日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

207.ゆがんだ月

1959年7月 日活 製作 公開   監督 松尾昭典

ヤクザ組織の若い組員 桂木正夫(長門裕之)が組織内の抗争に巻き込まれ、正義を通したことから追っ手の恐怖に直面するサスペンス映画です。

桂木の兄貴分 米山辰吉(高原駿雄)が組幹部の立石純平(梅野泰靖)に射殺され、チンピラの五郎(神戸瓢介)が生田警察署に身代り出頭する場面で先ず神戸市電10系統 900形 910が登場します。
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米山の組葬に出席する為、東京から妹の米山文枝(芦川いづみ)が神戸にやって来ます。神戸駅5番線に EF58電機が荷物車・二等車・二等車・・・と帯付が連なる列車を牽引して到着します。
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構内に「次の上り急行は 8:37発東京行です」と放送が流れているので、5番線に到着の列車は 7:57終着である 15ㇾ急行銀河と思われ 次の上り急行とは長崎始発の 34ㇾ急行雲仙 東京行です。
そして降車口から降りてきた文枝を立花組の二人が出迎え、外車で葬儀会場の寺まで送り届けます。神戸駅前を車が出る場面では、神戸市電 3系統 須磨駅行の電車が見えます。
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文枝の接待と神戸の案内を任された桂木は、六甲見物へ向かうべく摩耶鋼索鉄道に乗ります。途中で山を下る対向車とすれ違う辺りで、桂木は車内で文枝に米山射殺の真相を口走ります。
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続いて日東新聞神戸支局に社会部記者の木元明(大坂志郎)を尋ね、支局屋上で事件の真相を打ち明けるのです。背後には急行列車らしき、帯付の車両が連なる列車が走り抜けて行きます。

スクープを頂戴した木元記者は桂木の身の安全の為、東京本社にいる兄 木元宏(大坂志郎の二役)に桂木の潜伏先を依頼して東京への逃亡を勧めます。
桂木が東京へと逃亡した場面では、新橋~有楽町の東京高速道路沿いを走る 特急用青大将塗装の EF58電機牽引 上り東京行と思われるヘッドマーク付 特別急行列車が映ります。
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この道路は(205.銀座の恋の物語)でも記した様に この映画公開の一か月前に開通したばかりの自動車専用道で、走行しているのはマツダT1100 三輪車と思われます。
このマツダ三輪車走行中の影の様子から、午前中でのロケと思われます。当時午前中に東京駅に到着する特急列車は既に 20系ブルートレイン化された あさかぜ号を除くと、9:30着 鹿児島からの 10ㇾはやぶさ号と 11:10着 長崎からの 6ㇾ平和号でした。

桂木は荒川区の白髭橋近くの円筒形ガスタンクが見える南千住町辺りにある文枝宅へ招かれ行くと、童謡「赤とんぼ」の口笛が聞こえて来て 追手がやって来たことを悟ります。
文枝宅から慌てて離れた桂木は、口笛が聞こえたことから走って高架線下を潜り 跨線橋まで来て背後を振り返りながら逃走します。
ここで高架線と並行する地平線を C58 150蒸機牽引の列車が、猛然と黒煙を吹き上げながら通過して行きます。桂木は煤煙に包まれながら跨線橋を駆け上がり、追っ手を気にしながら歩みます。
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高架線は電化されていて、地平線を佐倉区の C58が走るこのロケ地は何処でしょうか。想像するに高架線が常磐線で、C58は田端方面から貨物線を隅田川貨物駅へ向かう列車では?と仮定します。

木元の手配で下町のアパートに住み始めた桂木はバーテンの職に就き、大阪から恋人の江田奈美子(南田洋子)もやって来て同居したので一安心でした。しかしその後も次第に追っ手が迫り来る恐怖に苛まれてくるのでした・・・。
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コメント


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いつも楽しみにしております♪

おはようございますm(__)m はじめましてm(__)m

いつも楽しみに拝見しておりますm(__)m(^-^)v

佐倉区のC58と並行する高架線…ですと、日暮里を思い出します♪高架が京成電車ですね。ただ、貨物列車…というのがネックです。

また、田端操車場から常磐線に合流する箇所は、それぞれ上り線下り線に添う形ですので、はてさて何処がロケ地だったのだろう…??
と想像は膨らみますね♪

では失礼いたしますm(__)m

宮爺 | URL | 2016-05-07(Sat)09:34 [編集]


「JR神戸駅」と「JR三ノ宮駅」の不思議

「JR神戸駅」と「JR三ノ宮駅」の不思議

この映画の前半は神戸で長期ロケ、芦川いづみさんが神戸の街を闊歩しているのを見るだけで心がドキドキしてくる作品です。

さて、いづみさんが東京からの長旅から降り立ったのは「神戸駅」、三枚目の写真でもわかるとおり、(当時としても)人影もまばら、実にわびしく殺風景な駅前です。
えぇ、これが天下の神戸駅? と驚きます。

現在でも、全く神戸について予備知識のない東京以北の旅行客・観光客は、「憧れの神戸」にやって来たつもりなのに、神戸の名前に釣られて「神戸駅」で下車するとこの寂れ感に拍子抜けしてしまいます。

周りには野暮ったいバスターミナルと土臭いビル群と高速道路のみ。
旅行ガイドやファッション誌で描かれているあの洗練されたストア・ショップやレストランは一体どこにあるの? 

