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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

214.にっぽん泥棒物語

1965年5月 東映 製作 公開   監督 山本薩夫

泥棒が裏稼業の林田義助(三國連太郎)は土蔵破りに失敗して 逃走の途中で、列車転覆事件の犯人に遭遇したことから真実を語ることで被る不利益と平安な生活とで悩むコメディタッチの社会派映画です。

林田は保釈中に拘置所内で知り合った馬場庫吉(江原真二郎)と土蔵破りを図ります。馬場と待ち合わせの杉山駅(架空駅)を出ると、
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駅前では国鉄の人員整理反対署名活動で賑やかです。
駅構内では、8620形らしき蒸機が入換作業中の様です。
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二人で高台から目当ての呉服店を偵察していると、右方向の築堤をD51形らしき蒸機が貨物列車を牽いて豪快に黒煙を吹き上げながら走り抜けて行きます。
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山本監督が前作「松川事件」と同様 佐倉付近でロケを行ったとすれば、総武本線 佐倉~物井の旧線が候補の1つに想像できます。

深夜に大竹呉服店の土蔵破りに失敗した林田と馬場は、線路沿いに逃走する途中で9人の大男とすれ違ったのです。その夜明け 半鐘が連打される音で気付いた林田は、列車転覆事故を知ります。
林田は村人達と走って事故現場へ駆け付けると、停車している列車の最後部では車掌か警官がヤジウマ達を進行 左側へと誘導しています。
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そして最前部へ行くと、C51133 のプレートを付けた蒸機がひっくり返って未だ蒸気を上げています。実際の事故映像の短いカットと煙室扉部分のセットを組み合わせて臨場感を盛り上げています。
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その後 高橋はな(佐久間良子)と結婚して幸せになり 列車転覆事件から10年以上経ったある日、杉山事件弁護団が訪ねて来て 馬場が事件当夜に逮捕された3人とは違う9人の男と会った証言をすると聞いて東京へと向かいます。
上野駅から迎えの車に乗った前を都電8000形らしきが走っています。
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保釈中に起こした土蔵破りが発覚して収監され 平穏な生活が壊れるのを恐れる林田は、警察の思惑通り3人に会ったと言い通すのでした。

東京に集まった面々が帰る時上野駅地平13番線で、昔 拘置所で出会った杉山事件の犯人 木村信(鈴木瑞穂)と再会します。木村は息子(金子吉延)同伴で来ており、冤罪犯親子の境遇に涙し 考えを変える林田でした。
13番線には 9:30発 703M 急行佐渡 新潟行が停まっています。14番線停車中の旧客は、9:40発 601ㇾ急行白山 金沢行と思われます。ホーム端にはこの時代、準急・急行券売り場があります。
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最後の画像で 13番線端の木村親子の背後の、15番線にEF57形電機らしきが到着しています。宇都宮 7:40発の普通 524ㇾで、10:04に到着した普通列車と思われます。
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コメント


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にっぽん泥棒物語

「松川事件」が直球なら、これは変化球で勝負。

登場人物全員が「ずうずう弁」で喋るので、聞き取れないセリフが多かったが、何となく何を言おうとしているかは理解でき、ストーリーを追うには困らなかった。

このブログの性格上、鉄道関係以外の写真も記述もないが、この映画の秀逸な部分は後半のコミカルな裁判シーンにあると思う。
あらためて、三國連太郎は実にうまい役者だとつくづく思います。

「飢餓海峡」と双璧をなす犯罪者の名演技です。

江原真二郎もいい役者ですね。若年寄的なところがいい。
東映期待の青春スターでスタートしましたが、明朗な青春ものでは芽が出ずに、彼の持ち前は屈折した若者を演じたところにありました。

劇中の「黒い九人の男」のシルエットは恐かった。顔が分からず、黒い大男が9人、線路脇に立っている、戦慄すべきシーンです。


戦後の三つの不可解な事件(松川事件、下山事件、三鷹事件)が、いずれも国鉄と関連しているのは更に不可解です。

松川事件の無罪判決について国民は「当然で、よかった」と喜ぶ側と「そうしたら、一体真犯人は誰だ」という疑念を持つ側に二極化されたような雰囲気でした。それが当時の日本社会の縮図でした。

赤松 幸吉 | URL | 2016-08-13(Sat)19:35 [編集]


Re: にっぽん泥棒物語

赤松様 熱の入った長文のコメントありがとうございます。

確かにこの映画 一番の見所は、最後の法廷場面で 印象深い終わり方ですね。

小生としては上野駅地平ホームで、木村親子と対面した場面が記憶に残ります。

テツエイダ | URL | 2016-08-14(Sun)19:00 [編集]


人間の善なるものの素晴らしさを描くコメディの名作です!

