スケールの大きい木暮謙三警視(石原裕次郎)の元で活躍する面々の「西部警察」が好きでした。

本作では国鉄協力の元 使っていない側線を延長して、ホームや駅のセットを作ってC56を乗り入れるという多額の予算を掛けた作品です。

登場する俳優も一癖も二癖もある面々を揃えて、印象深い作品に仕上がっていると思います。

1970年頃 新宿を午前0時半頃に出発する 夜行快速(八ヶ岳高原号)があって、小淵沢から夜明けの小海線を C56に牽かれて野辺山迄走っていていました。
 当時 この列車に乗りたかったのですが、とうとう機会に恵まれず 乗れなかった 苦い思い出があります。

テツエイダ | URL | 2022-01-25(Tue)22:41 [編集]