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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

212.あした来る人

1955年5月 日活 製作 公開   監督 川島雄三

不仲の夫婦が其々気の合う異性と知り合い離婚へと向かいますが、その相手が共に身を引いてしまう結果に至る 人間関係の難しさを描く映画です。

東海道本線を走る列車内の通路を大きな荷物を持った曾根二郎(三國連太郎)が歩く場面からこの映画の鉄道シーンが始まります。曾根は食堂車に入ると、ウエイトレスに「さっきこの席にいた女性は?」と聞きます。
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「二等車の方へ行かれました」と答えたので、10号車の特別二等車へと行きます。リクライニングシートが並ぶ車内を進むと、眼を閉じて座っている大貫八千代(月丘夢路)を見付けます。
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曾根は声を掛け「先程食堂車で自分の伝票と間違えて 貴女は多く払った様です」と伝えて、差額金を手渡しました。そこへ車掌が来たので、曾根は「ここへ席を移ります」と言って切符とお金を渡しました。
曾根が大事そうに荷物を持ち歩くのを八千代が問うと、カジカの研究資料であると告げます。その後 何故か座席を通路側に向けて座り 車掌が戻ってきても無視して、曾根はカジカの説明を八千代に延々と続けたのでした。
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この列車内シーンは全てセット撮影と思われますが、どの列車を想定しているのか検証してみます。曾根は大村湾から上京する為の乗車で、進行左手の窓から富士山が見えています(合成ですが・・)
該当するのは佐世保 16:30発 1002ㇾ急行西海 東京行で、途中の富士駅に 16:37着です。しかし特ロは4号車なので早岐から大阪まで西海号に乗り、何らかの理由で大阪から 2ㇾ特急つばめ東京行に乗ったのでは?と推察します。
セレブの八千代が上京するのに特急つばめを使うのは当然で、10号車は特ロ(特急なので二等車)で 15:00前に富士駅を通過するのです。その後八千代から父親 梶大助(山村聡)を紹介してもらった曾根は、カジカの研究本 出版の援助を依頼するに至ります。

芦屋らしきの実家へ行っていた八千代が父親と上京した折、東京駅八重洲口から迎えの車に乗る場面があります。バックにはロケが行われた半年前に完成したばかりの、堂々とした八重洲本屋が建っています。
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八千代の夫 大貫克平(三橋達也)は、ヒマヤラ遠征を前に信州の鹿島槍へ一人で出掛けて遭難と報じられます。大貫と不仲の八千代は誤報の声に動かず、付き合い始めた山名杏子(新珠三千代)は心配のあまり鹿島槍へと向かいます。
夜行列車を表現した映像の後、大糸南線 信濃大町駅へC12形蒸機が牽く混合列車が到着します。
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そして信濃大町駅舎から杏子が出て来て、タクシーで鹿島槍登山口へと向かうのでした。
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大糸線は当時 中土~小滝が未開通で、大糸南線の内 信濃大町~中土は非電化でした。一日4往復の混合列車をC12が牽いていました。ですから信州の山奥を表現したいのでしょうが、信濃鉄道時代に電化されているので電車で到着が本当でしょう。
その後 遭難したのは別人で 無事 大貫は杏子に出迎えられて下山し、お互いに愛情を確認するのでした。帰路の車内 二人共黙したまま並んで座っています。旧型客車内の様なので、中央本線に乗り換え後の場面でしょうか。
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杏子は八千代の父 梶大助の庇護で洋装店を開いていたので、大貫と八千代の関係を知って交際を打ち切る決意を伝えます。その際 待ち合わせたのが、風格ある新橋駅の旧汐留口駅舎です。
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3:30 の約束でしたが 3:50 になっても杏子は現れず、駅舎の中から外へ出て捜していると漸く現れたのでした。





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