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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

205.銀座の恋の物語

1962年3月 日活製作公開  カラー作品   監督 蔵原惟繕

映画公開の前年に大ヒットした歌謡曲(銀座の恋の物語)をモチーフとして、新進画家 伴次郎(石原裕次郎)と洋裁店のお針子 秋山久子(浅丘ルリ子)が困難な出来事を曲と愛情の力で乗り越えてゆく青春映画です。

理想を追い掛け なかなか芽の出ない画家の伴は、音楽家として世に出る夢を追う宮本修二(ジェリー藤尾)と安アパートの部屋をシェアして住んでいました。
その二人が詐欺被害に遭い 数寄屋橋から日劇方向を高い位置から見ながらお互いの夢を再確認して語るシーンでは、晴海通りと交差する国鉄の高架線上を横須賀線70系電車や黄色い山手線101系電車が走ります。
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このロケ地は 1959年東京高速道路が日本で初めて 土橋 → 城辺橋(一方通行)に開通した城辺橋出口手前の高速道路脇と思われます。

久子の願いを受け入れ現代美術社への入社を決意した伴は二人の新しい生活を始めるにあたって、「故郷の信州へ行ってオフクロに会ってくれ」と告げ新宿駅で待ち合わせることにします。
ところが銀座屋主任 須藤女史(新井麗子)から服の締め切りが明日になったので 今日中に仕上げてほしいと久子は依頼され、待ち合わせまで時間が無いのに急いで仕上げてから銀座屋を出ます。

その頃新宿駅3番ホームへ着いた伴は、長野行列車に沿って久子を捜しますが見つかりません。
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そこへ「まもなく3番線から20:30発 普通急行長野行が発車します」と放送が流れます。
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久子はタクシーで新宿駅へ向かいますが渋滞にハマり、運転手に「どこでも省線の近くで降ろして」と告げます。そしてタクシーを降りた久子が駅へ向かって走る頃 新宿駅ではベルが鳴り始めます。
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漸く千駄ヶ谷らしき駅の改札口前の信号が青になり走り出した久子は、
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横合いから走ってきたトラックに轢かれたかの様に悲鳴が上がります。
丁度その時 新宿駅3番ホームから汽笛と共に長野行 急行列車が発車して行き、
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伴は車内を見つつ 最後部の赤いテールランプを一人で呆然と見送るだけでした。
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この 20:30 発の長野行 普通急行列車は存在せず、架空列車です。この当時 中央本線では急行列車はDC化されていて、旧客列車は準急以下で使われていました。
客車には準急札も付いていないので、23:45 発 437ㇾ普通 長野行を使ってロケが行われた可能性があります。登山客に愛された列車で、ゆっくり走って終点長野には 10:41着でした。
または裕次郎登場ロケの混乱を考えれば、エキストラを動員して新宿 4:39着の普通 438ㇾ列車の回送列車を使ってロケが行われた可能性もあります。

その後行方不明の久子を捜しつつ ある日銀座松屋の屋上で仕事の打ち合わせをしていた伴は、銀座中央道りを歩く久子らしき髪形の女性を見掛け 地上まで駆け下り 追い掛けます。
裏口から出て松屋通りから4番系統の都電が走る中央通りへ出た所で、その女性に追いつき腕を掴むと振り返った顔は全くの別人でした。背後には1番系統らしき都電6000形電車が停まっています。
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当時 銀座中央通りには、都電1・4・22・40番と4系統の路線が走っていました。しかし渋滞の原因とされ、1967年12月9日をもって銀座中央通りから消えてしまいました。


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