テツエイダ 様
 ED76であります。
 
 本作の監督である「山本薩夫」氏は、小生には社会派の映画監督のイメージがあり、「白い巨塔」のような名作に加えて、一方では「皇帝のいない八月」のような作品(さすがに、日本ではブルートレインジャックは少々無理が・・・)もある反権力にスタンスを置く第一人者でしょう。
 義助は法廷で証言します。
 「おらたちを取っ捕まえる警察のお偉方がですねぇ、おらたちより嘘つきだというのはどういう訳でしょう。いや、嘘つきは泥棒の始まりって言うんべか」
 この台詞を吐く「三國連太郎」氏は、やはり名優のお一人であると小生唸るばかりです。
 さて、本作と「飢餓海峡」は同じ年(昭和39年)に公開されています。本作は「松川事件」が、一方「飢餓海峡」は洞爺丸転覆という戦後を象徴する大事件が背景として描かれており、両作品とも過去に罪を犯した男がその素性を隠して、戦後は地元の名士として活躍していくという共通性が見られます。本作は、前半こそ泥棒稼業がユーモラスに描かれますが、後半は「三國」氏が「松川事件」(作中では杉山事件)の犯行現場を目撃したことにより、冤罪で逮捕された被告たちの為に証言するべきか苦悩する胸中が中心となって裁判のシーンへと、大きく転換していきます。
 自分が証言することで、美人妻のはな(「佐久間良子」様)や子どもに迷惑をかけてしまうのではと葛藤を重ねるシーンや、裁判での東北弁丸出しの証言シーン。そして、最後に怒りで去っていった「佐久間」様が、感激のあまり「三國」氏と熱き抱擁を交わすシーンは、小生胸が熱くなる思いを感ぜざるを得ませんでした。「保身を捨てて守るべきもの」というある種「重いテーマ」を扱っていながらも、ラストは爽やかな「人間の善なるものの素晴らしさ」を知るという名作であると、小生は感じたところです。

 「松川事件」が、「国鉄三大ミステリー」の一つであることはご存じであると思います。
 ただ、本件と「三鷹事件」は、「黒い潮」で記させていただいた「下山事件」と全く異なる部分(「下山事件」は自殺であり謀略ではないが、本件と「三鷹事件」は完全なる謀略である)が存在しており、当初から「G.H.Q」の下部組織(キャノン機関)との関わりが疑われておりました。
 事実、事件前夜に「松川駅(作中では杉山駅)」近くで開催された、1日限りの公演で翌朝には脱兎のごとく姿を消した謎の「レビュー団」が存在するとともに、事故の発生する前後の時間帯に運行が予定されていた貨物レが、理由不明の「ウヤ」になっていたなど、70年近い時間が経過した現在でも、様々な謎を孕んでいます。結局、当初に死刑判決を含む重罪の判決が下されていた被告全員に、無罪が確定するなど事件は迷宮入りとなってしまいました・・・。

 さて、北海道の冬休みは1月中旬までであり、帰省のピークを過ぎた1月9日前後は大抵「ロイヤル」も「ツインDX」も無理なく予約できたことから、小生、正月休み明けに東京に家族4人で帰省する際に利用した「上り北斗星」から、本件の事故現場の「慰霊塔」を眺めたことがありました。
 「福島」を過ぎると丘陵沿いに「トカホセ」は、旧来の本線である「下り」線と複線化で新設された「上り」線とが別ルートを辿るのですが、「北斗星」は「下り」線を遠景で見ることができ、山側にカーブしている事故現場を確認できました。
 そして、「郡山」を過ぎて「黒磯」を通過。「115系」の姿を見て、「ああ、帰ってきた」という感慨(?!)に浸るという「プチ贅沢」を味わっておりました(笑)。

 P.S
  事件関係の書籍には、現在でも事件に興味関心を示すミステリーマニアのために、「松川駅」前の派出所には、事件現場までの道程をマーカーで記した地図を用意しているとの逸話を確認しております。
  失礼いたします。

ED76 | URL | 2022-01-07(Fri)22:41 [編集]


訂正です

テツエイダ 様

 ED76であります。

 一カ所だけ訂正させていただきます。

  (誤)「福島」を過ぎると丘陵沿いに「トカホセ」は、

 (正)「福島」を過ぎると丘陵沿いに「トホホセ」は、


  申し訳ありませんでした。失礼いたします。

ED76 | URL | 2022-01-07(Fri)22:45 [編集]


Re: 人間の善なるものの素晴らしさを描くコメディの名作です!

ED76 様  コメントありがとうございます。

事件前夜に「松川駅(作中では杉山駅)」近くで開催された、1日限りの公演で翌朝には 脱兎のごとく姿を消した謎の「レビュー団」の件は 初耳ですが、K機関の陽動作戦? 細工現場へ人が近づかない様に? 謎ですネ

上り北斗星は 父母妻子と5人で 函館から上野まで乗った思い出があります。父はロイヤル・他はツイン2室でした。

モーニングの洋食セットで、皿と器が テーブル上に 数々並んだのが 印象に残っています。
しかし晩年の北斗星・カシオペアでは、モーニングが ワンプレートに近い設定で 寂しかった思い出もあります。

テツエイダ | URL | 2022-01-07(Fri)23:09 [編集]