あのおしゃれで、ハイセンスで、都会的で、シックで、グラフィックで、垢抜けた街並み・繁華街・オフィス商業施設はすべて、神戸駅から東へ二つ目の三ノ宮駅付近にあるのです。
これが「憧れの神戸」なのです。
戦前は三ノ宮より神戸の方が繁栄していましたが、昭和30年頃から都心部としてのポジションが完全に変わってしまいました。

神戸市役所さえ三ノ宮にあって、遠くから初めて神戸市役所を訪れる人は「神戸駅」からタクシーで行けばよいと「神戸駅」で下車してしまいます。そこからだとかなりのタクシーメーターになります。
「三ノ宮駅」からだと徒歩5分のところにあります。

昭和40年代頃までは「阪急」「阪神」も三ノ宮が起点で、神戸には私鉄が乗り入れていませんでした。

新幹線の「新神戸」も三ノ宮からバス等で乗り換えです。(絶対に神戸駅で降りないこと)


「神戸駅」と「三ノ宮駅」の不思議な関係を熟知しない関東人が、「神戸西武」を神戸駅前に巨額の資金で華々しくオープンして、わずか2年で撤退という史上最悪の経営失敗をしました。

しかし、特急も新快速もわずか2駅しか離れていない「神戸駅」と「三ノ宮駅」のどちらにも停車するのです。「神戸駅」まで停車するのは時間の無駄のようですが、かっての伝統駅に義理立てしているのでしょう。

関東圏にもこのような逆転現象が起きている駅などはあるのでしょうか。



赤松 幸吉 | URL | 2016-05-07(Sat)18:56 [編集]


Re: いつも楽しみにしております♪

宮爺 様 コメントありがとうございます。

このロケ地は小生もよくわかりません。宮爺 様の文にある谷中墓地から跨線橋を渡り、京成の東側に抜ける道は他に多くの映画ロケが行われた場所ですね。
 ここだとすると C58は通常のC57ではなく運用された、成田発常磐線経由の上野行列車と思われます。

小生が隅田川貨物駅行列車と思ったのは三ノ輪橋先で現在の南千住二丁目付近であり、平行する常磐線と別れ始める辺りを走る隅田川貨物駅行の荷物列車と思ったのです。貨物列車は間違いで、C58に続く車両は不鮮明ですね。

テツエイダ | URL | 2016-05-07(Sat)22:21 [編集]


Re: 「JR神戸駅」と「JR三ノ宮駅」の不思議

赤松様 コメントありがとうございます。返信が遅くなりました。

JR神戸駅とJR三ノ宮の関係はなるほど不思議ですね。三ノ宮の方が栄える理由があるのでしょうね。
ダイヤの点でも大正時代から見ると、一貫して全ての優等列車が三ノ宮・神戸の両方に停車してますね。

関東ではこの様な例は見当たりません。強いて言えば、埼玉県の県庁所在地が前は浦和市にあり浦和駅が最寄りです。(現在も同じ所ですが、さいたま市浦和区)

昔 熊谷駅から急行列車で県庁へ向かった人が、県庁があるのだから浦和駅にも急行は当然停まると思って車内放送を聞かなかったら通過して赤羽まで行ってしまったとか。埼玉県では大宮が昔から県内一番の大都市であり、浦和駅には国鉄時代から冷遇され 普通列車しか停まらないのです。
いろいろ考えましたが、この例くらいしか思いつきません。

テツエイダ | URL | 2016-05-10(Tue)23:29 [編集]


神戸駅と三ノ宮駅

こんばんは
「ゆがんだ月」は神戸駅に到着した急行「銀河」を見ることが出来ただけでも良かったです。

神戸駅が没落した理由ですが、神戸市の市営モンロー主義で阪神・阪急の国鉄神戸駅前の乗り入れを認めなかったのが、決定的だったと思います。
阪神・阪急の三宮駅は元々神戸駅と名乗っていました。
後に神戸高速鉄道を建設して神戸駅乗り入れを果たしましたが、神戸市の三宮一極集中政策後(再開発ビルや地下街、そして市役所移転)でしたので、焼け石に水でした。

三ノ宮駅に関しては、元々は現在の元町駅付近にあったものを東に移転しました。
三宮の地名は「ゆがんだ月」にも出てくる、大丸神戸店の北側にある三宮神社が由来で、現在の駅は滝道と呼ばれていて、三宮ではなかったのです。
国鉄が駅移転の時に、何で三ノ宮に拘ったのか謎ですね。

かつての特急「燕」の終着駅だった頃より没落した神戸駅ですが、貨物駅跡地の再開発(ハーバーランド)もあり県内第二位の乗降客がありますので、新快速の停車は当然だと思います。






アパッチ | URL | 2016-05-12(Thu)22:03 [編集]


Re: 神戸駅と三ノ宮駅

アパッチ様 コメントありがとうございます。

栄光の神戸駅 没落の顛末を解説して頂きありがとうございます。このブログ(50 若い瞳)・(90 黒い海峡)でも阪急神戸駅(現 神戸三宮駅)が登場していましたね。

神戸駅舎は威風堂々 威厳があって、好きな駅舎の一つであります。今でも県内第二位の乗降客あるとは意外な感じです。

テツエイダ | URL | 2016-05-14(Sat)18:07 [編集]