
都市銀行に勤務するベテラン女子行員 小宮阿佐子(乙羽信子)が、同僚や部外の人間との交流から自分の歩むべき道筋を見定める過程を描いた映画です。
冒頭 京浜線沿線らしきから都心に通勤する場面から鉄道シーンがあります。阿佐子が父 小宮良介(御橋公)と踏切で待つ前を横須賀線 70系電車と京浜線電車が高速で通過して行きます。

そして京浜線・山手線の分離運転直前でホームだけ完成している新橋駅へ向かう電車から、対向する 40系らしき電車が向かって来る姿が見えます。

風格ある新橋駅駅舎をバックに小宮が歩き、

有楽町駅中央口からは阿佐子が出て来ます。

従業員組合の集会後 戸川健一(金子信雄)と山本久子(木村三津子)は帝都高速度交通営団地下鉄 銀座線の銀座駅へと入ります。この当時東京の地下鉄は銀座線以外では丸ノ内線の池袋~御茶ノ水だけです。
ホームへの階段を降りて 暫し話していると、渋谷行の 1000形 1018号電車を先頭に到着しました。この車両は 1929年 汽車製造東京支店製の東京地下鉄開通当初から走る車両と同じ初期型です。

それから下宿へ帰った戸川が二階の自室へ入ると、窓越しにD51形蒸機重連牽引の貨物列車が右から左へと走り抜ける様子が見えました。山手貨物線か品鶴線の列車と思われます。

中盤 支店の慰安旅行で箱根に行った阿佐子は、父親がケガをして自宅に居るので泊らず宴会を中座して帰ろうとします。戸川も妹が田舎から来ているから帰ると言うので、同行することにします。
続いて帰路の小田急電鉄特急車内の中央にある喫茶カウンターでは、アイスティらしきが作られ

二人が座る席まで運びます。これは三井農林(現 日東紅茶)が営業を担当した「走る喫茶室」で、接客員はスチューワーデスと呼んでいました。

二人で話す内に、酒匂川橋梁らしきを渡って行きます。続いて小田急 1700形特急が、橋梁を渡る走行シーンがあります。前面が非貫通二枚窓の有名な3次編成ではなく、初期型なので特徴が薄いですね。

この 1700形は小田急戦後初の本格的特急ロマンスカーで、オール転換クロスシートに喫茶カウンター・トイレを装備しています。 1951年2月より 1957年のSE車置き換えまで特急運用につき、後に通勤型へ更新されました。
終盤 組合活動で目立つ存在の戸川は、静岡への転勤辞令を受けます。いよいよ移動の当日、戸川は開店前に皆に挨拶して店を後にします。慰安旅行を阿佐子と二人で中座したことから、噂になったことを気にする久子は見送りに行きません。
そんな久子の姿を見た阿佐子は、「上司には伝えておくから戸川の見送りに行きなさい」と送り出すのでした。そして久子は階段を駆け上がって東京駅8番ホームへ行くと、発車待ちの急行列車沿いに車内の戸川を捜します。

案内放送が「 10時発 急行げんかい 博多・都城行でございます」と流れるホームを前後に捜す久子へ、ホームのワゴン販売で買い物をしている戸川が声を掛けます。

暫し別れの挨拶を交わした後、久子は「いつか貴方に付いて行ける様になりますわ」と伝えます。そこで発車ベルが鳴り 戸川はデッキへ乗って握手を交わし、列車は動き出します。

なおも久子が「静岡へ遊びに行きますわ」と言えば、「いらっしゃい」。 そして去り行く戸川に「本当に静岡まで行くの良くって?」と問えば、「待ってま~す」と明るい未来を思わせるエンドシーンであります。

PS このラストシーンは東京駅8番線でロケされています。10:00発 33ㇾ急行げんかい号の設定なので、時刻表では長距離優等列車用の 15番線発車の筈です。
想像するに本物では混んでいて混乱を招くので、東京駅8番線到着普通列車の回送便を使って、急行札のみ付けてエキストラを乗せてロケを行ったのでは?と思われます。
アフレコの案内放送がバックで何度も「 15番線お後へ願います 10時発 急行げんかい 博多・都城行です。」と、流れていますので せめて(15番線) の部分をカットしてほしかったと思います。
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